本当に必要な自己投資を見極めるのだ シゴトハッカーズ(3/3 ページ)

» 2008年12月04日 22時47分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]
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自己投資のフィードバックは数字で得る

 対談中、大橋さんが「自己投資では、手応えを感じられるように工夫する必要がある」という趣旨のことをいっていますが、心理学的にいえばこれは「フィードバックをはっきりさせる」ということになります。

 とはいえ、勉強にせよ何らか自己啓発のための習慣にせよ、特に初めのうちは、なかなか努力のフィードバックが見えてきません。「やっただけの効果」を得るためには、一定の期間が必要ですが、その前にいやになってしまうことも少なくないわけです。

 そこで、確実にできて手軽にフィードバックを得る工夫を考えなければなりません。その方法とは、「数値を記録すること」です。

 マラソンであれば、何分は知ったか、何キロ走ったか。セミナーに出席したのなら、いくら使ったか、何分話を聞いたか、何枚の名刺をもらったか。

 どうでもいいことのようですが、初めのうちは、こうした「数字」が「フィードバック」になります。初期投資を集中的に行えば、数値の増加はあっという間です。少なくともしばらくは、それだけでも動機づけになるものです。

 いったん習慣化すれば、自己啓発的な努力というものは、実感できる努力の成果となって返ってきます。つまり、本当のフィードバックが得られるわけです。ここまで来れば、もう「数字」を積み上げなくても大丈夫でしょう。

 わざわざ断るまでもないと思いますが、セミナー参加の回数ではなく、費やした時間を「何分」と考えたり、いくら使ったかととらえる理由は、数字を大きく見せるためです。「回数」ではそう簡単に増えません。人間はやはり、効果が「大きい」ほどモチベーションが高まるものです。

 ポジティブなフィードバックを受け止めることで、行動を強化し、習慣を継続するというのは、自己投資という意味では理想的な方法です。そもそも、自己投資、自己啓発とは、そのようにして自分の強みを増強していくことが目的――ともいえます。

 またこれは、心理学でいう「内発的動機づけ」による活動であり、継続的で質の高い活動をもたらしやすい、ともされます。私自身は、金銭や承認といった「外発的動機づけ」で活動を強化するのも、同等の価値を持つと考えていますが、内発的動機づけの価値に異議はありません。効力感の得られない活動は続くものではないので、一見くだらないことのようでも、自分に成果を見えるように工夫するのは大切です。

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筆者:大橋悦夫

大橋
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1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。

筆者:佐々木正悟

佐々木
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心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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