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» 2007年02月09日 11時03分 UPDATE

シゴトハック研究所:「前向きな先送り」のすすめ【解決編】

「先送り」は常にいけないものかというと、そんなことはありません。意識的に「先送り」することで、プレッシャーを減らして作業を行える場合もあります。そんな「前向きな先送り」とはどんなものでしょうか?

[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 今回の課題:どうしても先送りせざるを得ない時のうまい先送りの方法は?

 コツ:先送りを許した上で“敵”の裏をかく


 今回のテーマである「先送り」については、以前も「先送り繰り返し症候群」根絶法という記事で、以下の2つのコツを駆使した「先送りに慣れないようにする」方法をご紹介しました。

  1. 名前を変える
  2. アプローチを変える

 ここでは「先送り」をいかに防ぐか、に焦点を当てていましたが、今回取り上げる「前向きな先送り」は、もはや先送りをせざるを得ない状況に陥った際に、いかにうまく先送りができるかというアプローチになります。

「前向きな先送り」とは

 まず、「うまく先送りをする」とはどのような先送りでしょうか。それは、以下の2つが満たされたものと考えられます。

  • 今の「苦しみ」を少しでも緩和させる
  • 先送り相手である「未来の自分」にスムーズに引き継ぐ

 つまり、単なる「問題の先送り」にするのではなく、少しでも進んだ状態を作ったうえで「未来の自分」に引き継ぐ、という姿勢です。

 対極にある「後ろ向きな先送り」はどうかというと、いわゆる「丸投げ」です。それについて考えることすらイヤになり、ぎゅっと目をつぶって先送りしてしまう姿勢です。ここには、「未来の自分」に対する過剰な期待があります。「今日の自分」には到底無理だが、「明日の自分」なら、きっとできるはずだ、という根拠のない自信から、実は「そんなことできるはずがないのに……」と薄々気づきながらも、先に送ってしまうわけです。

 果たして、先送りを受けた「明日の自分」が「今日の自分」に変わると、先送りの“前科”がついた仕事に向き合うことになります。これがプレッシャーをより大きくして、ますますやる気をそぎ、やる気の“負債”を雪だるま式にふくらませてしまいます。

 とは言え、「先送りをしてはいけない」と思うと辛くなりますので、一転「先送りをしてもよい」ことにしてしまいます。ただし、1つだけ条件をつけるようにします。

「追われるモード」と「追いかけるモード」

 仕事をしている時というのは、大まかに分けて以下のいずれかのモードにあるでしょう。

  1. 「追われるモード」
  2. 「追いかけるモード」

 「追われるモード」は文字通り、締め切りに追われている状況を指します。一方、「追いかけるモード」は、締め切りに対して前倒しで進めている状況です。余裕があるため、ポジティブな気持ちで仕事に取り組めますし、自分の仕事に自信を持つことができます。

 「後ろ向きな先送り」をしてしまうのは「追われるモード」にいる時でしょう。先送りをすることでそのモードから脱け出すことができるからです。もちろん、仕事を終わらせない限りは先送りをしても一時的には楽になっても、先に書いた通り“利息”が上乗せされて追いつかれる運命にあります。

 そこで、いったん先送りをすることで「一時的に楽な状態」を作り、その間にリードを稼ぐようにします。この時、わずかな時間ながらも「追いかけるモード」にシフトすることができますので、ポジティブな気持ちを「追い風」にして、「追われるモード」ではできないことをするようにします。

「散らかす作業」と「組み立てる作業」

 仕事の内容を大きく分けると、以下の2つの種類になります。

  1. 「散らかす作業」
  2. 「組み立てる作業」

 「散らかす作業」とは、時間にとらわれず、あらゆる可能性を検討するような作業を指します。ブレインストーミングはその典型です。ここでは、決められた形にまとめ上げたり、終わらせたりする必要がないことが多いため、その分プレッシャーも少なくて済みます。

 一方、「組み立てる作業」は、文字通り、完成を目指してまとめて上げていく作業です。当然、組み立てるのに必要な材料がそろっていることが前提になりますが、材料さえ揃っていれば、完成までの工程がイメージしやすくなり、かかる時間の見通しも立ちやすくなります。

 この2つの作業は、性格が異なるものです。そのため同時進行させようとする、すなわち、散らかしながら組み立てようとするとムダが多くなります。材料が揃っていないのに、焦って組み立て作業を始めると、途中で足りない材料に気づいたり、より良い材料が見つかったりして、それまでに組み立てたものを分解するという不必要な作業を生み出してしまうのです。それでも、期限があれば何とか完成させなければならないため、いわゆる「やっつけ仕事」の様相を呈してきます。

 これを防ぐためには、それぞれの作業を明確に分けて進めることです。分ける上では先に挙げた2つのモードに沿うのがわかりやすいでしょう。

 まず、「散らかす作業」は「追いかけるモード」に向いています。「まだ終わらせなくてもよい」という安心感が視野を広げさせ、アイデアが浮かびやすくなるからです。アイデアとは材料のことですから、この段階でなるべく多くのアイデアが用意できれば、組み立てる作業が楽になるでしょう。

 そして「組み立てる作業」は「追われるモード」です。すでに材料がそろっているため、やるべきことが見えていますから、さほど迷うことなく一直線に進めることができます。追われながらも、見通しが立っていますから、「追いつかれる心配はない」という確信を持つことができるでしょう。

 この、作業の種類とモードの組み合わせの知識が、先送りをせざるを得なくなった時に役に立ちます。

 まず、対象となる仕事を「散らかす作業」と「組み立てる作業」に分け、それぞれに必要と思われる時間を割り当てます。例えば、30分間は「散らかす」ことだけに専念します。こうすることで、その30分間は一時的に「追いかけるモード」にシフトすることができますので、「終わらせなければ!」というプレッシャーを抑えられます。

 材料が揃えば、残りの「組み立てる作業」のメドは立ちますから、例えば「あと1時間あれば終われそうだ」という見通しが得られるはずです。多少ぶれるかもしれませんが、「あと何時間かかるのか、さっぱりわからない」という状態よりは気持ちが楽になるでしょう。

 「散らかす作業」の良い例は、「マップを描く」ことです。頭の中にあることを縦横無尽にマップに落としていき、それを並び替えることで、自然と完成形が見えてくるはずです。そして、描いたマップの内容を資料にまとめていくのが「組み立てる作業」です。

 例えば、「明日の昼までに企画書を作り上げる」という締め切りに追われていても、2つの作業に分解して、

  • 今日は「散らかす」だけでもよい

 その代わり、

  • 明日は「組み立てる」だけで済むようにする

 という条件をつけた上で、「組み立てる作業」を意図的に先送りするようにします。翌日は、組み立てるだけですから、分けることで、どちらの作業もプレッシャー少なめで進めることができるでしょう。

 仕事における最大の敵は「己の心」だといえます。いったん先送りを許すことで「己の心」を油断させ、その間に一気に出し抜くようにするわけです。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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