【番外編】作ったのは普通の会社員5人――ブログを書くだけで苗木が育つ「グリムス」ひとりで作るネットサービス(2/2 ページ)

» 2008年07月16日 18時30分 公開
[田口元,ITmedia]
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ゲーム性を取り入れたら反響倍増、メンバーも2人から5人へ

 転機が訪れたのは10月15日。笹森さんたちは知らなかったが、その日は「ブログ・アクション・デイ」だった。「ブログ・アクション・デイ」とは、あるテーマに沿ってみんなでブログを書こう、という世界的なブログイベントの日。毎年開かれており、2007年のテーマが「エコ」だった。10月15日を境に急激に登録者数が増えたのを見て、笹森さんたちは驚いた。すぐにアクセス解析を行ったところ、ブログ・アクション・デイの存在を知った。

 「調べてみると、このころの新規登録者の80%が台湾からでした。台湾のブログポータルで紹介されたらしく、グリムスの登録画面のスクリーンショットが中国語に翻訳され、そこに掲載されていました」。その日を境にじわじわとグリムスの登録者は増えていった。

 1日の新規登録者が10人になり、20人になっていった。ブログ上でも反響がぽつぽつと出始めていた。「くまめがね」というブログで取り上げられた時が特にうれしかった。このブログではポッドキャストでグリムスについて取り上げていた。グリムスの感想を直接音声で聞くことができた。とてつもなくうれしかった。

 徐々に新機能もリリースしていった。その1つが「グリムスキーワード」だ。これはブログ記事に特定の環境キーワードが含まれていると、ブログパーツに通常にはない変化を起こすものだ。このゲーム性を取り入れることにより、ブログ上での反響を狙った。「この機能を導入したら、ブロガーが書き込む単語数や新規登録者数も倍近くになりました」。笹森さんは充実した表情で、その成果を口にする。

 この頃から新しいメンバーにも協力してもらうようになった。広告系の仕事をしている相川知輝(あいかわ・ともき)さん、同僚でデザイナーの多田公介(ただ・こうすけ)さん、そして多田さんの知り合いの高塚槙(たかつか・まき)さんだ。みんな笹森さんと浪江さんが掲げるグリムスのビジョンに共感し、快く協力してくれた。

 ただ、こうしてアクセスが増えることはうれしかったが、同時に不安にもなった。ネットサービスを初めて作った彼らにとって、ユーザーに対して負う責任がプレッシャーとなり、重くのしかかってきたからだ。

 「サーバもそのころからよく落ちるようになりました。すぐにレンタルサーバの料金プランをアップグレードしましたが、それでもすぐに負荷に耐え切れなくなりました」。多くの人に使ってほしいが、サーバの負荷対策もきちんとしなくては……そうした葛藤に悩まされるようになってきた。

 そこで相川さんの紹介を経てアジャイル・メディア・ネットワークブログ・ラボにアプローチした。「ブログメディアを盛り上げたい」と考えるブログ・ラボだったらなんらかの協力を得られるのでは、と思ったからだ。笹森さんは自分のビジョンをまとめ、早速相談にいった。ブログ・ラボは笹森さんの話を真剣に聞いてくれた。「ではサーバをうちで提供しましょう」。そう申し出てくれた。うれしかった。

普通の会社員でも、仕事と両立してサービスは作れる

 現在グリムスのメンバーは5人。ほとんどの連絡はメールで済ますという。また月に2回は集まって全体の方向性を議論する。笹森さん、浪江さん、多田さんは音楽が趣味なので、たまにスタジオを借りて即興のセッションを楽しむこともあるという。

 「まだまだやりたいことがあります。普通の会社員でもネットサービスを運営できるということを示したいと思っています」。笹森さんは今後のビジョンをそう話す。現在、グリムスの登録者数は1万人を越え、ブログパーツを張り付けたブログの合計ページビューは月間800万に達しているという。彼らの活動が世界をどう変えていくかを見守っていきたい。

笹森さんは、プリントアウトしたグーグルカレンダーを持ち歩き、スケジュール管理。電卓と携帯(「SoftBank 708SC」)も欠かせない(左)。浪江さんは、アップルのMacBook(右)とエプソンのEndeavorを愛用している

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