フリーアドレスを成功させたGDO、1200日間の熱き闘い新しいオフィス環境──オフィス移転、レイアウト変更のポイント(2/5 ページ)

» 2008年01月18日 19時28分 公開
[豊島美幸ITmedia]

「情報の共有が場所を超えないんですよ」 ―― 制約だらけの旧オフィス事情 ――

 まず挙げられるのが手狭なオフィスゆえの悩みだ。

 「2000年5月の設立以来、約5年半で売上高は41倍、従業員数は11倍に急成長を遂げたので、すべてが倍々になっていったんです。随時オフィスのフロアを増やしていき、最終的に2つのビルで7フロアに分散しましたね。でもそれではビル間の移動に徒歩5分かかりますし、同じ会社なのにいちいち電話をしないとコミュニケーションがとれないため、仕事効率が下がっていきました。もちろん大きな会社さんですと、大きなビルがいくつもあるのは普通なのかもしれませんが、移転時で150人にすぎない小規模な社員数では、これはかなりハードルが高いんですよ。

 オフィス内はとにかく煩雑で場所が固定化されていました。2〜3人が打ち合わせをするスペースすらなかったですね。だから当時6〜7室あった会議室の70%が、社内のミーティングに使われていたんです。その中のさらに70%は2〜3人の小規模なもの。これでは本来は外部の方とミーティングするための場所が押さえられず、逆にクライアントさんにスケジュール調整をお願いしたりして、スピードが遅くなる一方でした」

説明資料に見せてくれた旧オフィスの風景写真。今のオフィスよりかなり窮屈な印象だ

 旧オフィスでは、そのほかにもさまざまな制約があったという。

 「とにかく紙が多い。情報共有のファイルサーバもあるにはあったんですが、やはり紙にプリントアウトして保存、それにメモし、コピーして、そのうえ下手したら、さらにほかのオフィスにそれをファクスする――そんな非効率なこともしてましたので、情報の共有が場所を越えないんですよ。

 それから当時は有線LANを使っていたので、会議室に行ったらいちいちつなぎなおさないといけませんでした。さらに当社は部署が細かく分かれていて、今ですと12本部の40チームほどあるんです。だから部署のカラーが固定化される制約もありましたね」

 これらマイナス面は、将来的に会社が大きくなるにあたり足かせになる。そこであらためて見つめなおした結果、社屋を移転するという結論に至ったという。だがそれは分散しているワークスペースを一カ所に集め、面積を広くするという、単なる移転ではなかった。

 「目指したのは、あくまでワークスタイルの変革」だという。では具体的にどう改革しようとしたのか。

「社員がいかにパフォーマンスを発揮できるか。それを一番念頭に置きましたね」 ―― 最大のコンセプト ――

 「なんといっても場所の制約を最小限にとどめたいということです。どこでも必要な人とコミュニケーションができ、かつ一緒に仕事ができる。この理由からフリーアドレスに自然に行き着いたんです。なまじ共有スペースを増やす方向よりも、一気にフリーアドレスにしようという発想に飛びました。フリーアドレスという制度が、ほとんど共有スペースでみんなが仕事しているようなものですから」

 こうして行き着いたフリーアドレスの導入。だがそれは、よくあるような会社側の費用対効果を考えたうえでの結論ではないという。そしてこれこそが、GDOのフリーアドレス導入がうまくいった原点でもある。

 コスト削減が目的でないなら、では何が目的でフリーアドレス制を取り入れようとしたのか。

 「実はフリーアドレスをすでに導入している会社をたくさん見学させていただいて、お話を伺ったんですよ。そこで分かったのは、会社側のコスト削減目的での導入が多いということ。でもそれは嫌でしたね。当社がフリーアドレスを導入するのは、あくまで社員のパフォーマンスを上げるためでしたから。だいいち人間心理を考えると、いきなり4人掛けテーブルで仕事をしましょうと言われても人見知りするかもしれないし、ましてや入社したばかりの中途社員ではなおさらです。生身の人間ですから。

 だから横に余裕があって多少広く使え、その余裕を利用して打ち合わせもすぐにできるほうがいのではないかと考えました。この発想から200人の社員に対して、席を350〜400人分確保するに至ったんですよ。あくまで社員がいかにパフォーマンスを発揮できるか。これを念頭に置いたうえでのフリーアドレスです」

 あくまで社員のパフォーマンスのために――。

 同社のフリーアドレス制は、この絶対軸あってこそなのだ。

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