「Puppet」がもたらすインフラ構築自動化と“それ以外”のメリット「Puppet」ユーザー会が発足(1/3 ページ)

インフラ構築自動化ツールの一つ、「Puppet」に関するユーザーやベンダーの情報交換を促す「Puppetユーザ会」が設立された。第一回の会合に合わせて来日したPuppet LabsのCIO カーステン・ナイジャル氏とユーザー会代表の菅原亮氏に、その特徴とメリットを聞いた。

» 2015年11月24日 05時00分 公開
[高橋睦美@IT]

「Puppet」を活用したインフラ構築自動化を推進

photo Puppet Labsのカーステン・ナイジャルCIO(写真=左)と「Puppetユーザ会」代表の菅原亮氏(写真=右)

 エンジニアの中には、さまざまなアプリケーションをインストールして試しては、また別の環境を構築してみるのが大好きという人もいる。しかし、それは趣味ならばこそだろう。仕事として数百台という規模のサーバーを相手に環境構築するとなれば、話は別だ。仮想環境が増加し、設定がかえって複雑化したとも言われる昨今では、ミスなく同じ作業を繰り返さなければならないことに苦痛を感じる人の方が多いはずだ。

 こうした課題を解決するため、さまざまな「インフラ構築自動化ツール」が活用され始めている。その一つがPuppet Labsが開発している「Puppet」だ。無償で使えるオープンソース版の「Puppet」と、GUIなどを備えた商用の「Puppet Enterprise」があり、いずれもスタンドアロン、マスター/エージェントどちらの形態でも利用できる。

 このPuppetに関するノウハウを交換し、インフラ構築の自動化を推進しようという目的で「Puppetユーザ会」(以下、ユーザー会)が立ち上がった。ユーザー会の会長を務めるNTTデータの菅原亮氏は、もともとPuppetに興味を持ち、「Learning Puppet」の日本語訳を作成した人物でもある。

 Puppetに関するコミュニティ活動としては、世界各地で開かれている「Puppet Camp」がある他、海外にいくつかのユーザーコミュニティが設立されており、情報交換が行われている。Puppetを活用できるインフラ構築・運用スキルを備えたエンジニアのリクルーティングの場として使われるケースもあるそうだ。

 これに対し、「日本においては、横のつながりがまだ薄い」と菅原氏。ユーザー会の設立を機にそうしたつながりを強化し、インフラ自動化の機運を高めるとともに、「Puppetに関する日本語ドキュメントはまだまだ少ないため、今後増やしていきたいと考えている」と言う。

開発と運用が分かれる日本のシステムにおいて、独自言語はむしろ利点

 仮想化やクラウドの普及によって、システムが扱うサーバーの数が飛躍的に増加した。結果として、その構築やプロビジョニングの手間も増大する。こうした作業を自動化し、必要な環境を迅速に使えるようにしようという狙いを持ったツールは、Puppet以外にも、Chef、Ansible、Kickstartなど、続々と登場している。

 2015年10月28日に開催された「第1回Puppetユーザ会」に合わせて来日したPuppet LabsのCIOであるカーステン・ナイジャル氏によると、Puppetにはいくつかユニークな、特に大規模システムの構築に向いている特徴があるという。

 「まず、変更を事前にシミュレートし、検証してから適用できることが挙げられる。また『ノードグラフ』と呼ぶ機能で、インフラを構成する各コンポーネントの相関関係をビジュアルで直感的に把握できる。インフラの状況を可視化するリポート機能も強力で、作成したリポートをさまざまな形で活用できる」(ナイジャル氏)

 Puppetでは「マニフェスト」と呼ぶ定義ファイルに基づいて設定作業を自動化する。このマニフェストは、汎用のプログラミング言語ではなく、独自の「Puppet言語」を用いて記述するようになっている。この点を敬遠するエンジニアがいないわけではない。「しかし、あるプログラミング言語を採用すると、それ以外の言語を用いている人にとって使いにくくなってしまう」とナイジャル氏。Puppet自体はRubyで実装されているが、「こうした言語はソフトウエアを書くのには適しているが、インフラ管理には適していない」のだそうだ。

 菅原氏は、Puppet言語はシンプルで、自然言語や、いわゆる「configファイル」(設定ファイル)に近いことから、すぐに習得できると力説する。そして、「開発」と「運用」の役割が明確に分かれている日本のシステム構築の現場にはむしろ適していると説明した。

 「ご存知のように日本のITシステムやインフラでは、とにかく『手順書』を出せと言われる。Puppetのマニフェストは自然言語に近く、プログラマーでない人でも管理しやすい。だから、運用担当者が手順書代わりに使うこともできる」(菅原氏)。別途Microsoft Wordなどで手順書をせっせと作る必要はもうないというわけだ。

 加えて、マニフェストを通じて変更履歴を管理できることもメリットとした。インフラに、いつ、どのような変更が加わったかの履歴が分かる上に、監査にも利用できる。こういった特徴を評価し、自動化ツールで連想されるWebサービス系やスタートアップ系の企業だけでなく、金融などの大手企業でも採用されているということだ。

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