“未来の出来事”から発想するアイデア創発の素振り(2/3 ページ)

» 2008年05月20日 15時00分 公開
[石井力重,ITmedia]

今回のアイデア出しのお題「5年後の空気清浄機」

 早速、今回のお題「5年後の空気清浄機」で素振りしてみたところ、次のような“未来リスト”が引っかかった。

  • すべての陸上・海上交通機関における、現行自動車排出ガス規制値をクリアする排気対策技術が実現する
  • 70歳以上の日本人女性が「シルバー貴族化」し、30兆円を超える市場を形成する
  • 団塊世代の大量退職による「退職金市場」が縮小を始める
  • 日用品の位置や状況を管理するRFタグが一般化する

 ジャストアイデアではあるが、お題とこのリストを組み合わせて、こんなことを発想してみた。

未来リスト アイデア
すべての陸上・海上交通機関における、現行自動車排出ガス規制値をクリアする排気対策技術が実現する  きれいな空気が実現することで、開放型の空間が増えるかな。清浄機のニーズがなくなる方向もあるけれど、依然、製品が使われているとすると、かなり大量の空気循環を前提にした清浄機が必要になるな。

 アイデアとしては当り前な気もするけれど、じゃあ「開放系を前提にした超高性能・空気清浄機」
70歳以上の日本人女性が「シルバー貴族化」し、30兆円を超える市場を形成する
団塊世代の大量退職による「退職金市場」が縮小を始める
 なるほど、高齢者のマーケットが拡大しているという市場の構造が、現在の状況よりだいぶ明確になっていくのか。すると、高齢者向けユースというこれまで商品コンセプトは、より明確にしたほうがいいだろう。例えば、70、80歳代の女性向けに絞りこんだ言葉づかい、色、形状、ボタンの配置がいいかもしれない。携帯電話で言う、らくらくフォンのテイストが参考になるかな。

 あるいは、年表からはしっかりとは拾わなかったけれど、ナノテクの高感度センサーが出てくるらしい。もしかしたら、1人暮らしの部屋、住人の微量の呼気からある程度の健康状態のモニタリングができるかも。そうなったら、今の象印ポットみたいに、その機器データがネットワーク経由で誰かに届けられる、というのもいいな。例えば提携医療先や保険会社に、なんていいかも。

 企画にするには、技術のデータについて出典をあたって、詳しい資料を見る必要があるけれど、この段階で発想できるのはこんな感じかな。

 「ひとり暮らしの高齢者(70代女性)向け、空気清浄機(デザインは彼女たちが20代だった頃のテイスト。ボタンは大きく。呼気から健康状態を判断して、簡易セルフチェック&メール送信機能付き)」
日用品の位置や状況を管理するRFタグが一般化する  へー、そうか。無線タグがいろんなものに仕込まれていると、かなりいろいろできそうだな。例えば人がいる方向に向けて、集中的に送風するとか、ものの移動が激しくなってきたら、自動的に空気清浄能力を上げて、ほこりが立つことに備える機能、とか

 RFタグに詳しい友人と昼飯に行ったついでに詳しい話を聞いてみるとして、今の時点ではこんな感じになるかな。「ほこり予測機能付き 清浄機」

 ――などなど。事業アイデアが出てこない、というときには、一度、未来年表をめくりながら、「お、こんなことが起こるのか。まてよ、それならうちにも関係するな……」という感覚を楽しんでみてほしい。

 なお、企画を発案する以外にも、会議の前にキーワードや分野で検索して、眺めておくのもいい。未来に起こること(予測データ)が、頭に入っていると、開発系・戦略系の会議はにわかに面白くなる。

 人は誰かのアイデアを聞くとき、それが思い付きであるのか、ヒントとなる実例やデータの裏付けがあるのか、結構分かるもの。「それ、思い込みだけじゃない?」という批判的な視点で聞き手は判断する。元にしたデータの質がいいと、「ふうん、それ、面白いな」の割合がぐっと増える。

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