「どうしたらできる?」の前に「本当はどうなればいい?」を問いかけてみる「心のスイッチ」で心の状態を変える(2/2 ページ)

» 2009年02月02日 13時00分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]
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まず事実ありき、その制約下で考える――普通の問いかけ

 では、ここから問いかけを変える方法についてお話します。普通、問いかける場合は、以下の順番で考えます。

(1)事実は何か

(2)事実による制約は何か

(3)その制約の中で何ができるか

 普通はこのように、事実を先に考えます。例えば――。

(1)事実は何? ――バブルです。給料もいっぱいもらえます。

(2)それによる制約は何? ――何もない。

(3)そこで何ができる? ――海外旅行に行って、家を買って、車を買えます。


(1)事実は何? ――人材がいます。資金があります。

(2)制約は何? ――何もない。

(3)何ができる? ――どんなプロジェクトでもできます。


(1)事実は何? ――高景気。

(2)制約は何? ――何もない。

(3)何ができる? ――何でもできる、何でも売れる。


 このように、通常は事実がいいと、結果もいい状態になります。ところが、事実が悪いと大変です。

(1)事実は何? ――不景気だ。

(2)その制約は何? ――給料が減らされ、ボーナスもカット。リストラされるかもしれない。

(3)そんな中で何ができる? ――どこにも出かけず、家の中でテレビを観ているしかない。


(1)事実は何? ――アウシュビッツに収容されている。

(2)制約は何? ――ここから抜け出せない。

(3)何ができる? ――のたれ死ぬしかない。


(1)事実は何? ――母が急に死んだ。

(2)制約は何? ――母親が死んで、何もやる気がしない。

(3)何ができる? ――何もできない。


 普通は、以上のような流れで問いかけを行っています。

真っ先に「どうなればいいか」を考える――心のスイッチを変える問いかけ

しかし、心のスイッチを入れる問いかけは、次に紹介する順番で行います。

(1)本当はどうなればいいか

(2)事実は何か

(3)その事実を生かして、何ができるか

 本当はどうなればいいかを事実より先に問いかけるのがポイントです。例えば――。

(1)本当はどうなればいい? ――本当はこのプロジェクトを成功させたい。

(2)事実は何? ――資金もない、技術もない、人もいない。

(3)その事実を生かして、何ができる? ――今の資金と技術と人材で、成功させるにはどうしたらいいだろうと問い続ける。


(1)本当はどうなればいい? ――本当は、母親に喜んでほしい。

(2)事実は何? ――母は死んだ。

(3)母が死んだからこそ、その状況で自分が何をしたら、母は一番喜ぶ? ――泣かずに後片付けをしたら喜ぶ。


(1)本当はどうなればいい? ――雑草がなくなればいい。

(2)事実はどう? ――金も暇もない。

(3)どうしたら金も時間もかけずに、楽しく草むしりできる? ――ゲームにして家族みんなで協力してやる。


 前回も言いましたが、必ずしも完全な答えが出るわけではありません。ただ、このように問いかけることによって思い込みが変わり、心の状態がよくなります。そして、少なからず答えが出てきます。頭の中で流れてくる問いかけを変えることで、心の状態は変わります。結果的に、行動や結果も変わります。


 次回は、意識の向け方について解説していきます。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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