人と会ったらお礼のメールを出すのだ シゴトハッカーズ(4/4 ページ)

» 2008年12月11日 12時38分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]
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準備しておいただけで、メールが書きやすくなる理由

 大橋さんが、「パーティーに行く前にメールを出す準備をしておく」と言っていますが、この程度のことで、メールを出しやすくなるというのは、不思議に思えるかもしれません。

 しかし、人間の取りかかり前に感じる「面倒くささ」というのは不思議なほど悪影響を及ぼすものです。お礼のメールを書くとなると、心理的な抵抗を感じる、という人は少なくありません。メールを書く意義、メールを出す必要性、メールを出すことのメリット、などなどをしっかりと認識しているという人ですら「実はちょっと大変」なのです。

 そんなわけの分からない大儀さが、始めと終わりの部分を書いておくだけで、緩和される。それも結構大きく緩和されます。なぜかというと、あて先と書き出しが決まっていることで、メールをどのように書き出し、どんなことを書くかがとてもはっきりしていくからです。書いているうちに、むしろいろいろなことを書きたくなることもよくあります。

 メールを書き始める前は、ほかのことをするように脳が「最適化」されていたのです。しかしメールを書き出せば、メールを書くように脳の「態勢」が変化していきます。両者を隔てる、そのすき間が問題なのです。ネットブラウズする「態勢」とメールを書く「態勢」とは違うのです。その切り替え時こそ、心理的には一番エネルギーを必要とします。

 そこで、あて先、書き出しなどを事前に準備しておく。できればアプリケーションの切り替えなどもしなくて済むように、自動的にポップアップするよう仕掛けておく。そこまですれば「ちょっとした大変さ」を大いに軽減することができます。

 心理学ではこれを、プライミング効果と呼んだりします。コーヒーの銘柄名は、フィットネスクラブよりも、喫茶店でのほうが思い出しやすいのです。人間が生物であってコンピュータではない証拠でしょう。まず「何か」が始まってしまうと、続けて何かをするのは、比較的容易になるというわけです。

 何事も、一から始めるのは大変だということです。だからこそ、「一から始めた」ときには、1.2くらいで終わってしまえると、楽なのです。そして次に始めるときには、1からではなく1.2から続けられると、やはり楽なのです。大橋さんのメールを書き出しておくのは、この応用です。

筆者:大橋悦夫

大橋
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1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタルハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』、近著に『成功ハックス』がある。

筆者:佐々木正悟

佐々木
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心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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