インクジェット式のデメリットは主に4点ある。
まず総じてインクジェット式は、レーザー式に比べると、印刷速度が遅いことが多い。家庭向けのインクジェット式プリンタを使っている人なら、インクヘッドが左右に動きながら一生懸命印刷している様子を見たことがあるはずだ。
とはいえ、最近ではレーザー式に迫る速度を持つ製品も出てきている。こうした製品は確かにモノクロ印刷時はレーザー式に引けを取らない速さだが、やはりカラー印刷を行うと極端に遅くなってしまうなど、印刷速度では不利な部分を抱えている。
2つ目は、インクカートリッジ1つ当たりでの印刷可能な枚数が、レーザー式と比べて少ない機種が多い点。
例えば、レーザー式のブラザー工業の「HL-4050CDN」を見てみると――A4サイズ紙の面積に対し、5%の面積分を印刷した際、標準サイズのトナーでは、カラーが約1500枚、ブラックが約2500枚印刷できる。大容量にトナーになるとその倍以上になる。
一方、インクジェット式のリコーの「IPSiO GX 5000」では、Sサイズのカートリッジでカラーが約400ページ、Mサイズのカートリッジではブラック以外は約1000ページ、ブラックは1500ページとなっている。
このようにレーザー式の場合、製品に標準で添付されているトナーで1000枚程度の印刷ができるのに対し、インクジェット式では製品に標準添付されているインクではカラー/モノクロで数百枚しか印刷できないわけだ。レーザー式とインクジェット式を同時に使い始めたと仮定した場合、インクジェット式はすぐにインクがなくなってしまうことになる。
最近では、ビジネス用インクジェット式の一部機種で、ようやくレーザー式と比較してもそん色のない大量印刷が可能な製品が出てきたが、まだまだ限られている。大量印刷が可能なビジネス用インクジェット式では、エプソンの「Offirio PX-B500」がある。標準のMサイズカートリッジを利用した場合、ブラックで約3000枚、カラーで約3500枚の印刷が可能だ。
デメリットの3つ目は、水分を持つインクを使って印刷するため、どうしても印刷用紙が水分を吸ってしまう点だ。
普通紙を使うと、紙がインクの水分を吸い、それが乾燥する時間差によって用紙が波打ってしまう。普通紙を使ってA4用紙に写真やグラフィックを印刷すると顕著に分かる。
もちろんインクジェット専用紙を使えば解消できるが、ビジネス利用で何千・何万枚もの専用紙を使うとなると、気軽に使える安価な普通紙とのコスト差がどうしても出てきてしまう。
そして4つ目は、給紙可能な用紙の枚数が、製品によっては少ないことだ。ビジネスで利用するのに、A4用紙の100枚や150枚程度の給紙しかできないと、あっという間に用紙切れになり、用紙を継ぎ足さないといけなくなる。
ドクトルP というわけで、ここでインクジェット式のデメリットをまとめると――。
プリンちゃん なるほど……。ということは、インクジェットでは、大量に印刷を行うとインクや用紙がすぐになくなっちゃうのね。
ターくん な〜んだ。インクジェットには落とし穴もあるんだなあ。
プリンちゃん ほら、すぐ決めなくてよかったでしょ? 物事はせめて両面から見ないと、ね。
ターくん だな。ドクトルP、もっとプリンタのこと教えてください!
ドクトルP おっと。積極的で非常によろしい。じゃあ次はレーザープリンタのことを見ていこうか。
プリンちゃん&ターくん はい!
インクジェット式に対し、古くからビジネス利用されてきたのがレーザー式である。印刷の仕組みはこうだ。
まず光源に半導体を用いる半導体レーザーを、感光体と呼ばれる部分に照射する。すると、レーザー光が当たった感光体の部分が帯電し、そこにトナーが付着する。トナーが付着した感光体上に用紙を通せば、トナーが用紙に付着する。付着したトナーを、定着器の熱と圧力で用紙上に定着させれば、印刷完成となる。
なお、レーザー式は「半導体レーザー式+乾式電子写真方式」「LEDヘッド+乾式電子写真方式」や「間接静電転写方式」など、製品によって異なる記述がされていたりする。これらに関しては、次回以降で解説していくが、今の時点では、基本的にレーザー式プリンタの仲間であると理解していれば十分だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.