ディスカッション──企業のイノベーションを考えるイノベーションの現場から(3/3 ページ)

» 2007年11月05日 14時30分 公開
[ITmedia]
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イノベーション・テストとは?

──今回、ISIFでは「イノベーション・テスト」を開発しました。これはイノベーションの何を測るものだと考えればいいでしょうか。

イノベーション・テスト(日本語版)
それぞれの問いにYes/Noで答えてください。Yesの場合は具体例を挙げてください。Noの場合は理由もしくは必要性についての認識の有無を記述してください。
1 仕事の成果が革新的であることが評価基準となっているか?
2 成否よりも実行したか否かの方が評価されるか?
3 仕事のやり方を定期的に評価し,見直しているか?
4 過去の成功や失敗が参照可能な状態で蓄積されているか?
5 イノベーションを生み出すためのリソース(人材・予算・時間)が確保されているか?
6 そのリソースの使い方を決めるためのプロセスが明文化されているか?
7 人が集まってフラットなコミュニケーションがとれる場所がオフィスとオンラインの両方にあるか?

 イノベーション・テスト──といったときに、イノベーションの度合いをテストするのではなく、イノベーションが起こりそうかどうかをテストするものと考えています。

許斐 イノベーティブな付加価値が起こり得る、組織的な環境を評価する指標はないか? そういうことだと思う。

小野 安全基準のように、こういうことがちゃんと守られているかをチェックしていくもの。守られているほど出てくるべきイノベーションが出てきて、守られていなければ出てくるはずのイノベーションも殺されてしまう。

 イノベーション・テストの前提として、4象限の図を置いた。その背景には、イノベーションの生まれ方にはいろいろなタイプがあって、事業領域が成長しているのが成熟しているのか、組織が大きいのか小さいのか、それがたくさんの人を巻き込まないと作れないのか少人数でも作れるのか、環境によって異なる種類のイノベーションが生まれやすい環境があるはずだという点があった。

イノベーション・テストでは前提として、成長市場−成熟市場、個人−組織という軸で4象限を置いた。A→B そしてB→Dの移行を着実に実現するイノベーション環境を、テストから洗い出すことを狙っている

許斐 逆にいうと、イノベーション・テストで分からないことを考えてみても面白い。例えば、突然ある天才がやってきて革命を起こす──というのは現在、対象外。

 一番最初に考えたときは、そういった天才部分も視野に入っていた。まず最初に企業──組織を対象にしようということになったので今は抜け落ちているが、例えばビル・ゲイツは彼の行っていたレイクサイドハイスクールが、これからはコンピュータの時代だといって、テレタイプを買ってコンピュータのタイムシェアリングを契約していたから、70年代から彼は普通にプログラミングとかやっていたわけ。ジョブスにしても、アメリカという国は独裁者タイプのイノベータも含めてたくさん生み出しているけれど、もし彼らが日本に生まれていたら、きっともっと普通の人生を送っていたのではないか。

小野 ただし、このイノベーション・テストで測りたいのは、ある突然変異的な天才よりも、組織として継続的にイノベーションが連続して生まれてくることを想定している。そういう意味では、組織内に優秀な人がいたときに、規定外の高額な給料を提示できるか。できる組織とできない組織があって、すごくいい人がいたときに役員よりも高い給料を提示できたら、イノベーションが起こりやすい。そういうことはあるかもしれない。

許斐 特異的なイノベータを望むことはなかなかできないけれど、そういう人たちを活用できる、発見できるような仕組みを整えることで、仮にイノベータでなくても、総和として組織、仕組みそのものがイノベーティブな環境に変わって良くなっていく。イノベーション・テストを活用することで、組織の活性化ができれば1つの大きなアウトプットでしょう。

マイクロソフト 楠 正憲氏

小野 イノベーション・テストは、もともと模倣できる取り組みかどうかを重視している。舞い降りた天才が──とかではなくて、確かにこれをやっておけば(イノベーションの)可能性が上がるというところ。

神成 それをやっている会社から、実際に学んでいこうというのが、この連載の趣旨ですね。

 一次元的に何点というよりも、気づきを与えるというか、どんなことをやってみようか? というときに気づきを与えるものになるといいと思っている。例えばGoogleには20%ルールというものがあるらしい──といったときに、真似すればみんながうまくいくというものでもないだろうけど──。

許斐 ただ、それを真似すると何か突破口が生まれる可能性がある状況とかステップにある企業はある程度あって、その企業やビジネスは、どういう状況の人たちのことを言うんだろう──というのはあぶり出していけるだろう。どのステージにあるかによって、次のステップへ向けてどんなことがヒントになるかは分かるようになる。

──皆さんありがとうございました。イノベーティブかどうかを測るのではなく、イノベーションが起こりやすい環境にあるかどうかをチェックするためのテストが、「イノベーション・テスト」なわけですね。

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