「つらいよね」――本人が否定するまで徹底共感簡単に信頼関係を築く方法(2/2 ページ)

» 2008年10月17日 12時35分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]
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「最近どうですか?」――相手のレベルが分からない時は軽い質問を

 会話は相手の現在のレベルに合わせて進めていきます。まだ相手と懇意になっていなくて、レベルが分からない場合は、会った時に「最近はどうですか?」というようなオープンクエスチョンを振ってみます。

 例えば、まだよく知り合っていないクライアントなどの場合は、「最近、調子はどうですか?」と聞いてみてください。そうすると、4つのレベルのどれかで答えてくれます。

「いや〜、全然ダメですね」だったら(1)のハマッたレベル。

「いや、なんとかしなくちゃと思ってるんですけどね」だったら(3)の抜けたいレベル。

「がんばってきてるんだけどね」だったら(2)の受け入れレベル。

「いい感じですよ」だったら(4)のノッてるレベル。


 ここで、相手は「いい感じですよ」と言っているのに、「つらいですよね」なんて言ってはダメです。「ウチはうまくいっているのに、この人の会社はダメなんだ。ここと契約したら足を引っ張られそうだぞ」と思われてしまいます。

 「どうですか?」と振ったら、この4つのレベルのどれかが返ってきますので、そこに共感してください。くれぐれも、自分で決めてかからないことです。

「だけど」厳禁――本人が否定するまで、とことん共感を

 ハマッたレベルとは、自分にOKを出せず、周りの人や世の中にもOKが出せていない状態です。この状態の人は、仕事もプライベートもうまくいかず、がんばってもキリがなく、先が見えない暗い状態にいます。この人たちに一番フィットするのは、「つらいよね」「キツいね」「苦しいね」「大変だね」「どうしようもないね」といった言葉。こう言われると、「そうなんですよ」と言いながらテンションが上がることがあります。

 相手と波長が合った瞬間に、エネルギーは上がるのです。それを無理やり引っ張って上げていこうとすると、言われた相手は抵抗して、余計沈んでしまいます。「よくぞ分かってくれた」と同調した時に、ハッとして少しテンションが上がります。

 ここでの禁句は「だけど」。

 「つらいね、キツいね」と言った後に、「だけど」を使って、「(だけど)がんばろう」「(だけど)大丈夫だ」「(だけど)抜けられるよ」などと言ってしまうと、相手は引きこもってしまいます。このレベルの人たちは、ハマッたレベルというだけあって、ハマッて閉じこもっている状態です。強引に外に出そうとすればするほど閉じこもってしまいますので、本人が自ら「抜けたい」という気持ちになるまで、徹底的に「つらいね、キツいね」と共感してあげます。

 本人が「確かにつらいけど……」というように、「だけど」という言葉が本人の口から聞けるまで、つまり、相手がこちらの言葉に反論するくらいまで、「つらいね、キツいね」と共感してほしいですね。

 仕事もうまくいかないし、プライベートもダメだし、過去に成功した経験もないし、未来の可能性も感じられないし、家族ともうまくいっていない、すべてうまくいかない……と話していくと、そのうち本人から、「いや、でも……」とか「だけど」が出てきます。出てこなかったら、出てくるまで話を聞いていくのです。


  次回は「(2)受け入れレベル」から「(3)抜けたいレベル」までの詳細を見ていきます。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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