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田口元の「楽天でつくるネットサービス」探訪 Special:「私にできるのかな……」 楽天スーパーポイントを立ち上げた元リポーター──羽柴さん

「経験なんかなくても大丈夫」。ブラウザって何? というテレビ局の元リポーターが、楽天でスーパーポイントを立ち上げるプロデューサーとなった背景とは。「自分に任された仕事から逃げ出す方が悔しい」と話す羽柴美緒さんに聞いた。

[PR/ITmedia]

 楽天でつくるネットサービス、今回は楽天市場や楽天銀行のプロデュースを手がける羽柴美緒さんにお話を伺った。いまや1300人もの社員を抱える楽天。「社員番号がちょうど100番なのですよ」と言う羽柴さんが見てきた楽天のサービス企画・運営の裏側とは。

「ここまで新入社員に任せてもらえるとは」──100人目の社員の体験

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 「お恥ずかしい話なのですが、楽天に入った当初は『ブラウザ』という言葉も分からなくて……」。羽柴さんは笑いながらそう話す。羽柴さんが前職を辞めて楽天に転職したのは2000年。まだ社員が100名にも満たないときだった。

 前職は北海道のテレビ局でリポーターをしていた。テレビ局では3年間勤めたが、契約が切れるのと同時に退社。しばらくぶらぶらしていたときに相談したのが、高校のときの同級生だった。

 「うちの会社、人が足りないんだよ。うちに来たらいいよ」と誘われた。何をしている会社なの、と聞くと「インターネットだよ」という返事が返ってきた。インターネットやコンピュータのことはまるで分からなかったが、新しい経験ができそうだと思い、すぐに上京した。

 祐天寺にある会社を見せてもらった。インターネットで買い物ができるようになる、ということは分かったが、何もかもが知らないことばかりだった。「あの、私、何も分からないのですけれど……」。羽柴さんは面接でおそるおそる三木谷社長にそう伝えた。「大丈夫、大丈夫。経験なんかなくったって」。100人目の社員が入社した瞬間だった。

 入社後、ミーティングに出ていてもほかの人が何を話しているのかが全く分からなかった。「最初は『それ、日本語?』と思うことばかりでした。ブラウザという言葉も初めて聞きました。でも恥ずかしかったので半分知ったかぶりをしていましたね(笑)」

 最初に手がけたのは楽天市場の利用規約を作る仕事だった。法学部でもないのに……と思ったが、仕事を投げ出すわけにはいかない。弁護士に連絡をとってミーティングを重ねた。「弁護士さんという人種にはそのとき初めてお会いしたのですが、どうやったら規約を作れるか、どういう考え方をしたらいいのかを教えてもらいました。なるほど、法律とはこういう考え方をするのか、とすごく勉強になりました」

 仕事はどんどん降ってきた。新しい経験が積めそうだ──とは漠然と思っていたが、ここまで新入社員に任せてもらえるとは正直思っていなかった。分からないことはとにかく聞いた。この技術はこの人に聞かなくては、この案件はこの人に話を通さなくては──。社内を駆け回る日々だった。自然と開発部と営業部の間を取り持つポジションについていた。「困ったことがあったらとりあえず羽柴のところに行くといいよ」。社内でそうした声が聞かれるまでに長くはかからなかった。

「私にできるのかな……」──楽天スーパーポイント立ち上げの現場

 いまや日本最大のショッピングサイトとなった楽天市場。もちろんすべてが順調に進んだわけではない。

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 「遊びでやってるんじゃないんだよ! うちは楽天を信用してやっているんだから、しっかりしてくれよ!」。羽柴さんは電話口で頭を下げてとにかく謝りつづけた。

 ──2001年に起きたシステムトラブルは深刻なものだった。ショッピングカート部分のプログラムに負荷がかかりすぎていて、深夜になるとサイトが落ちてしまうという事態が連日続いていた。

 最終的にはシステムの増強によって解決したが、この時期は社員が総出でトラブル対応に当たった。「あの時期は24時間サイトを監視していて、誰もが疲れきっていました」

 すべてが終わったとき、封書でショップに詫び状を届けることになった。金曜日の午後から始まった作業は結局、翌朝まで続いた。「途中で住所のラベルがなくなってしまいました。もう店も開いていなかったので社員が1通ずつ手書きしていきました。宛名が間違っていると失礼にあたるのでその確認も1つずつ行いました。気がついたら夜が明けていました」。羽柴さんは当時の様子を振り返る。

