プロジェクターは「見せるだけ」から、「共有する」「書き込みする」に新しいオフィス環境──オフィス移転、レイアウト変更のポイント

プレゼンテーションというと、PowerPointの資料をプロジェクターで投影し、1枚1枚めくっていく――というのが定番。せいぜいアニメーションを使ったり、動画を埋め込んだりするくらいだろう。こうしたプレゼンのあり方が変わりつつある。

» 2008年01月31日 18時34分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 プレゼンテーションというと、PowerPointの資料をプロジェクターで投影し、1枚1枚めくっていく――というのが定番。せいぜいアニメーションを使ったり、動画を埋め込んだりするくらいだろう。こうしたプレゼンのあり方が変わりつつある。

「共有する」プロジェクター

 会議室の壁に、複数台のプロジェクターで投影しているのは内田洋行。「2台くらいのプロジェクターならウチでも並べて使っている」という会社もあるかもしれない。だが内田洋行の場合、「PPA(パーフェクトプロジェクションアダプター)」というソフトがポイントだ。

 このPPAは、内田洋行が自社開発したミーティング支援ソフトだ。サーバソフトとクライアントソフトで構成されており、サーバソフトをインストールしたPCにプロジェクタなどを接続し、ネットワークを経由してクライアント側のPCから操作できる。いちいちケーブルを差し替えなくても、ネットワークにさえ接続していれば簡単にプロジェクターが利用できるのが最大の特徴だ。

 内田洋行の社内では、多くのプロジェクターをこのPPAサーバに接続しており、社員はネットワーク経由で各プロジェクターを自分のPCから自由に操作できるのだ。

 PPA導入後、会議のスタイルが大幅に変わったという。それまでプロジェクターを使う場面は限られていたが、PPAで簡単にプロジェクターを利用できるようになると、会議にノートPCを持ち込む社員が増えた。今ではノートPCを持ち込まない人はいないほどだ。

 複数台のプロジェクターも簡単に操作できる。内田洋行のミーティングスタイルは、会議中に議事録も取り終えてしまう、いわゆる「議事録ドリブン」。1台のプロジェクターでプレゼンテーションを、もう1台のプロジェクターでは議事録を投影する。

 PPAの使い方も少し工夫する。PPAでは複数のPCが1つのプロジェクターに画面を表示しようとすると、1番最後にアクセスしたPCの画面が有効になる。自分の資料の途中で後から来た人の資料に代わってしまうこともあり、“プロジェクタの奪い合い”になるわけだ。プレゼン用の画面ではある程度積極的に投影できるほうが議論も活発になるが、議事録側はほかの資料を映したくない。その場合は、ほかの参加者の画面が映らないよう排他的に制御するのである。

 考え方はマルチディスプレイに近く、いわば“マルチプロジェクター”とでも言えそう。「気軽にミーティングできるようになった」というのは、PPAの開発に携わった藤原茂雄さん(次世代ソリューション開発センター)。エンジニアの藤原さんは、「開発途中のプログラムも気軽に投影できるから、数人集めたレビューも簡単に開けるようになった」という。PPAで接続が簡単になることで、プロジェクターを使うミーティングの障壁が下がったのである。

 便利なPPAだが、気を付けなければいけないこともある。PPAでは、ネットワークを通じて投影するプロジェクターを選択する。この選択時にプロジェクタの名前が紛らわしいと大変なことになってしまう。社内会議で機密資料を見せようと思ったら、他社も同席する別の会議室に映ってしまった――ということにもなりかねない。藤原さんも「プロジェクタの名前は数字だけにせず、設置場所が分かるように気を付けたいですね」と指摘した。

画面上のユーティリティで映したいプロジェクターを選択(左)。プロジェクターの名前には、設置場所をはっきりと(右)

「書き込み」できるプロジェクター

 形式ばったプレゼンテーションならまだしも、実際のプレゼンでは議論が白熱することもある。発作的に「プレゼンに書き込みたい!」と思うこともしばしば。「本来、そうしたコミュニケーションなはずなのに、紙芝居的な感じになってしまった」と語るのは、Lunascapeと共同で「Afterglow」を開発している田川欣哉さん(takram design engineering代表)。

Afterglowで利用するUSBカメラ。QVGA程度のモノでも利用できるという(左)。右の写真には、USBカメラを持つ田川さん(左)と、Lunascapeの近藤秀和代表取締役(左)

 Afterglowは、レーザーポインタの軌跡を画面上に書き込めるシステム。ソフトウェアのほかに、PC、プロジェクタ、レーザーポインタ、USBカメラを組み合わせて利用する。プロジェクタが投影するプレゼンテーション画面をUSBカメラで撮影することで、画面を指すレーザーポインタの軌道を自動追尾し、アプリケーションが動作する画面上に文字や図形を書き込むことができるのだ。

筆のような線のタイプを選ぶことも可能だ

 「PowerPointは便利だからみんな使う。でも、あまりに便利なツールだから、脇道にそれることを許さない」と田川さん。簡単にプレゼン資料が作れるのがPowerPointの魅力だが、そのためにいかにもPowerPointで作ったような紙芝居的な資料になりがち。「力量がよほどないと、PowerPointの“壁”を突破できない」ともいう。

 田川さんがイメージしたのは、学校で使っていた黒板とチョークの組み合わせ。ただし、今さら古い道具には戻れない。そこで生まれたのが「Afterglow」だった。「PCを見ながらのプレゼンではなく、昔の先生の授業のように目の前の生徒を見ながら、書き込みできるように開発した」という。

 レーザーポインタはプレゼンへの書き込みのほか、マウス代わりにもなる。キーボードから離れても操作できるから、自由な位置とタイミングでプレゼンできるわけだ。ちなみにレーザーポインタのレーザー色は、認識しやすい緑色を推奨している。

 複数のレーザーポインタを使った同時書き込みも可能。ブレインストーミングにも利用できる。大きな会場でAfterglowを使えば、レーザーポインタを持った聴衆が講師のプレゼンに直接質問を書き込む――なんていう光景が見られるかもしれない。

複数のレーザーポインタを使った同時書き込みも可能。ブレインストーミングにも利用できる

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