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「デジアナ空間分譲地ビジネス」は離陸するか?(4/5 ページ)

» 2004年12月27日 16時48分 公開
[竹村譲,ITmedia]

 「LPLS」の主たるアプリケーションは、手書きeメールや、デジアナ・ミックスのデータ作成、スケジュール管理などのPIMに代表される個人情報管理が中心的存在だ。残念ながら、個人とその個人が所有するPC及びそのPC上のアプリケーションが形成する閉じた世界である。

 それ故に、間に割り込むサービスビジネスとしてのプロフィットモデルの可能性や成長が読みにくい。その結果として、誰に聞いても一冊150円くらいだと言われるA5サイズ、62ページのごく普通(に見える)リングメモ用紙が、一冊700円という法外な販売価格になってしまう。また、個人がごく普通に使うには2倍は太いだろうと思われるボールペンの形状もまだまだ解決しなければならない問題だろう。

ごく普通の鉛筆や、ボールペンと比較して超ファットなAnotoペン

 現状でのデジタルペンとPCとの転送には、有線のUSBケーブルを利用しているモデルのみだが、別モデルには、北欧カントリーのタッグモデルとなる「Bluetooth」無線の搭載モデルもあるようだ。一時期は消滅しそうなBluetoothではあったが、最近は一部の携帯電話では復活の兆しもあり、Bluetooth機能搭載の携帯電話との組み合わせが実現できれば、コンシューマー市場においてもヨーロッパ市場に近いビジネスへの展開もあり得そうだ。

 しかし、「Anoto大陸」の本当の活用は、PANモデルではなく、企業内のクローズドなLANや、より広域の社会システムとなるWANのビジネスがターゲットになることは言うまでもないだろう。

閉じた世界の「企業内LANモデル」や「社会システムのWANモデル」となるか?

 初期のPDAがその記録データを物理的に近くにあったPCのメモリに同期し始めたように、日立マクセルのデジタルペンも、その最もフレンドリーなコンパニオンが身近なPCであることは誰にでも容易に想像できる。

 しかし、PCのスケジュール管理や携帯電話上でのスケジュール管理などが、ネットワークシステムの高速化や低価格化、信頼性の向上をきっかけに、身近なPCから遠くにあるサーバとの連携に移り変わってきているように、デジタルペンのコミュニケーションする相手も、徐々に身近なパソコンからどこにあるか分からないサーバとのやり取りに変わるだろう。

 複数のロケーションに点在する物理データの同期を取りながら、論理的にデータの一元化を図る仕組みではなく、ネットワークを活用し、安全な場所で集中管理された唯一無比のデータをプロテクトする方が、災害などの物理的な驚異より、日増しに増加するハッキング行為などに対して有効であることは間違いない。

 Anoto社の考案したデジタルペンはすべてが固有のID番号を持ち、特定アプリケーション専用に契約、取得したAnotoパターンの専用紙や入力伝票等を用い、予め設定された任意のエリアを必要に応じて機能設定することで、さまざまなデータ収集アプリケーションが展開可能だ。権利のある特定の人間が、どのアプリケーションを使っているのかを遠隔地にある管理サーバが認知でき、機密管理面でも遠隔認証が可能だ。

 また入力が終了したデータセットをインターネット上のどのアプリケーションサーバに送るべきなのかなどの細かな指示を状況に応じて中央集権的に管理することも、いとも簡単に可能となる。企業内のイントラネットシステムをインフラとして活用したこれらの企業内アプリケーションモデルは前述のLPLSに対して、「Enterprise Paper Look-up Service」(EPLS)と呼ばれている。個人的な生産性向上モデルであるLPLSの延長上に位置する企業向けのアプリケーションビジネスモデルだ。

 多くの企業がこのモデルに乗って業務の合理化を行なって行けば、必然的に関連企業やビジネスパートナー間では、帳票のフォーマット統一や流用、サーバによるデータ配列の順列変換や演算処理による付加処理の追加、結果の配信要求等が起こることは必然だろう。

 人間にとって最も根源的で、「ナチュラルな手書きデータ」のデジタル化と、デジ・アナ統合といった「大義」を実現しつつ、中央に君臨するサーバによる単なる「絶対アドレス変換ビジネス」は、少しづつIT業界でも認知を受けるようになってくるだろう。

 もちろん、中央で指揮棒を振るのはいったい誰なのかも大いに気になるところだ。そして、こういった実務レベルでのボトムアップの要求拡大と、そのソリューションの提供によるビジネスの展開の動きとは別に、「おさいふ携帯」以外、あまり未来が見えない通信キャリア会社との協業で、ありきたりだが「手書きeメール送信」などの広域で、不特定大多数が参加できるネットワークモデルである「Global Paper Look-up Service」(GPLS)も普及のファクターの一つだろう。

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