インタビュー
» 2007年08月06日 15時35分 公開

達人の仕事術:「攻め続けるには守らない」──チェキ開発者・青崎耕さん (1/2)

富士フイルムでインスタントカメラ「チェキ」、携帯電話向けモバイルプリンター「Pivi(ピヴィ)」の開発、プロデュース全般を手がけ、現在は出向先メディアピックスの社長として、携帯電話プリントサービス「とくプリ」などを手がける青崎耕さんに、“守りに入らない”仕事術を聞いた。

[高橋暁子,ITmedia]

 「チェキ」という携帯型インスタントカメラをご存じだろうか。“インスタントカメラといえばポラロイド“という時代に、若者に向けた小型で気軽なインスタントカメラとして大ヒットした商品だ。ある意味型破りだったチェキを、企画から開発、宣伝まで一貫して手がけてきたのが青崎耕さんだ。

 動きが遅い、斬新な企画が出てこない──と大企業のビジネスパーソンは言われがち。しかし青崎さんは大企業にいながら、次々と新しい企画を実現し続ける攻めの仕事をしてきた。チェキ開発の際にも、渋る社内に対して説得を重ね、ヒット商品に結びつけてきたという実績を持つ。その背景には、青崎さん自身の仕事に対する姿勢──アグレッシブでリスクを恐れない──があった。

 大企業に在籍しながら、どうやってまるでベンチャー企業のような攻めの姿勢を取り続けられるのか。

「守らない」ことで攻めの姿勢で仕事ができる

 その秘訣は、マインドにあるという。いかに守りに入らなくても仕事ができるか──そのために心がけてきたことがある。

 1つめは、万が一現状がダメになった時にも移れる「行き先を複数用意」しておくこと。青崎さんはこれを意識しつつ、外部の人たちともコミュニケーションを取ってきた。「今の会社でダメになったら、いつでもウチにいらっしゃい」──そういってくれる会社とのお付き合いを続けてきた。こうすることで、現在の会社や役職などにしがみつかなくてもよくなる。退路を確保しなければ攻めに出ることはできない。それが、攻めの姿勢につながるというわけだ。

 2つめは「借金をしない」こと。借金がある人は会社にしがみつかざるを得ない。最たる例が家だ。家を持つことで多額の借金を抱えると、自由に動けなくなる。青崎さんは、以前持っていた持ち家を売り払い、現在は都内に一軒家を借りている。「家賃はすごく高いですが、家を持って守りに入らないためです」

 もっとも青崎さんも、初めからこうできていたわけではない。10年前、チェキを出した時が契機となった。チェキが大ヒットしたので一躍時の人となったが、特別な報酬はほとんどない。自分の会社を作ってチェキのような新製品を出せば確かに儲かる確信があったが、青崎さんは、チェキの開発やプロモーションに数十億円かかったことも知っていた。

 「やはり、ヒト、モノ、カネを集めるのは大会社がいいと思いました。その時から、“会社を使って”働こうという立場に変わりました。会社は自分の夢やアイデアを具現化するための場であり、会社は場となることで利益が上がればいいのです」

 先の心がけは、会社と対等になるためにはどうしたらいいかと考えた結論だ。ポジションにもお金にも心配がないから、上に自由にものを言うことができる。「仕事術は本当はマインドの部分が一番大事なのではないかなと思います」

“人とつながる”手帳

 人とつながること──。青崎さんの仕事術の一端は、この言葉に集約されるだろう。その意識の1つが出ているのが手帳の使い方だ。選んだ手帳は、デスクで使うような大判のものではなく、スーツの胸ポケットに入るナローサイズ。パーティなどでも常に持ち歩くことができ、いつでも取り出して使うことができるからだ。「人と出会いつながる」ことの意識がここに出ている。

 手帳の内容は、11年間にも渡る仕事や自分に関する完璧なデータベースだ。たとえば、自分史。チェキやPiviを開発した青崎さんは、過去の仕事についての話題を振られることが多い。そこで手帳に、チェキを出した時期や、インスタントカメラの歴史などをまとめてある。これで、パーティなどの場でも、即席でインスタントカメラに関するプレゼンが可能になるというわけだ。

 さらに自分で気をつけているゴルフのフォームについての注意点などの趣味的なものをはじめ、誰もが面白いと感じそうな話のネタも5〜10本くらいをストックしてある。初めて会った人との話題作り、きっかけ作りに役に立つ。その他、各種個人情報やメールアドレスなど忘れたら困るものも、ここで一括管理している。まさに、自分用の虎の巻だ。携帯などの電子ツールに比べ、手帳は一覧性が良いのが魅力だという。

 それだけのデータが詰まった手帳なので、置き忘れないよう、メモ書き用途には使わないようにしている。必要なことだけ手帳に書き写し、余計なことは書かない。情報を凝縮することで、有用な情報だけを身につけるようにしている。手帳にはそのように大切な情報が蓄積されているので、半年に1回はコピー機を使ってバックアップを取るようにしている。

いろいろな鞄を渡り歩いてたどり着いたのがこの鞄。床に置いても自立し、急な電話などで物を取り出す際にも口が大きく開いて取り出しやすいのが気に入っているという。既に二代目とか。前面のポケットには、タクシー用の千円札を数十枚常備している。そのほか、手帳、メモ帳、ノート、ペンケース、鍵、コインケース、印鑑、デジカメ、Pivi、Piviフィルム、携帯眼鏡、USBメモリ、携帯のバッテリー、予備カード&予備名刺入れ、資料ファイル、扇子などなど、持ち歩く品は多いがノートPCを持たないため、重量はさほどでもない

 普段から持ち歩いているのは、コンパクトなデジカメ「FinePix Z2」。記録として「自分が取材された時の記事や、仕事の写真の他、家族の写真、遊びに行った時の写真なども撮っています」と言う。撮った写真は後で見せるのが前提だ。カメラを取り出し、液晶画面で再生、「こんな記事になったんですよ」「こんな趣味なんですよ」と見せるようにしている。「ネタにもなるし、言葉で話すよりも見た人に信用してもらえるのでお勧め」。ちなみに、画像を保存するのに使っているのはmixiフォトアルバム。直接会っていない人とも情報共有できるのが便利だという

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