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口コミがマスコミを超える日ネット時代の新潮流――CGMとは(3)(2/2 ページ)

» 2006年08月07日 10時49分 公開
[伊地知晋一,ITmedia]
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 例えば自宅の目の前の道路工事、自分が通勤している電車の運行状況、近所で起きる事故や災害などの地域的な話題などは、その人にとってはテレビで流れているニュースや新聞のトップ記事よりも興味があるところでしょう。PJの人数が全国に増えれば、よりニッチな、個人にとって身近で関心のあるニュースを配信できることになります。

 また、マスメディアのニュースと比較して、インターネットによるニッチニュースの集合体は、検索技術が存在するおかげで、些細(ささい)な情報であっても読みたい人とのマッチングが容易に可能であり、PJは新たなニュースのあり方を提供する可能性を持っています。

 とは言っても、マスメディアから配信される、大多数が興味を持つ情報も重要であることは間違いないので、これらは共存するものだと考えられます(前回の連載参照)

「このニュースは○%信頼できます」と表示される時代に?

 PJが増え、投稿されたニュースが「選択し整理されたCGMの集合体」となった時には、特定の発信者の意図が顕著には現れない、幅広いジャンルのバランスが良く、全体として公正なニュースメディアとなるでしょう。

 しかし、個人が提供するニュースに信ぴょう性がどれほどあるかといった課題もあります。これに関しては、それぞれのニュースの精度は分からないにしても、同じ話題のニュースが集積した時、見る側のユーザーは、見解の情報量のバランスから「これは『○%』正しい可能性のあるニュースだ」という風に捉えるようになるかもしれません。

 これは気象庁が天気の予報をする際、何百人かの気象予報士が一斉に予測をし、その予報の割合から結果を導き出す方法と似ています。数万人のPJによるニュースの集積が実現した時、「このニュースの見通しが正しい可能性は○%です」と表示されるようになるかもしれません。

ブログがニュースになる日

 大きな災害時に、一般的なテレビやラジオのニュースよりもブログの情報の方が早い場合があります。とは言っても、それはいわゆる「地震速報」や気象庁が出すようなニュースでなく、そこに住む人の生の声によるブログなどへの投稿です。私は、2004年の新潟県中越地震の第1報をブログで知りました。ブログから得られるニュースは生の声であり、リアリティーをもって共感できるものがあります。

 最近では、今年の6月12日午前5時1分に大分県で起きた地震のブログが5時12分にはアップされていました。ブログ検索で「地震」のキーワードをたたいて見ると地震がおきてから数分以内に何千もの書き込みが発生していることが分かります。この中から情報を抽出すれば、信頼性の高い住民の感想が集められると思われます。

 阪神大震災当時、ブログは存在しませんでしたが、インターネットから情報を手に入れた人も多かったようです。地震や台風などの自然災害時には、インターネットは最もタフなインフラとして使うことができます。何よりも投稿数が多いことが注目すべき点であります。

 これからブログ文化が成熟し、書き手のマナーのようなものが現れたとしたとしたら、災害時のブログの書き方が統一され、貴重な情報源になる可能性を秘めています。

 例えば、どれくらい揺れたか、何か壊れたか、けが人はいないか、周りで火事や倒壊などは起こっていないか、などのフォーマットが存在し、それが集積し、全体としての情報になった時には大きな力になると考えられます。

伊地知晋一氏のプロフィール

 ライブドア社長室長 コーポレート担当。グループ会社全体のWeb戦略を推進している。

 1996年、メール配信システムのシノックスの取締役として創業から参加。退職後、ユーティリティー系ソフトを販売するプロジーグループに入り、オンザエッヂ(現ライブドア)による買収と同時にオンザエッジに合流。

 2002年、オンザエッヂの旧ライブドア買収に伴い、無料プロバイダー・ライブドアの責任者として運営に当たる。2003年、ポータルタルサイト ライブドア立ち上げ。同時にスタートしたブログが国内最大のサービスに成長した。このほか、約2年半で50以上のネットサービスを立ち上げる。


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