メンバーのやる気とタスクを一元管理する【解決編】シゴトハック研究所

プロジェクトリーダーが求める情報、メンバーが求める情報。普通、進捗ミーティングを行って確認するわけですが、Wikiをうまく活用すれば、手間をかけることなく情報共有が可能です。

» 2006年12月15日 22時29分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

プロジェクトをうまく進めるためのWikiの活用法とは?

  • プロジェクトのタスク管理と情報交換をWikiで行う

 例えば「戦争」というプロジェクトにおいては、本部にいる指揮官と、前線で戦う各部隊という2つの立場があります。指揮官にとっては、各部隊に対して適切な指示をするための判断材料として、以下のような情報が必要となります。

  • 自軍の戦略(目的)
  • 全体の戦況(背景)
  • 各部隊の状況(制約)

 これらの情報を活用して、あるいは組み合わせて、各部隊ごとに具体的な戦術という形で指示を出すわけです。

 一方、各部隊にとっては、目の前で行われている戦闘において、どう戦うかを決めるためには、以下の情報が必要です。

  • 指揮官から指示として与えられた戦術(目標)
  • 目の前の戦況(足場)
  • 他の部隊の戦況(連携点)

 これらの情報は、具体的な戦闘をする上での指針となるでしょう。特に敵軍を挟み撃ちにするような場合は、自部隊の状況把握に加えて、挟み撃ちをするもう一方の部隊との連携をスムーズに行ううえで、その部隊の動きも把握しておく必要があります。

 これらを整理すると、指揮官の仕事におけるアウトプットは「各部隊に対する具体的な戦術」であり、各部隊の仕事におけるアウトプットは、「個々の戦闘に勝利すること」ということになります。つまり、戦略(目的)に基づいて戦術(目標)が決まり、これに沿って戦闘(アクション)が展開されるわけです。

現代のプロジェクトにおける2つの視点

 この指揮官と各部隊という2つの視点は、現代の「仕事プロジェクト」でも見受けられます。すなわち、プロジェクト・リーダーの視点と各メンバーの視点です。

 リーダーにとって、第一に気になること、あるいは気にすべきことは、以下の3点でしょう。

  • 仕事の全容(目的)
  • 全体の進捗状況(背景)
  • 各メンバーの進捗状況(制約)

 同様に、メンバーにとっては、

  • 何をするべきか(目標)
  • 自分の進捗状況(足場)
  • 他のメンバーの進捗状況(連携点)

 という3点について常に注意を払うことが求められます。

 この両者がお互いにうまく機能するためには、まず、リーダーは、各メンバーに対して、何をいつまでに行うか(目標)を明確にし、さらには各メンバーのやる気を引き出す(動機付け)ための役割を担います。

 一方、各メンバーはリーダーの適切な判断を支援するために、最新の進捗状況をリーダーに報告する必要があります。とはいえ、報告資料の作成や報告のためのミーティングに多くの時間を取られていては、仕事のスピードが上がりませんので、そのための時間は最小限に抑えたいところです。

すべてをWikiでシェアする

 「報告書作成」や「進捗ミーティング」の実態は、自分が把握できていることを改めて人にも分かるように言語化すること、といえるでしょう。

 報告書は、それを目にする人に対して自分の状況を伝える手段になるだけでなく、それを作る過程で、自分が行っている作業を再確認することができる、というメリットもあります。また進捗ミーティングでは、ほかの人がどんなことをやっているのか、あるいはどの程度進んでいるのか(あるいは遅れているのか)を知る機会となります。

 とはいえ、「報告書を作る」という作業はあまり心躍るようなものではないでしょう。どちらかというと、決められていることだから仕方なく、ということが多いのではないでしょうか。それは、以下のような心理的障壁があるためだと考えられます。

  • 報告書を作るにあたって、改めて自分の作業を思い出す必要がある
  • 報告書を作るために、いったん手を止める必要がある

 報告すべきことが大量にある場合、あるいは報告の頻度が低い場合は、報告書作成の時間の大半は、「自分がいつ何を行ったかを思い出すため」に使われるでしょう。特に何の記録も残していなければ、日々のスケジュールを振り返ったり、自分が送信したメールを読み返したり、と複数箇所を“掘り返す”ことになります(記録がなければ思い出すしかありません)。これは、面倒であると同時に、思いのほか時間を取られる作業になります。

 そして、報告書を作るためには、一定時間、作業の手を止める必要がありますから、報告書作成には、「わざわざ時間をかけて、面倒なことをする」という“レッテル”が貼られてしまうわけです。

 思い出す時間を減らすには、報告すべき内容を覚えているうちに記録してしまうことでしょう。それも、手帳などにメモをするのではなく、最初から報告書のフォーマットに書き込むようにします。こうすることで、メモはその1回切りで済みます。毎週金曜日に報告書を出す、ということであれば、月曜日から毎日、日々の報告メモを書き足していけば、週末には報告書が完成していることになるわけです。

 さらに、日々の報告が常にリーダーの目にも触れるようになっていれば、リーダーは金曜日を待たずしてプロジェクトの進捗を把握することができるようになります。当然、進捗ミーティングの時間も削減することができるでしょう。

 これは、Wikiに各メンバーが日々の報告を挙げるようにすることで実現できます。具体的な方法については、次回詳しくご紹介します。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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