 2002年の夏になると、羽柴さんは楽天スーパーポイントのプロデュースを任された。「リリース日は8月1日だから」そう言われたのが7月の初旬だった。あと3週間しかなかった。楽天で買い物をするとポイントが貯まる──と言葉で言えば簡単だが、サイトの局所的な改善に比べ、影響範囲も大きい。

 「納期に間に合うのか?」。ポイントシステムは、当時純粋なエンジニアの立場ではない方が担当。不安に思った羽柴さんは、もともとエンジニアだった上司に相談する。「大丈夫、プログラムは僕が組む。君は企画を頼む」。そう言われたが不安はぬぐえなかった。当時の上司であった本部長は見るまでもなく多忙な日々を送っていた。「本当に作ってくれるのかしら……」そう思った羽柴さんは上司の秘書に連絡をとり、スケジュールに「プログラミング」という予定を組み込んでもらい、ほかの予定が入らないようにしてもらった。

 なんとか各部署を調整して企画や業務フローができ上がるが、リリースまで時間がなかった。あとは上司が組んでくれるはずのプログラムだけ……。そう思っていた矢先に連絡が入った。「できたよ」。約束どおり開発とテストを2日で仕上げた上司からだった。急いでそのプログラムを組み込み、なんとか3週間でリリースまでこぎつけることができた。

 ただ、このシステムの立上げはスピードを重視したのでリリース当初は最低限の機能しかなかった。その後、羽柴さんは期間限定のポイントシステムや、PCやモバイルといった販売経路によって別々のポイントキャンペーンを仕掛けられる仕組みをプロデュースしていった。「社内にも、ショップさんにも、『スーパーポイントを使えば結果が出る』と言ってもらいたいですからね」。そうした機能改善を経て、今では楽天スーパーポイントはショップへの集客キャンペーンの主軸に育っている。

「自分に任された仕事から逃げ出す方が悔しい」──プロデューサー

ks_rakuten3_6.gif 東京都民銀行との共同プロジェクト、東京都民銀行楽天支店

 とにかく意気込みで乗り切った楽天スーパーポイント。その後、さまざまな案件を担当し、プロデューサーとしての経験を積んできた。

 現在手がけているのは楽天バンク。東京都民銀行との共同プロジェクトだ。ユーザーが楽天内に銀行口座を持つことができる仕組みである。これを使えばわざわざ銀行振込のためにネットバンキングをしたり、ATMに行ったりする必要がない。まだ始まってから数カ月だが、クレジットカードを持っていない、もしくは持ちたくないユーザーに好評だという。楽天スーパーポイントにしろ、楽天バンクにしろ、羽柴さんには、ゼロから作っていくような比較的大きな仕事が任されてきた。

 「人を巻き込むのが得意なのだと思います」。羽柴さんは自分の強みをそう考えている。社内の調整をしなくてはいけないとき、たいていの人からはまず拒否されるという。誰でも面倒なことを抱え込みたくないからだ。そうしたとき、羽柴さんは「とにかくこれが終わるとどうハッピーになれるのかをあの手、この手で語ります(笑)」。押し付けるのでもなく、強要するのでもなく、根気よく説得していく。「これができたら楽しいよね」と勧めつつ、「こうやったらできるかもしれないよね」と情報を落としていくことも忘れない。

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 プロデューサーとして大事なのは「分からないことがあっても、自信を持ってみんなが行くべきところを自ら指し示すこと」。楽天スーパーポイントを企画しているときにこれを学んだ。

 当時、分からないことだらけだった羽柴さんはスーパーポイントのシステムをどうするべきか、自分でもあまり分かっていなかった。そうした優柔不断な態度を見ていた同僚のエンジニアから厳しく言われたのだ。「プロデューサーがそんな曖昧な態度でどうするんだよ!」。目の覚める思いだった。その経験がプロデューサーとしての大きな転機だったと教えてくれた。

 「そういえば『モチベーション』という言葉も楽天に入ってから知りました」と笑いながら語る羽柴さん。やる気が出ないときは気分転換に友人と食事に出たりもするが、それよりも「自分に任された仕事から逃げ出す方が悔しい」と言う。分からないことがあっても、スケジュールが厳しくても、周りの人を巻き込みながら粘り強く楽天のサービスを作り上げていく。それが日本最大のショッピングサイト、楽天市場を支えるプロデューサーの仕事術のようだ。


提供:楽天株式会社
アイティメディア営業企画/制作:誠 Biz.ID編集部/掲載内容有効期限:2008年2月29日


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