またユーザーを増やすのと平行して、コミュニティのさらなる活性化にも力を入れている。「Lang-8は普通のSNSと違って、リアルな友達関係でつながっていくわけではないのです。初対面の人同士が日記を通じて出会っていくため、いかにしてユーザーに日記を添削してもらうかがカギとなります」。なるべく多くの人に日記を添削してもらいたい、という狙いはトップページのデザインに顕著に現れている。
トップページの中央には「マイフレンド最新日記」に続いて「あなたの添削を待っている最新日記」、「マイフレンドのフレンドの最新日記」、さらに「遠い友達の最新日記」と並ぶ。日記を次々に並べることによって、添削してみようかな、という気を起こさせるのが目的だ。また左のサイドバーには「マイフレンド」の下に「言語学習にお勧めのメンバー」を並べた。これもここから新しい日記を見つけて添削してほしい、という狙いから配置したものだ。
これらの工夫のためか、Lang-8に投稿された日記の9割が常時添削されているという。しかも、早いものだと数分、遅くとも1日以内には日記が添削されるというから驚きだ。
なぜここまでユーザーはほかの人の日記を添削するのだろうか。「それは自分の日記を添削してもらいたいからです」。自分が教えてもらいたいから、まずは自分ができることをする、という空気がLang-8にはある。そして、こうした空気のおかげで「荒らし行為はほとんどない」という。「ほかの言語に興味があるということは、その国のことを尊重しているということです。日本語で日記を書いている人は親日家なのでネガティブな投稿がされることはあまりありません」
またユーザーの中には自分は日記を書かずに、添削だけしている人もいるという。「言語という、誰もが持っているスキルでこんなに喜ばれる経験はなかなかないと思います。それがうれしくて添削してくれるのでしょう」。ユーザーの輪はネットを越えてじわじわと広がりつつあるともいう。「Lang-8を通じて知り合ったユーザー同士がサンフランシスコやロシアで実際に会った、という話も聞きます」と、喜さんはうれしそうに話す。
喜さんは世界にLang-8を広めるため、在学中に起業した。システムを作ってくれた松本さんもいったんは就職したが、今は一緒に働いてくれている。まだたった2人の会社だが、目指すは「日本から世界初のサービスを立ち上げる」ことだ。ただLang-8自体のビジネスモデルはまだ確立していない。今は喜さんが資金を集めつつ、松本さんがシステムの拡充を行う毎日だ。「ある月は残額2万円という時もありましたね」。喜さんは起業の難しさを笑いながらそう言うが、自分がやっていることに迷いはない。
つらい時や行き詰まった時には地元・京都の鴨川を散歩する。「歩いているだけで癒されます。ビジネスは東京の方がやりやすいとは思いますが、鴨川の魅力はどうにも捨て切れません」。起業したばかりの喜さんが好きな言葉は「努力」。「努力すれば何でもできると思っていますから」。喜さんが目指す「世界初のサービス」の今後を見守っていきたい。
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