「仕事が好き」から「仕事に厳しい」へ──杉田裕一さん達人の仕事術

ホットヨガスタジオ「LAVA」や「まんが@カフェGeraGera」の運営などで知られるベンチャーバンクの取締役杉田裕一さん。『仕事の好きな人』と『仕事に厳しい人』の違い、そして3段階に分ける企画の立て方、1コマ90分に1日を分けるスケジューリングまで、仕事のやり方に関するヒントを聞いた。

» 2007年07月03日 00時00分 公開
[高橋暁子,ITmedia]

 杉田さんは、マーケティング代理店の電通ワンダーマン勤務などを経て、2005年4月よりベンチャーバンク営業部門を統括している。同年11月には、ベンチャーバンクコミュニケーションを設立、同社社長に就任して建設デベロッパーなどのマーケティング業務を行っている。当然、その業務は半端な量ではない。それだけの業務をこなす秘訣はどこにあるのか。

「仕事の好きな人」と「仕事に厳しい人」の違い

 自らの仕事であるマーケティングで杉田さんが信条としているのは、徹底的に考えること。

 お客はまず商品を知るところから始めて、徐々に自分で調べたり商品を手に取ったりといった段階を踏んで、最終的に購買行動につながる。その段階ごとの橋渡しをうまくしてあげるのがマーケティングの役目だと杉田さんは考えている。その段階が途中で切れたり、説明不足だったりしないように、できるだけスムーズに移っていけるようにするのが大切であり、そのためにその間をつなぐ方法を考えることが重要なのだ。

 こうした仕事のやり方を、普段の仕事のフローにも応用している。杉田さんの仕事のやり方は、部下の仕事のやり方を自分に合わせさせるというものだ。従来のやり方を引き継ぐのではなく、仕事の進め方から確認のフローまで、“杉田流”で行うよう、部下を教育する。

 「こうするようになったのは、2000年頃に過労で倒れてからですね。周囲に合わせて仕事をして無理をしすぎたせいです。それ以来反省して、自分のやり方で仕事を進めようと思うようになりました。きっと傍目にも、『仕事の好きな人』から『仕事に厳しい人』に変わったと思います」

 杉田さんは、いつも「なぜそうなるか」について考える。物事を判断する基準も、「理にかなっているかどうか」だ。

 だから先に決まっていたアポイントメントでも、重要度に合わせて時間を動かすこともある。たとえば社内ミーティングは、後からもっと大事な仕事が入ったら躊躇なくキャンセルする。もちろんそのときは、納得するような理由をはっきり伝えられるのが必須条件だ。

企画書の立て方は3段階

 杉田さんは、企画書の立て方も一工夫している。

 「3ステップに分けて進めていくのです。1段階目ではアウトラインを作るだけにして全体像が見えるようにしておきます。2段階目でやっと必要な図や表をPowerPointで入れ込む作業をし、3段階目では全体を通して言葉に一貫性を持たせる作業(ブリッジをかける)をします」

 初めからきちんと作りこんでいくよりもこの方法がいいのは、時間がないときでも2段階目まで終わっていれば何とか形になることだ。ちなみに、3段階目の使っている言葉に一貫性を持たる作業は、その企画により説得力を持たせるための作業となる。

 「部下の企画書は必ず自分でチェックしているのですが、1段階目のアウトライン、つまり大筋の流れが終わった段階で確認するようにしています。図や表まで入れ込んでから修正となると、時間の無駄が大きいですからね」

1日を90分 6コマに分けてスケジューリング

 杉田さんはスケジューリングの仕方もとてもユニーク。複数の会社の業務をこなすために、数年前から、プロジェクトマネージメントの研修で学んだスケジューリング法を実践中だ。

 「1つの枠を90分にして、午前中2コマ午後4コマの計6コマでスケジュールを決めておきます。ですが、電話などで途中中断させられて、なかなか90分きっかりは仕事できないものです。そこで、90分の枠には、60分でこなせる量の業務量を予定しておいて、確実に終わらせるようにしています。たとえ終わらなくても、次のコマには持ち込まないようにするのです」

 1日中忙しかった……と思っても、1日が終わってみると案外仕事が進んでいないという経験はないだろうか。その理由の1つは、電話やメールで集中力や仕事自体が中断され、まとまった仕事ができなかったせいだ。90分1コマを特定の仕事に充てることで、しっかりと“その日やらなくてはならない仕事”に集中できるようになる。1コマが90分という単位なのは、人の集中力が続くのは90分程度なため。大学の講義などと同じ長さだ。

