「ボートマッチングサービス」の役割を考えるBiz.ID Weekly Top10

先週アクセスを集めた「『できる』ToDoリストの作り方」。筆者のToDoリストには「参院選」とあった。今回の選挙ではボートマッチングなるサービスが現れたが──。

» 2007年07月31日 20時07分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 今回のアクセスランキングは、「『できる』ToDoリストの作り方」がトップを飾った。実はこの記事の反響を受けて書いた「秘書がいればToDoリストは不要?」もランキング圏外の11位にランクインし、ToDoリストへの関心の高さがうかがえた。

 さて、筆者のToDoリストだが、先週末の欄に記入しておいたのは「参院選」。大学では政治学をちょびっとかじったこともあり、筆者は選挙が嫌いではない。むしろ好きだ。ただし、自分がどこの政党に投票するのかということに関心があるのではなく、選挙結果を眺めて「あ〜、今回の選挙はこういう投票行動が発生したのか」「この政党/候補が人気を集めたのか」などと分析することにある。選挙というよりは、大規模な調査もしくは人気投票と見立ててるわけだ。

 筆者のような“選挙好き”は置いといて、実際には「誰に投票していいか分からない」という人も少なくない。忙しいからマニュフェストなんか見てらんないし、選挙カーからの演説もうるさいだけ──なんて思っているビジネスパーソンも多いだろう。

 そんなビジネスパーソン向けに、公職選挙法の規制がかかる公示日の前にやっておきたいネタがあった(実際はズルズルと日にちが経ってしまい、結局できなかったが……)。それは、オンラインのボートマッチングサービスである。「ボート=Vote」つまり投票のことで、表示される質問に答えていくと、自然にどこの政党/候補者に投票すれば良いか分かるのだ。

 有名なのは毎日新聞の「えらぼーと」(7月6日の記事参照)。神戸大学法学部の品田裕教授らが開発した「投票ぴったん」や、静岡大学情報学部佐藤研究室が運営する「投票エージェント」(すでに終了)などもある。

毎日新聞の「えらぼーと
神戸大学法学部の品田裕教授らが開発した「投票ぴったん
静岡大学情報学部佐藤研究室が運営する「投票エージェント」(すでに終了)

 こうしたボートマッチングは手軽に判定ができる上に、社会問題が学べて便利。例えばあるボートマッチングの「貧困層の増加が指摘されています。所得格差が拡大していると思いますか」という問いである。貧困層とは何かという定義や、過去と比較して貧困層の増加が客観的に分かるデータが用意されている点は良かった。

 とはいえ個人的に気になる点もないわけではない。細かい部分だが、選択肢が「思う」「思わない」の2択しかなかったのが少々不満。この問いに限らず、選択肢を選べない人向けの選択肢として「わからない」もしくは「どちらでもない」「どうでもいい」といった“第3択”も用意してあると良かったのではないだろうか。

えらぼーとの選択肢一例。ちょっと選びづらいのも事実だ

 直接ボートマッチングに関係があるわけではないが、7月30日に開催されたインターネットが選挙に与える影響を議論するシンポジウム「検証:ポピュリズムか集合知か ネット選挙の行く末」で、パネリストである上智大学の橋場義之教授(文学部新聞学科)が言っていた言葉が気になった。「(大敗した自民党の)安倍総理が『経済を発展させて豊かになる』という主張自体が否定されたわけではないと言っていたが、そもそもそれは誰もが賛成する大前提の話。どうやって豊かになるかが本来の論点だ」

 ざっくりした選択肢でも大多数のユーザーにとっては些細な問題なのかもしれない。だが、問題意識は各ユーザーごとに異なるはずで、それぞれのユーザーに適した選択肢を提示できるようになると、今よりも投票行為の助けになるのではないだろうか。政治家たちがあまりにも大前提の話しかしないのであれば、政党ごとの主張の違いも分かりづらい。それならば問題点を解説してくれるボートマッチングに期待──というわけだ。

 なお、さきほどのシンポジウムは書籍「メディア・イノベーションの衝撃」の出版を記念してのもの。インターネットがマスメディアに対してどのようなインパクトを与えているのかといった現状分析から、メディアリテラシーなどにも触れている。上記のボートマッチングでも、サービス提供者側が勝手に選択肢を操作しているのではないか、などと思われる方もいるはずだ。そうした問題が気になる方は一読してみてほしい。

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