未来が見えない――「考えすぎてうつ」をどう克服する?なぜ陥る? 「うつ」のメカニズム(2/3 ページ)

» 2008年08月22日 15時40分 公開

過去の出来事、漠然とした未来――うつや不安には、必ずきっかけがある

 まず、次の図を理解してください。横に伸びる直線は、過去から未来への時間の流れです。過去に“出来事”があり、次に“症状の始まり”、精神疾患の症状が起こり始めた地点があります。そして、本人も気付いていない“現在”があり、“漠然とした未来”という流れです。

 また、症状については後で詳しくお話ししますが、“現在”と“漠然とした未来”の間には“無意識的な目的”という症状が入ります。


 もちろん、症状が発症して、現在も進行形で発症している場合があります。

 例えば、先月あたりからうつ症状が現れ、今もうつが続いている場合もあれば、去年の夏くらいからうつが始まり、その時々でうつであったりなかったりしている。今は比較的いい状態だけど、またうつになる、といった状態。あるいは、あの夏から1年間ずっとうつだ、というような状態ですね。

 どのケースでも、必ずどこかで症状が始まっているはずです。10歳からうつという人もいますが、生まれた瞬間からうつということはありません。症状の始まりと現在は、かぶっていることも、そうでこともあります。そう言ってもピンと来ないと思いますから、かみ砕いて説明していきます。

 それにはうつや不安に5つのパターンがあることについて、それぞれ説明する必要があります。前述したように、心理的要因、対人的要因によるうつや不安、対人恐怖症などの精神症状は、表のように大きく5つのパターンで起こっています。

どうなる未来? 給料、余暇、出世、結婚、マイホーム……考えすぎるとうつに

 まず1つ目に、考えすぎ、心配しすぎているから、うつや不安という症状が出てくるパターンがあります。この症状が始まった時点で、漠然とした未来を考えすぎたり心配しすぎたりしているうちに、どんどん不安やうつ状態が深刻になる場合があります。

 例えば、「このままでいのだろうか。上司を見ていてもあまり出世していないし、出世しても仕事が多いだけだ。プライベートの時間がなくなってきて、心の余裕がない。おまけに給料が上がるわけでもない。そもそも、この会社がどこまで伸びるか分からない。貯金はしているけれど、給料が上がり続ける保証もない上、インフレだのデフレだので、貯金がいつまで持つのやら……。だいたい、この年になっても結婚していないけれど、本当に結婚できるんだろうか。結婚したとして、この稼ぎで家族を養えるんだろうか。家を買いたいと思うけれど、家を買っていいのだろうか……」と、次から次に考えすぎて、漠然とした不安がどんどん広がっていく。

 未来を考えること自体は悪くないんです。現実的な未来は、把握しておく必要はあるでしょう。けれど考えすぎ、心配しすぎなんですね。

 給料が上がり続けるかといったら、上がり続けない。上司みたいになりたいかといったら、なりたいわけではない。この会社、この業界がどうなるのか分からない。今は自分にしかできない能力で仕事を得ているけれど、若い連中はどんどん新しい技術を身に付けていて、自分がいつまでこの業界で通用するのか分からない。じゃあ管理職かと考えるけれど、人を扱う経験がそれほどはい自分が、マネージャーとしてどこまで生き生き延びられるか。管理職になったら毎日午前様でで、どう考えても早く帰れるとは思えない。

 果たして本当に60歳までこれをやり続けるんだろうか。それに意味はあるんだろうか……。

 でも、どんな意味があるのか、考える暇もない。転職したいとは思うけれど、転職して絶対よくなるとは思わないし、転職してもっと大変だったら嫌だし、それを考えると今のままの方がいい。でも今の状態はちょっと嫌だ……。

 考えればいくらでも不安なんですね。考えすぎてどうなるか予想がつかず、漠然とした不安に襲われてしまったり、未来に希望や可能性が見出せず、うつになったりします。

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