火、水なしでも「あったかごはん」 イマドキ非常食を作って食べてみた「いざ」への想定力が決め手、企業の震災対策&グッズ(3/3 ページ)

» 2008年09月08日 12時50分 公開
[豊島美幸,ITmedia]
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 カレーを試食する他編集部の記者。1口ほお張ると「意外においしい! 具もゴロゴロ入っている」と笑顔を見せる。この表情から味の感想が伝わるだろうか。

 さらに、「そこらに売ってる普通のレトルトと変わらない」と牛丼を気に入った様子の別の記者は、レンゲを口に運ぶ手が止まらなかった。


 筆者の手が止まらなかったのは、フリーズドライの状態のままのシチューである。

 メインのカレーなどができあがるのを待つ間、待ち切れず思わずつまんだところ、塩加減が絶妙なスナック菓子のようで、1度食べ始めると止まらなくなってしまったのだ。お陰で缶の置いてある前を通過するたび、手を出す羽目になった。

 この“スナック菓子”に対して「お酒が欲しくなりますね」とコメントした記者もいた。シチューで多くあった感想が「鶏肉がしっかりと噛みごたえがある食感」というものだ。また、味噌汁では「ダシがしっかり効いていておいしい」という意見が多かった。

 試食した記者たちの口から一番よく出てきた言葉は、「意外においしい」だった。非常食は、まず食べられればよく味は二の次。そんなイメージを抱きがちだからこそ、こうした感想につながったのかもしれない。筆者自身もカレーライスをほお張った瞬間、「あれ、意外においしい」と、思わず口にしていた。

 ホリカフーズは「とにかく普段と変わらない食事」という主旨のもとレスキューフーズを開発をしたという。コメントの限りでは、メーカーの狙いは当たったようだ。

非常食と日常食は、どう違う?

 また、試食してもらった記者たちから上がった素朴な疑問は、「非常食って日常の食事とどう違うの?」というものだ。同じ疑問を抱く読者の人もいるだろう。

 確かにレトルトや缶は近所のスーパーに行けば手に入るから珍しいものではない。しかもこの製品は賞味期限は2年半。5年や10年保存できる非常食に比べれば、保存期間がとりたてて長期ではない。だから違うのは、ガスも電気も止まり、火も起こせないし電子レンジも使えない制約された状況下でも食べることができるよう工夫されている食品――という点なのである。

 レスキューフーズは、付属の発熱材と発熱溶液を使える点。サバイバルフーズは、湯を注ぐだけ。湯がなければ水でもいいし、水もなければそのまま食べてもかまわない点と、長期保存可能な点などが、非常食としての役割を果たしているのではないだろうか。

携帯性とコスト面が課題!? イマドキ非常食事情

 ただ、携帯性を考えると「少ない量でもカロリーが高いチョコレートが非常食に最も適しているのかもしれない」という意見が記者たちから出た。例えばチキンシチューは個包装にしてもらえたら、もともと軽いから携帯性が増すだろう。

 また、価格はチキンシチューが8820円、レスキューフーズが3328円する。シチューは20杯分として1杯441円、レスキューフーズは1食約1109円。安いとはいえない。例えばレスキューフーズは、発熱材と発熱溶液があれば、ほかのレトルトなどでも使えるから、発熱材・発熱溶液を別売りにしてもらえると経済的かもしれない。

 ともあれイマドキの非常食は電気、水道、ガスもない中で手軽に「あったかごはん」にありつけ、おまけに「意外においしい」ことが判明した。

 せっかく防災意識が高まる9月、いつものランチにこうした非常食を食べてみるのも悪くない。筆者ももちろん――


 「いっただっきまーす!」――なのである。



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