反感を買わない、効果的な怒り方「正しい」怒り方、教えます(2/2 ページ)

» 2008年09月26日 12時00分 公開
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気まぐれで怒らない

 自分の気まぐれで怒らないということも大事です。ちゃんとした軸があって怒っているのだったら、部下は「そうか。あの人はこれで怒るんだ」と理解できます。それが、昨日はリポートを提出できなくても「いいよいいよ(笑)」だったのに、今日は「できてないじゃないか!」といって怒る、ではダメなんです。部下は何を基準に頑張ればいいのか、分からなくなってしまいます。そうすると、もうその上司は信用されませんね。

 親と子供の関係でも、人様にこういう迷惑をかけたら怒るとか、こういうことをしたら怒るという基準がちゃんとあって怒る親であれば、子供はどんなに怒られても、「ああそうか。こういうことだから怒られるんだ」ということが分かって納得します。気まぐれではなくて、誰が見ても「ああ、そうか。だから怒ってるんだ」と分かる軸が欲しいですね。

「タバコ、吸っちゃだめ!」より「タバコ、吸わないんですよね」

 昔は、電車の中で子供が騒いでいるのを見かけたら、「ほかの人達に迷惑でしょ!」と、大人が怒ったものです。しかし、今はそういった光景はほとんど見られません。

 それにもかかわらず、私は電車の中でよく怒るんです。例えば、朝の混んでいる電車で、2人分の席を占領している学生がいたら、最初は「すみませんが」と丁寧にお願いします。ところが、大人が頭を下げてお願いしているのに態度を改めない子に対しては、権利を守るためにも、本気さを伝えるためにも、「これはお前の電車じゃないだろう」と、怒ります。怒ってあげないと、その子が将来苦労するからです。

 こちらが怒ると「はい」と素直に聞く時もあれば、向こうも怒ってきて、ケンカになりそうになる時もあります。私は残念ながら、そういう怒り方しかできませんでした。

 ところが、ある日、駅の売店で見事な対応を見ました。

 明らかに学生だと分かる男の子が来て、タバコを買おうとしています。こういう場合の対応は、普通は2パターンです。「あなた未成年でしょ、タバコは駄目じゃない」と怒るか、ビクビクしながら売ってしまうかです。怒った場合は「うるせえ、ババア」みたいな感じになるし、ビクビクすると相手はつけあがります。

 しかし、この時の店員の女性は「未成年はタバコ、吸わないんですよね」と、非常に冷静な態度で言いました。すると学生は、「ああ、すみません」という感じで行ってしまった。女性は実に冷静でした。そうすると言われた側も怒りようがないのですね。

 本当に見事な対処でした。そして、私も学ばなきゃと思った次第です。今度、電車でマナーの悪い人に対応する時は、「お前の電車じゃないよ」と言う代わりに、「朝は電車も混んでますよね。この席には2人座れるんじゃないのかと思いますよね」と、冷静に言おうと考えています。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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