 スケジュール表を見せてもらうと、通常は省いてしまうような項目もきちんと組み込んであるのに気がつく。まず、打ち合わせのための「移動時間」なども計算して入れてあるのだ。そして、会議やクライアントとの打ち合わせなどの対外業務だけでなく、部下の週報や企画書のチェックなどの社内業務のためにもきちんと枠を取ってあるところがポイントだ。

 「自分にアポを取っておくようにしています。そうしなければ、結局その仕事の時間は取れないままで業務が終わりませんから」

びっしりと予定が詰まったスケジュール表。これが6カ月先まで組まれている。

 仕事の進みが悪いもう1つの原因は、社内業務を予定に組み込んでいないことだ。大抵の人は先に対外業務を予定に入れてしまい、社内業務は合間にやろうと考えるので、結局時間が取れず滞ることが多くなってしまう。

 また、社内業務の時間を予定として確保しておくことで、部下に仕事を与えたときに締め切りも自動的に決まる。「○○の企画書のチェック」というコマをスケジュールに入れることで、部下はそのコマまでに仕事を終わらせなければならないからだ。

 ちなみに、1コマ目は午前9時から、2コマ目は10時半からだ。日中の90分のコマの間は、メールのチェックやWebの閲覧などは行わず、予定した内容に集中するようにしている。電話やメールなどの細切れのタスクが、業務効率を悪化させるからだ。その代わり、朝は5時半に起きてメールをチェックし返信などに充てている。午後7、8時以降はフリーの時間となるので、その日に終わらなかった業務をしたり、会食をしたりしているそうだ。

 また、すべての業務はプロジェクトごとに週単位の計画を作っている。3カ月にいっぺん新しく作成して、6カ月間の見通しを立てられるようにしているという。

 「きちんと先々まで決まっていると、計画的に業務を進められるようになります。社内にもこのやり方は徹底しています。事前に細々としたことまで計画を立てるのは嫌という人もいますが、慣れるとこれ以外のやり方では効率悪く感じるようになるようです。この事前のスケジュール調整にはかなり時間をかけていますね」

 杉田さんの言葉には必ず実践が伴っている。「たとえその場は和まなくても、正しいと思ったことはやるべきだしやらせるべき」という言葉に説得力が感じられた。

スケジュール用(仕事とプライベート兼用)、メモ用、クライアント業務用、社内業務用の4つのシステム手帳。ポストイットなどが入った筆記用具入れ。クライアント用と社内用を分けているのは、クライアントにほかの仕事を見せず、自分たちだけの仕事をしていると思ってもらいたいためだ
プロフィール
お名前 杉田裕一(すぎた・ゆういち)
経歴 1966年生まれ。電通ワンダーマン勤務などを経て、2005年4月よりベンチャーバンク取締役。同年11月、ベンチャーバンクコミュニケーション設立、同社社長に就任。事業本部担当取締役として営業部門を統括。
PC ソニー「VAIO typeF」「パナソニック Let'snote CF-W5」
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) ドコモ SO903i
デジタルカメラ ソニー Cybershot
ブラウザ Internet Explorer 6.0、Firefox 1.5
収集ツール(RSSリーダーなど) いきなり事情通
メールクライアント Outlook
インスタントメッセンジャー Windows Liveメッセンジャー
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) Googleデスクトップ
バックアップツール
検索サイト Google
Webメール Windows Live hotmail
ブログ TypePad
SNS mixi
ソーシャルブックマーキング
Wiki
影響を受けた人/本/Webサイト 影響を受けた人:波多野精紀氏(現、市場通信代表取締役)、電通ワンダーマン時代の上司。イマジネーション豊かにシゴトに取り組み、成果を作り上げていく姿に大きな影響を受けました。本:熊谷正寿著「一冊の手帳で夢は必ずかなう」。現在の仕事への転職を決意させた1冊です。
座右の銘 すぐやる。必ずやる。できるまでやる。
手帳/ノート システム手帳(バイブルサイズ):スケジュール用
システム手帳(A5)メモ用
システム手帳(A5)クライアント業務用
システム手帳(A5)社内業務用
ペン PILOTフィードホワイトライン(黒赤青+修正テープ)

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