次に考えたのが、自社の守るべきものは何かということ。
「当社は、測量をはじめとする技術が売り物です。だから、生産メーカーのように機械が壊れたら稼働できないというわけではない。では技術者、人を守るには何が必要かと考えました」
同社では、従業員の多くが現場に出ていることが多い。そこで、地震などが発生した時に安否確認をどうやって取るかを検討した結果、Webサイトを使って安否確認が行える「さいがいねっと」というシステムをオリジナルで作成した。
安否確認の対象メンバーには、従業員だけでなく、同居の有無にかかわらず希望する家族も参加できるようにしている。その上で、すべての器具やパソコン類に転倒防止器具を取り付けたり、発電機やヘルメット、作業着の調達、30人分5日間の水と食料の備蓄など、従業員全員で意見を出しながら対策を進めている。
「そういう状態なので、あまり費用はかけていません」と尼野さん。だが、公共的な仕事が多く、役所から図面などを預かる場合が多いので、大型の耐熱金庫は奮発したという。
しかし、中小企業の場合、一社ではできることに限界がある。そこで同社は、所属している組合に加入している同業者とも連携を取ろうと連絡会議も進めているそう。
「当社の取り組みはまだBCPの段階です。今後、事業継続をいかにマネジメントまで発展させていくかが大切だと思っています。現在、当社ではBCP策定と並行して、ISMS(「Information Security Management System」のこと、情報セキュリティマネジメントシステム)の取得にも取り組んでいます。概念や対策部分で重なる部分は生かしながら、会社の大きな理念として取り組んでいきたいと考えています」
『月刊総務』2008年1月号 「あなたの会社の“もしも”を救う 事業継続マネジメント」より