第14回 「不安」は、自分で決断することを通じてのみ解消できる実践! 専門知識を教えてみよう(2/4 ページ)

» 2008年07月11日 09時49分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

誰だって、ほめられるのは好きですよね?

 「肯定的なメッセージ」なんて難しい言い方をしましたが、要するに「ほめる」ことです。

 たいてい誰だって、ほめられるのはうれしいものです。うれしくなるとまたやる気になる、もっとやる気になる、というそれだけの話です。ところがその「それだけの話」がなかなかできません。できないからこそ、最近流行の「ビジネスコーチング」の分野では、これが重要な課題として取り上げられているのです。

 ただし、私はコーチングのプロではありませんので、自分の実体験で話しましょう。

 まず1つめはスポーツの話。1年ぐらい前から私は卓球を始めてまして、暇があればあちらこちらに出掛けて卓球の練習をしています。当然始めたばかりですから下手なわけで、まわりはほとんど自分より強い人。そこで、強い人に教えてもらうわけですが、卓球の技量に加えて、それを「教える」のがうまい人はこの「ほめる」ところがはっきりしてるんです。

 なにかにつけて「ナイスボール!」とか「今の振りオッケー!」とか「そうそう、その調子。いいよいいよー」といったほめ言葉が飛んでくる。

 すると、私は安心するわけです。そうかこれでいいんだと。良かったときには即座に明快に疑問の余地なくほめる。これができると、「これでいいのかな……」と不安な気持ちでいる初心者をぐっと安心させられるわけです。それはもう身をもって体験しました(笑)。当然これは仕事の場でも同じことが言えます。

 一方、それとは対照的だった例もありました。先月、ある卓球大会に参戦したときのこと。試合の順番を待つ間、ほかのゲームを観戦していたところ、とても真剣にプレーをしている高校生ぐらいの女の子が気になりました。いや、真剣というよりこわばったような表情だったんですね。そして、どうも凡ミスが多く、勝てそうなゲームを落としている。

 単に緊張しているだけか? とも思いましたが、どうやら違うらしいということが分かったのは、その子が試合に負けて戻ってきたときです。後ろで観戦していたコーチらしき人物と話す声が、すぐそばにいた私にも聞こえてきました。すると、

  • 「コーチ」は詰問調であれこれと問いただすかのように声をかけている。それを「選手」の子は黙ってひたすら聞いている

 という状態でした。ああ、なるほど、このコーチが後ろにいたらストレス溜まるわなあ……と、率直に言ってそう思いました。短い会話であってもはっきり分かったのは、そのコーチは「どうして○○できなかったの?」といった「質問」の表現を使って、実際には叱っていたということです。だからこそ選手が黙っていても答えを待たずに、次の「質問」という形をとった叱責を連発していたわけです。

 「どうして○○できないの?」……。仕事でも、この種の「叱責」はよく出てきますし、身に覚えのある方も少なくないはず。いつもいつもこんなメッセージばかりでは、選手を委縮させてしまいます。ちなみにその大会はリーグ戦形式の予選があったので、1試合負けてもその子にはまだ次の試合が残っていました。もっと肯定的なメッセージが欲しい、と思うのは間違っているでしょうか?

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