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» 2006年11月24日 12時20分 UPDATE

シゴトハック研究所:一人でできないことは同志を募って始めてみる【解決編】

新しい取り組みを習慣として根付かせるためには、一人だけでやるよりも、仲間を募って一緒に試みることも重要です。

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題:行き詰まってしまった仕事の状況を変えるには

 コツ:同志を募って始めてみる


 問題編では、一人でやってみたものの長続きしなかったという「早朝出社」の習慣を取り上げました。これに限らず何かを習慣として根付かせるためには、相当のパワーがいります。少しでも気を抜くと、とたんにこれまでの習慣に逆戻りしてしまうからです。でも、いったん習慣として定着してしまえば、後は勢いに乗ることができます。

 ちょうど、自転車をこぎ始める時に似ているでしょう。止まっている状態ではペダルは重いものですが、スピードが乗ってくれば、必死にこがなくても楽に、しかも速く進むことができます。

 何かを始めることは、何かを続けることよりも抵抗が大きいわけです。そこで、この抵抗を少しでも和らげるために、同じような目的や課題を持っている人と一緒に始めてみる、という方法があります。

自ら背水の陣を敷く

 中国の戦国時代を生きた項羽のやり方は苛烈でした。楚の上将軍宋義を手にかけ自らが楚軍の最高指揮官になった項羽は、秦の軍勢に包囲されていた同盟国の趙を救うべく、救援に向かいます。しかしながら、指揮官としての日が浅い上に、配下の軍勢も寄せ集めに近いものでした。

 そこで、項羽は黄河を渡り前線近くまで来たところで、乗ってきた船を沈め、3日分の食糧を残してほかは廃棄し、自らの退路を断ちます。この結果、将兵たちは戦いに勝つほかに生き残る道がなくなったため、必死にならざるを得ません。いやが上にも志気が高まります。こうして楚軍は予想外の勝利を収めることができたのです。

(注:劉邦配下の将軍・韓信も背水の陣を布き、敵軍を撃破したことがある)

 現代においては、これほど過酷な“追い込み”をする必要はないかもしれませんが、人は退路を断たれて初めてその潜在能力を発揮するものです。言い換えれば、それをしなくてもほかに方法がある、すなわち選択肢が豊富にある状態では、そのつもりがなくても楽な方へと流れていってしまいます。

 何か新しい習慣を始めるに際して、同じような目的や課題を持っている人と一緒に始めることは、「今しなくてもいいだろう」という安易な選択を抑え込む上で役に立ちます。「彼がやっているのだから、自分もやらなくては」「自分から言い出した以上は、メンツにかけてがんばらなくては」といったソーシャルなプレッシャーが生まれるわけです。

毎朝1時間早く出社してみる

 先日、ある会社の会議に同席していたところ、雑談混じりに「毎日時間に追われている」という悩みが話題になりました。あるいは「毎朝ギリギリに出社して、そのまま午前中はバタバタと過ぎていくので、どうも午前中の時間がうまく使えていないような気がする」といった声も上がりました。

 これに対して、「早めに出社すれば余裕を持って過ごせそう」「仕事がはかどりそう」という意見が出たため、「実際にやってみませんか?」ということで、翌日から2週間(10営業日)限定で、その会議に参加していた4人の方全員で「毎朝1時間早く出社する」という取り組みを始めました。

 その会社の始業は9時のため毎朝8時に出社することとし、出社したら参加メンバー全員に以下のような出社報告メールを出すようにします。

  1. 前日の朝8時に来てやった仕事
  2. 朝早く来て仕事をしてよかったと感じたこと
  3. 早朝出社についての現状の課題

 こうして全員がめいめいの早朝活動を把握できるため、それが刺激となって早朝出社のモチベーションが上がるとともに、抱えている課題を共有することでお互いに解決のためのアイデアを出し合うという流れができました。たとえば、「現状の課題」には以下のようなトピックが寄せられました。

  • 早く寝るにはどうすればよいか?
  • せっかく早く来てもメール対応だけで終わってしまう
  • 何をすべきかを前日のうちに決めておかないと無駄に時間が過ぎていく
  • 短い睡眠でも済むようにするための工夫は?
  • 早く起きるには早く寝ないとダメだという当たり前のことに気づいた
  • 早く来るためには、そもそも前日に早く帰る必要がある
  • 早朝の時間に期待しすぎる。タスクを入れすぎて現実逃避してしまう
  • 自分は睡眠時無呼吸症候群かもしれないので、今度検診を受けようと思う

 そして、予定していた10営業日を終え、振り返りと総括をしていただいたのですが、その中で印象的だったのが、「特に早起きでなくても、とにかく日常に何か変化を持ち込むことが大切なのではないか」という意見です。この方は、今回の取り組みを通して自分の時間の使い方や仕事に対する考え方を振り返るきっかけになったと、まとめています。

週に1度、技術情報交換会を開く

 応用事例として、特定テーマについてのランチ勉強会を定期開催する、というアイデアも考えられます。そのテーマに関心のあるメンバーを募り、持ち回りで講師を決めて発表をするようにすれば、勉強の動機づけになるでしょう。

 あるソフトウェア会社では、毎週金曜日の夕方に技術情報交換会を開いています。エンジニア同士でその週に自分の関心を引いたWebサイトやためになった記事などを持ち寄ってシェアすると同時に、毎回テーマを決めて、メンバーの1人がそれについての解説を行うというもので、その会社の中では「軍議」と呼ばれているそうです。

 「習慣として継続できたらいいんだろうなぁ」と思えるようなことがあれば、同じように思っている人に声を掛けて、一緒に始めてみましょう。お互いに刺激し合えるのはもちろん、習慣として継続させる上でも力強い後押しが得られるはずです。

 まずは期間を限定して始めてみて、効果が期待できそうであれば、ルールを調整しながら継続するのがコツです。項羽が勝利を収められたのは3日間という期間限定の追い込みだったからでしょう。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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