第3回 ロジックツリーは「現実」を反映しない新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(3/5 ページ)

» 2008年03月07日 17時00分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 さて、ここでもう一度図2をよく見てください。A〜Fまでの6項目は、それぞれ自分の「親」要素、つまりX・Y・Zという抽象度の高い要素とだけ結びついていますね?

 そこで問題です。

  • A〜Fの相互の間には何か関連性はないのでしょうか?

 答えを言うと、関連性はあります。しかし、図2のロジックツリーにはそれは書かれていません。なぜ書かないのかというと、それを書かないことが「ロジックツリー」のルールだからです。本稿はロジカルシンキングの解説記事ではないので厳密な説明はしませんが、ロジックツリーを作る場合は、通常、

  • 親要素から子要素への「分解」を表す関係線のみを書く
  • 子要素どうしの間に関係を持たせてはならない

 というルールに従います。実はこのルールこそ、ロジックツリーを「最強兵器」たらしめている大きな要因なのですが、同時にこれこそが「現実を反映していない」という弱点にもなるポイントなのです。

「現実」を表すチャートを書くと?

 それでは「現実」を表すチャートを書いてみましょう。今回事故を起こしたイージス艦のような大型護衛艦の運航業務を機能ブロック・モデル化して書いたチャートが図3です。

 図3について簡単に説明します。

船舶運航時の機能ブロックモデル

 大まかにいうと左から右に向かって「監視→判断→操艦」という仕事の順序があります。

 出発点になるのは主に目視とレーダーで海上の目標物(船舶や岩礁等)を発見する仕事です。なぜこれをするのかというと、C項として新しく挙げた「状況認知」をするためです。

 「状況認知」というのは、文字通り「自船が置かれている状況を認知すること」であり、具体的には「周囲の船舶等の同定・所在確認と航路予想」「自船の航路予想」が必要です。そしてこの状況認知のために欠かせないのが実は「目視」「レーダー」それぞれの担当者との「コミュニケーション」です。

 目視の情報をレーダー員に伝えてプロットさせたり、逆にレーダーで発見した目標を目視担当の見張り員に確認させたりといったコミュニケーションを通して、当直士官(運行の責任者)が状況を認知していくわけです。

 そしてその「状況認知」を踏まえて当直士官は「対応方針を決定」します。

 決定したらあとはその方針を操艦の担当者(操舵員など)に指示して具体的な対応を取ります。対応には「無線」「警笛」「照明」などによる警告動作と、「操舵」「変速」による回避動作があります。


 私が調べた限りでは、大型の護衛艦の運航はざっとこのようなモデルで行われています(といっても当事者に取材したわけではありませんから、間違いがあったらご指摘ください)。

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