今まで読んでくださった読者の皆さん、ありがとうございました。今回を持って連載「アイデア創発の素振り」はひとまず終了です。連載では、内容を端的に表現するために「である調」で書きましたが、このあとがきでは、私の思いを伝えるために、本来の文体で書かせてもらいます。「あ、中の人がしゃべっている」くらいに思ってもらえたら幸いです。
オーソドックスな“アイデアの本質”の定義は「既存の要素の組み合わせ」だと言われています。
ここから2つの重要なことが分かります。1つ目は良質のインプットが大事であること。頭の中に掛け算する要素が少ないとおのずと限界が来ますから。2つ目は、既存の要素を掛け算するチカラが大事であること。それも意外な要素同士の掛け算を生むチカラが。
この連載は、その2つにちょっとだけ助けになる手法を紹介しました。
6〜9回はインプットメソッドとして、質の良い(しかも無料で使える)インプットソースをご紹介しました。「ああ、同じことばっかり発想している」と感じたら効果的なインプットを得る時期が来た、と思い出して下さい。
2〜4回はトリガーメソッド、11〜13回はテーマメソッドとして、要素の掛け算をどんどん作るために役立つメソッドをご紹介しました。すいすい発想できる時はメソッドなんて時間がかかるだけです、無視してください。
でも「う〜ん、なんか思い付きそうなんだけど、出ないなあ」という時、それから「時間ばかりが過ぎて、1つもアイデアが出てないや、やべえ……」という時、これらのメソッドはあなたの創造力をうまく起動するためのスイッチになります。
あるいは、ブレストの司会をしていて「いや〜、全然出ないなあ」と困ったときにも記事を印刷して、皆のスイッチを軽く押してください。創造性がうまく動き出せば、メソッドは途中で放り投げてください。成功するために必要な時に必要な分だけ、でいいんです。
次回・次々回は特別編として、起業家が創った商品を、アイデアという視点から紹介する「アントレプレナー・アイデア」という記事をお届けします。枠にはまらない創造的な製品を取材する記事、皆さんがどう感じたか、ぜひご感想を筆者までお送り下さい。連載化も視野に入れて検討材料として大切につかわせてもらいます。また、面白いベンチャー製品があれば、ぜひ教えて下さい。もしかしらた筆者が伺うかもしれません。
また「アイデアに関する困りごと」があれば、ぜひ教えて下さい。今回の記事のコンセプトはすぐに使える、というものでした。しかし「ブレインストーミングの実際」のようなノウハウ系のこと、「創造プロセス」のような少し本格的なもの――などなど、まだ紹介したいこともあります。いったん終了した連載「アイデア創発の素振り」ですが、今後掲載予定の第2フェーズではそのあたりにも触れていきたいと思っています。
どんな人にも、組織にも、創造性はあります。それを引き出す何かが必要なんです。皆さんの中にある創造性のスイッチ、記事の中に見当たらなかったら、ぜひ筆者までご相談ください。
事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.