そしてこの機会にぜひ知っておいてほしいのが、「専門知識」というのは、「専門」という言葉から受ける印象とは違って、意外に応用範囲が広いということです。
例えば私は図3について「大型護衛艦の運航時の機能ブロックモデル」であると説明してきましたが、実はこのモデル自体は小型船の場合もまったく同じです。違いは、小型船の場合は例えば船長1人ですべてをやってしまうのでコミュニケーションがいらない、というぐらいで機能モデルは同じなんですね。
さらにいえば船だけでなく、飛行機の場合も「機能モデル」としては同じです。レーダーがあったりなかったり、対応動作で使える手段が少し違ったりするぐらいで、実は同じモデルで考えられることは簡単に理解できるでしょう。
ついでにいえば、「監視→判断→操艦」という、より上位レベルの概念自体、IT技術者であれば「これって『input→process→output』じゃねーか」と気がつく方は少なくないでしょう。つまり私は図3を書くにあたって「input→process→output」というIT屋さんのモデルを応用したわけです。この種の「機能モデル」は、現実世界の「メカニズム」の本質的なところを反映しているので、多少のバリエーションがあっても簡単に応用が利くわけです。
「応用」の話ついでにもうひとつ例を出しましょう。現代はITが発展しているため、図3のモデルにおける「航路予想」の機能を備えたレーダー装置が出現しています。しかしそれは良いことばかりではなく、「航路予想という情報処理をレーダーまかせにしてしまうと、人間がアタマの中に立体的なイメージを作って状況認知をする能力が衰える」と懸念する見方があります。
このような事情も、もし図3のモデルが念頭にあれば簡単に理解できますが、図2のようなツリーではそれは難しいわけです。
ですから、「専門知識を教えよう」とする場合は、ぜひ、ロジックツリーに加えて、
を書いてください。それがあれば、一見「詰め込み」に見えるほどの情報量であっても、かえってスムーズに理解できるようになるものです。
なお、私はそのような「専門知識の整理分析」自体のコンサルティングも行っています。もし自力でやろうとしたけれどうまく行かない、という場合はぜひご相談ください。3月下旬には「専門知識を教える技術講座 実習編」という公開講座も開催する予定です。
当連載でここまで扱ってきた「専門知識を教える技術」についての本が出版されました! 書名は『ITの専門知識を素人に教える技』(Amazon.co.jp)です。
8月22日(金)に、専門知識を教える集合研修の現場での「講師」としてのアクションに特化したセミナーを開催します。プレゼンテーションとは違う「専門知識を教える」ための問いかけ、間の取り方、言葉遣いといったティーチングのノウハウを、自ら考えながら身につけたい方はこの機会を逃さずご参加ください。
「ITの専門知識を素人に教える技」出版記念セミナー(8/22) ご案内
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『図解 大人の「説明力!」』
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