米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOにとって、今年は良い年にはならなかった。米国産車に乗っていることでも知られるデトロイト生まれのバルマー氏だが、今年は自動車メーカーにまで失望させられた。
米Yahoo!への買収提案は失敗に終わり、金融危機の中、Microsoftの株価は下落し、世界的な景気後退を受け、ソフトウェアの売れ行きは落ち込み、Windows Vistaを採用済みの企業は全体のわずか10%にとどまっている。バルマー氏にとって、今年は良い年ではなかった。
気になるのは、サンタクロースがどうするかだ。サンタのおじさんもバルマー氏を見捨て、同氏を「悪い子リスト」に入れるのだろうか? 今年1年いい子にしてなかった子供たちの靴下には、サンタさんはプレゼントの代わりに石炭を入れることになっている。
eWEEKのMicrosoft Watch執筆者の中には、バルマー氏の身代わり人形を作って火あぶりにしたい(もちろん、物の例えだ)と思うほど、彼を嫌っている者もいる。だが、わたしは同氏が好きだ。バルマー氏は情熱的で、分かりやすい人間だ。隠し事などできないタイプだ。例えば、「ところでバルマーさん、Windows 7のβ1は1月初旬までにリリースされるのですね?」と記者に尋ねられたとする。そんなとき、彼は「いや、違う! そんなことは一言も言っていない。リリースの時期はリリースの準備が整ってからでないと……」などと躍起になって否定するだろう。でも、それがうそなのはバレバレだ。あまりに熱心に語るものだから、バルマー氏には隠し事など不可能なのだ。
企業のCEOに二枚舌の人が多いのは残念なことだ。たとえ、そうせざるを得ないからであろうと、単に性格からくるものであろうとだ。だがバルマー氏の場合、その率直さはすがすがしいまでだ。わたしはぜひともオフレコで同氏にインタビューをしてみたい。2人だけで腹を割って話してみたいのだ。同氏がAppleやGoogle、そしてそのほかいろいろなことについて実際どのように考えているのかを聞いてみたいものだ。やれやれ、来年のクリスマスにはサンタさんに「バルマー氏へのインタビュー」をお願いしなければ。
とにかく、なぜだがわたしはバルマー氏が好きなのだ。本稿ではバルマー氏の今年1年の行動を振り返り、彼のクリスマスの靴下を石炭ではなくプレゼントでいっぱいにするようサンタのおじさんにお願いしたい。以下には、バルマー氏が今年他人に与えた12個のプレゼントを書き出す。その多くはクリスマスのかなり前のものではあるが、こうした慈善行為には必ずや何かしらの価値があるはずだ。バルマー氏には、これら12個のプレゼントを思い出して、笑って欲しい。わたしは本当にあなたのファンなのだから。だからこそ、わたしはこうしてあなたをからかわずにはいられない。
Yahoo!の創業者であるジェリー・ヤン氏にとっては、この上場企業の経営を維持するためにすべきことがとにかく多過ぎた。だがMicrosoftによる446億ドルでの敵対的買収提案が失敗に終わったおかげで、Yahoo!の株主はヤン氏にCEO職から退くよう要求。おかげで、今やヤン氏には家族や友人と過ごす時間がたくさんある。そしてYahoo!の経営に伴うあらゆるストレスから解放されたヤン氏は恐らく長生きできるだろう。Microsoftによる敵対的買収提案がなければ、ヤン氏のYahoo!経営計画はそのまま継続され、同氏は今ごろCEOとして多忙な生活を送っていたことだろう。
「敵に与える」というのは、クリスマス精神にのっとった行為だ。バルマー氏はライバルのGoogleに多くを与えた。一部には、Yahoo!の買収に失敗した影響もある。この敵対的買収提案をめぐる4カ月にわたる大混乱の間、MicrosoftとYahoo!はいずれも検索市場でシェアを減らした。さらにMicrosoftは1年を通じてGoogleにシェアを譲り続けた。市場調査会社comScoreによると、昨年12月に58.4%だったGoogle検索のシェアは先月63.5%に増えている。同じ11カ月間で、Yahoo!のシェアは22.9%から20.4%に縮小し、Microsoftのシェアも9.8%から8.3%に減っている。
バルマー氏は顧客の面倒を見る方法をよく心得ており、顧客の安全を確保するために多くを与えている。Microsoftは今年1年で80件のセキュリティ情報を公開した。つまり、表向きは80個のパッチをリリースしたということだ。だが実際にバルマー氏が与えているものは、その数字が示すよりもはるかに大きい。なぜなら、それぞれのセキュリティ情報では、パッチを当てるべき多数の製品がカバーされているからだ。例えば、MS08-075のセキュリティ情報では、最新のデスクトップ版とサーバ版のWindowsソフトウェアの5種類のバージョンがカバーされていた。Microsoftは1件のセキュリティ情報で、5つの製品向けのパッチをリリースしたのだ。与えることの素晴らしさはそれを大げさに言い触らさないことにあるという人もいる。確かに、バルマー氏の会社も毎月顧客に提供しているパッチの実数を言い触らしたりしていない。
バルマー氏はMicrosoftのOEMやシステムビルダーからVista以前のWindowsを取り上げることができなかった。同氏はWindows XPの販売期限を幾度も延長し、メーカー各社にXPの販売を許可したのだ。なんとすごい男だ。その上MicrosoftはNetbook向けにWindows XP Homeのライセンスまで販売した。このようにWindows XPの延命が続くのなら、誰がVistaなど必要とするだろう?
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