“閉鎖空間”でも情報を得る──危機管理の「ながら学」樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

根をつめて仕事に打ち込んでいると、知らず知らずに外部の情報と隔絶した状態になることがある。一種の閉鎖空間にあり“ながら”外部の情報を取得する方法とは──。

» 2007年07月19日 23時40分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 会社は、一種の“閉鎖空間”。根をつめて仕事に打ち込んでいると、知らず知らずに外部の情報と隔絶した状態になることがある。大きな事故や災害があっても、発生から数時間たっても社内も部内も誰も知らなかった──なんてこともあるわけだ。しかし、そういう状態では危機に直面した場合に即応できない。危機管理上問題があるといわざるを得ないのである。

知り得た情報は周りに知らせなければならない

 現役だった1996年〜97年当時、インターネットの常時接続がまだ一般的ではなかった。筆者は机の上には必ずFM文字多重放送の受信端末、「見えるラジオ」を置いていた。見えるラジオでは、液晶画面に最新ニュースのテロップが流れる。それも大事なニュースだけである。こうして世界中の大事件を社内の誰よりも早く知ったことが何度もある。商社であるから、海外ニュースであっても客先との関係に影響することが少なくないし、為替の大きな変動は一大事であった。

 常時接続が当たり前になった現在であれば、ネット上の速報はすぐに見られるようにしておこう。わざわざニュースサイトにアクセスするのが面倒だ──ということであれば、画面上に常に表示しておくニュースティッカーのようなソフトや、Googleアラートのようなサービスを使うといいかもしれない。

 さらに大事なことは、そうして知り得た大事件は周りに知らせなければならないこと。もはや義務である。「おい、急いでテレビを見ろ。○○工場の燃料タンクが爆発したぞ」と直ちに部内全員に呼びかけたこともある。それに応じて、資材の確保や客先への見舞いを手配するのだ。

冷え切った局面打開に「gigabeat」

 最近ではカバンの中に小型の携帯テレビを入れている。なかでもワンセグチューナーを搭載した東芝製HDD内蔵ポータブルメディアプレーヤー「gigabeat V801」は最高だ(5月28日の記事参照)。携帯電話でもワンセグチューナーを搭載したモデルがあるが、いかんせん録画容量が少ない。gigabeat V801は80GバイトのHDDを搭載しており、約390時間も録画できる。録画した番組は立ちっぱなしの通勤時間に見るのだ。

gigabeat V801

 それだけではない。この東芝のgigabeatで、新しい録画文化を創れると思っている。それは「デスクトップ・レコーディング」という“ワンタッチで即録画”の概念だ。

 会社にいるときもgigabeatを起動しておく。ただし、作業に悪影響が出るので音声は消しておこう。視界の片隅にいつでもgigabeatが入るように設置しておき、何か気になる放送があればワンタッチで録画を開始する。場合によっては音声をオンにするのも辞さない。重大事件の際に音声を入れることで、周囲に知らせる効果があるからだ。

 筆者のgigabeatには、そうしたワンタッチ録画の動画をスクラップブックのようにたくさん保存している。重大なニュースだけでなく、面白いコマーシャルや個人的に関心のある番組も保存する。客先との対面コミュニケーションに行き詰ったとき、こうしたニュースをさっと見せたりすると、事態を打開できるかもしれない。

寝“ながら”聴くのも大事

 自宅で、早朝5時とか6時のテレビやラジオの定時ニュースを、寝“ながら”聴くことも大切だ。電力関係の仕事をしていた時期は、チェルノブイリの原発事故を半分寝ながら聴いていた。急いで飛び起き、まだ仕事をしているニューヨーク支社に電話したりして情報をかき集めた。阪神大震災の時は、この寝“ながら”情報の効果を実感した。かなりの大きな地震があったとの一報で、枕元の電話機で神戸の友人に即連絡しようとしたが通じない。

 だが、枕元にあった携帯からだと掛かったのである。当初、それほど大地震だとは思っていなかった。長い呼び出し音の後で、友人が電話に出てきたとき、冗談で「生きてるか」と言うと、「生きているのが信じられないほど」と言われた。ギョッとした。「枕元めがけてタンスが全部倒れました。動きが取れずにいたら電話が鳴ったんです。それで自分が生きているのが分かりました。これから外に脱出します」と、ふるえた声がまだ耳の奥に残っている。

 「がんばって」と励ましつつ携帯を切ったら、もうそれからは何日も電話も携帯も通じなくなってしまった。数カ月後、連絡が取れて友人が無事だと分かったので胸をなでおろした。7月16日に発生した「新潟県中越沖地震」もいち早く知ることができた。被災者の皆さまも、くじけることなくがんばってほしい。


 筆者は、第2次関東大震災や東海大地震もいつか必ずやってくると信じている。だから営業で外を周り“ながら”も、大震災への対策は怠らない。筆者が所長を勤めるアイデアマラソン研究所でも携帯式の防災キット「ポッケの中の防災キット」も開発した。この中には、カード型FMラジオ、多目的ナイフ、金属笛、小型ライト、マスク、三角巾など震災発生時に2時間生きぬくために必要なものを詰め込んでいる。常に、ズボンの後ろポケットやカバンにいれ“ながら”歩いているのだ。

防災キット「ポッケの中の防災キット」。大人用は1つ1575円。東芝グループの従業員と、その定年退職者のためのサイト「TBLS Shopping」でセット販売している

今回の教訓

重大事件ほど1人占めするな、共有せよ──。


何をしながら、何をする?――面白い“ながら”を教えてください

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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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