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「視聴」をテレビから切り離そう(2/3 ページ)

» 2005年04月11日 09時47分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 これは、バラエティ番組というコンテンツの特徴でもある。これは番組を作る方法論自体が、基本的に誰かの無知を笑うというスタンスで構成されているからである。つまり、ベースとなる知識自体は、多くの場合われわれはすでに持っている。バラエティとはそれを知らないとどうなるかという非常識を見せているだけであり、視聴者自身にとって得る物は少ない。

 2003年のNHKによる個人視聴率調査によると、テレビの一日平均視聴時間は、3時間32分とある。もちろんこの時間には、視聴者が能動的姿勢で見たのかそうでないのかを区別しない。その人が自分の時間をどう過ごそうがその人の勝手なのではあるが、ただ時間を埋めるだけの目的でテレビと対峙しているのであれば、筆者はその時間がすごくもったいないと思う。

 さてここまでの論旨で、筆者がバラエティ番組を見るのは無駄である、と書くつもりだろうと思ったのなら、それはちょっと違う。筆者が提案するのは、テレビの見方はもっと変わるべきだと言いたいのである。

 筆者は以前から、ポータブルビデオプレーヤーに対しては、極力記事として取り上げるように心がけている。その理由は、それらの製品は単なる小型化技術ということだけではなく、ある意味、生活提案型の商品となりうる要素を持っているからである。

 従来のポータブルビデオプレーヤーの訴求とは、テレビを見る時間がない人のため、という、どちらかと言えば「現状救済型」の提案であった。これはこれである程度の市場は見込めるのだが、テレビというのは一度見ない状況になると、いつのまにか「別に見なくても困らない」ということに気がついてしまうメディアでもある。テレビを見る時間がなくて本当に困っている人というのは、実はそれほど多くない。

 だが筆者はあえて普段からテレビが好きで見ている人に対して、ポータブルビデオプレーヤーを勧めたい。これを使って普段テレビに費やしている時間を別の時間にシフトし、帰宅してから寝るまでのプライベートな時間や休日を、もっと別の趣味など、「自分の人生にとって意味のあるもの」に費やした方がいいのではないかと思う。

 囲碁でも工作でも、写真の整理でもいいだろう。昔の男は食事が済むと書斎にこもって、何か創造的な時間を過ごしたはずなのである。

 元々24時間しかない中で、その時間をどこから捻出するかというと、筆者は以前から通勤も含めた「移動時間」に注目している。

 たとえ商用であっても、移動時間というのは何もしてなくても許される時間である。今電車に乗っても、あまりポータブルビデオプレーヤーでテレビを見ているという人を見かけないが、PSPや「プレイやん」の登場や、動画再生ができる携帯電話機の登場で、状況は少しずつ変わっていくのではないかと思っている。

 専用のプレーヤーを買うとなると、5万円ぐらいの出費を覚悟する必要があり、相当意識が高くないと元を取るのが難しいが、複合機であれば元々それ本来の使い方があるわけで、上手く使った人だけが得をする、という使い方ができる。そして日本人は、そういう使い方の提案に弱いのである。

日常的運用に横たわる問題

 ポータブルビデオプレーヤーを日々活用するためには、録画から転送までを極力簡単なルーティンにする必要がある。現時点では、この課題をクリアするポイントが2つある。

 1つは、「何で録画するか」だ。多くのポータブルデバイスは、今のところファイル変換や転送を、PCに依存している。そう言う意味ではPCで録画してしまうのが一番手っ取り早くはある。

 以前ソニーがVAIOブランドでリリースしたプレーヤー「PCVA-HVP20」は、VAIOで予約した番組を、録画が終わるのを待って自動転送してくれるなど、日常のサイクルの中に製品を溶け込ませる上で非常に優れた工夫が成されていた。ただ残念なことに通常のPC上では、まだ録画していない番組を転送予約できないといった事情もあり、VAIO搭載の録画システムへの依存度が高かった。

 PC用TVキャプチャー製品は、それこそ毎月のように新しい製品が市場に投入されてくるが、基本的に筆者はそれでの録画はあまり推奨しない。なぜならばWindowsは、毎日欠かさず判で押したように2年3年同じ動きをするような作業には、向いてないと思うからだ。

 やはりこういうものは、単体のレコーダーにポータブル機用のサポート機能を持たせたほうが、安心できる。そう言う意味では、今まであまりこれといったソリューションが提案できていなかった「DIGA MDR-E500H」のSDカード録画機能などは、「プレイやん」の登場でがぜん意味が違って見える。

「DIGA MDR-E500H」のSDカード録画機能(松下電器産業資料より)

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