チームメンバー間でシゴトハックを交換しあうコツは?【解決編】シゴトハック研究所

企業研修のやりかたはいろいろですが、費用をかけて外部の講師を招いて……と考える前に、社内のノウハウを共有する方法も検討しましょう。ペアでノウハウを共有することのメリットとは何でしょうか。

» 2007年07月13日 11時33分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]

今回の課題

 チームメンバー間でシゴトハックを交換しあうコツは?

 コツ:相手の仕事に関心を持つ


 前回、「チームハック」の皮切りとして、チームメンバー同士で、お互いの「1人ハック」を伝え合うことから始めることをお勧めしました(7月6日の記事参照)。そこで今回はそのための具体的な方法をご紹介します。

 ペア・スケジューリング(6月15日の記事参照)やペア・ミーティング(6月22日の記事参照)では、お互いの予定や実績を見せ合うことに重きを置いていました。ここでやり取りされるのは、予定や実績そのものだけではありません。その過程で必然的にお互いが持っているシゴトハックの交換が行われるのです。

必要に応じて必要な分量だけ特別な出費なしで

 例えば、特定の業務分野における専門知識を教えるセミナー、あるいは特定のプログラミング言語の基礎が学べるワークショップなど、いわゆる社外研修に参加したことがあるという方は少なくないでしょう。ここでの特徴は、

  • あらかじめ決められたカリキュラムを
  • 決められた時間だけきっちり過不足なく
  • それなりの費用負担で

 という3点です。参加者は、思い思いの受講動機を持って研修に臨むわけですが、必ずしも全員のニーズが100%満たされるわけではありません。例えば、カリキュラムを100としたとき、ある受講者はこのうちの30はすでに習得済みであれば、この30についての時間と費用は無駄ということになります。もちろん厳密な形でこの部分を切り出すことは難しいかもしれませんが、集合研修においてはこのような個別に異なる重複部分が参加者の数だけ生じてしまうわけです。

 また、原則として決められた時間だけ拘束されることになりますから、自分にとって学ぶべきことがない領域(上記の30に当たる部分)にさしかかると、その時間は無意味とはいわないまでも、中身の薄い時間にならざるを得ないでしょう。このような濃淡があったとしても、費用は一律です。

 一方、ペアでシゴトハックの交換を行う場合は、お互いに仕事上で必要な情報交換をする中で、副次的にシゴトハックがやり取りされることになるため、次のような特徴を持つことになります。

  • 必要に応じて必要な分量を
  • 必要な時間だけ無駄なく
  • 無料で

 いずれも改めて取り上げるほどのことではないかもしれませんが、通常であれば仕事の予定をやりくりして時間を作り、お金をかけて習いに行く必要のある内容を、普段どおり仕事をしながら、しかも特別な出費なしで身につけることができるわけです。しかも、自分の知識量や理解レベルに合った「マンツーマン講習」ですから、教える側にしても教えられる側にしても時間効率は極めていいといえます。

 もちろん、体系的に学ぶべき内容であれば、この方法は向きませんが、およそビジネス関連の研修であれば、「仕事に役立てる」ことが前提になっているはずですから、今目の前にある仕事の課題を解決するための知識やノウハウをすぐに利用できる形で吸収できるという意味では、ペアでシゴトハックの交換を行うことのメリットは小さくないでしょう。

相手の仕事に関心を持つ

 社外研修とは別に、ある分野に詳しい社員が講師として壇上に立つ社内研修もよく行われています。参加する側にとっては、社内で行われるために都合がつけやすいというメリットがあります。

 会社としても特別な出費なしで行えるため、大幅なコスト削減になりえます。厳密には、講師を担当する社員の人件費がコストにはなりますが、集合研修である限りは、参加人数が増えてもさほど変わらないため、社外研修とは比較にならないでしょう。唯一デメリットがあるとすれば、講師を担当する社員の機会損失です。本来であればプロジェクトに参画して売り上げを立てられるはずだからです。

 ペアでシゴトハックの交換を行うことは、社内研修に似ています。異なる点は、ペアの双方ともに何かを教えるつもりがない状態でも始められることです。予定や実績を相互に報告し合う過程で、ふと疑問に思ったことを相手に質問することによって、初めて交換が生まれるのです。

 「昨日は、DM発送リストのチェックとラベル貼りに予想以上に時間がかかりました」

 「リストチェックとラベル貼りのどちらが重かったですか?」

 「うーん、リストチェックですかね。ラベル貼りはアルバイトさんに手伝ってもらえたので」

 「リストチェックは具体的には何をするんですか?」

 「Excel上の顧客リストに対して、前回発送分のうち宛先不明や受取拒否だったものを消し込んでいくんです」

 「えー、それはアルバイトさんにお願いしてもいいのでは?」

 「いやぁ、個人情報が絡むので……」

 「名前の列だけ非表示にして、パスワード付きでシートの保護をすれば安全だと思うけど」

 「え? パスワード付きで保護? 非表示にする方法は知ってますけど、それは知りませんでした。教えてください」

 「えーと、メニューバーで[ツール]を選んで……」


 このように、お互いの仕事について報告し合うことによって、たとえ自分では「これは仕方がなかったのだ」としか考えられなかったことであっても、相手から「もっとうまいやり方があるのに──」という別の視点を引き出せることがあるのです。

 ポイントは、相手の仕事に関心を持つことです。具体的には、疑問を持ち、質問を投げかけることです。

 「彼はどうしてこのようなやり方で行ったのだろうか?」

 「自分ではこのやり方がいいと思うのだが、彼のやり方のメリットは何だろうか?」

 あなたのやり方を相手に伝えるだけで、相手は質問をしてくるでしょうし、逆にあなたが疑問に感じたことを相手に質問することもできます。質問された方は、それまでは当たり前のように行っていたことについて改めて考えさせられることになります。つまり、もともと何かを教えるつもりがなくても、無意識に行っていたことを相手から問われるままに答えていくことで、結果として相手はあなたから有益な学びを得ることができるのです。

 筆者も、日々のペア・ミーティングの中で、必ず相互質問タイムを設けるようにしています。そこではお互いの仕事の進め方について、感心させられる部分があれば、その意図やコツについて聞くようにします。例えば、「なぜ、この仕事はいつも予定どおりの時間に終わらせることができるのか」(相方の作業実績の中で、ある特定の仕事には時間のブレがないことに気づいたため)といった質問をするのです。

 すると、相手はそこで改めてその理由を考えます。こうすることで、無意識にやり遂せてしまっていることを振り返り、そこに隠れている法則性のようなものを引き出すことができます。得られた法則は、質問した側にとって有益なばかりでなく、答えた本人にとってもほかの仕事に活かせるなど応用の余地が出てくるでしょう。

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『「手帳ブログ」のススメ』がある。


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