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スカパー!がインセンティブを支払い続けなくてはならない理由(2/2 ページ)

» 2005年01月21日 12時27分 公開
[西正,ITmedia]
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 それは今の家電店のセールスの仕方が、「テレビとDVDレコーダーをセットで買うと、これだけお得になります」といった具合に、複数の商品をセットにして売ることによって割安感を出すという形になっているからだ。

 スカパー!のチューナーとDVDレコーダーをセットで買うといくら割引になるという設定では、DVDレコーダーの仕入れ値と、割引価格の両方を換算して、スカパー!側の支払うインセンティブをいくらにするかを決めることになる。組み合わせて売られる商品も多様なので、インセンティブの金額は常にケース・バイ・ケースで交渉が行われることになる。

 今後の問題として考えられるのは、ボックスの買い替え需要への対応である。

 スカパー!もスタートしてから8年になるため、初期のボックスは寿命を迎えつつある。今後、ボックスの買い替え需要が本格化してくることになるが、そもそもスカパー!がインセンティブを支払う趣旨が新規加入を伸ばすことにあるため、新規加入がある程度の数を超えたら、それに応じたインセンティブを支払うという形になっている。買い替え購入についてはカウントされないことになっているのだ。

 だから、チューナーの価格が下がって、台数は売れるようになっても、その大半が買い替え需要になると、家電店からすると、売れば売るほど赤字ということになるかもしれない。そうすれば家電店は同様の理屈でスカパー!の販売に消極的になる可能性がある。スカパー!としては、今後、買い替え需要が本格化するのに対応し、これに対しても一定のインセンティブを支払っていくことになるだろう。

 チューナーの普及を促進するため、プラットフォームはインセンティブを支払っているのだが、その図式は決して単純なものではないのである。

 買い替え需要に似た話として問題になりそうなのが、2台目、3台目のテレビに接続するボックスの需要をどう考えるかという話だ。こちらは、スカパー!のチューナーよりむしろ、CATVのSTBでどう対応するのかその考え方がより重く問われるようになっている。いずれもユーザー側としては、2台目以降は無料にならないかと期待する声が強くなっていることは確かだ。

 ただし、その答えを決めるに当たっては、ハードとしてのボックスの問題よりも、コンテンツの供給サイドとの調整がポイントになる。今のところ、ハリウッドを始めとして、番供供給サイドからは、2台目以降を無料にすることを容認する姿勢はあまり見られない。

 とはいえ、インセンティブを支払う意味合いが時と共に変化してくるのと同様、1世帯の中で複数のボックスが使われることに対する対応も、時代と共に変化していかざるを得ないだろう。

 新たな対応を迫られる時期は思いの他、早くやってくる可能性が大きいと筆者は考えている。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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