三本木商事ではネットの管理者のほか、コンビニエンスストアなどの売り場での業務改善や計数管理などを担当していた。ITと現場のマネジメントを買われて、道の駅とわだの駅長に抜擢されたというわけだ。
2004年にはサンチョとは異なる試みも始めた。道の駅とわだのファンを集める会員制である。チラシなどを通じて会員登録を促した。登録すると、安売りのチケットや情報誌などを送付する仕組みだ。「がっちりつかもう200人」を掛け声に始めた会員制だったが、ふたを開けてみると2006年までの2年間で会員はたったの6人。「そのうち事務局スタッフが4人だったから、実質2人だけ。道の駅とわだは支持されていなかったのです」
この会員制にもてこ入れを図る。それまで登録に名前と電話番号が必要だったのだが、メールアドレスの登録だけにとどめた。また抽選で当たるプレゼントも用意した。当たり前だが、大幅に会員が増加。今では2000人を超える会員数となる。
「はちみつやにんにくをプレゼントしたら大幅増加につながりました。だいたい何を用意すればどれくらい増えるのか分かるようになったので、今はむしろハズレネタをやっています」
このハズレネタというのは、スローライフを推奨する冊子などのことだ。はちみつなどの実物に対して応募が増えるのは当たり前だが、スローライフのようなメッセージにはそれほど応募が増えない。「ですが、それでも毎月20人〜30人の登録があるんです」
苫米地さんはこうしたメッセージを発信することが重要だと考える。道の駅には地元名産の「南部裂き織」を体験できたり、会員と地元農家が一緒に漬物を作ったりする取り組みも実施している。
「物販という“事業”と、消費者を巻き込んだ“運動”を組み合わせることが重要だと考えています」。モノだけ販売していても価格競争に陥ってしまうだけ、スローライフのメッセージにしても、体験コンテンツにしても、十和田の特産品を購入してもらうには苫米地さんたち供給者サイドの気持ちを消費者サイドと共有することがポイントだと考えているのだ。
ところで、デル スモールビジネス賞で獲得した賞金2万5000ドル(3月23日現在、日本円で240万円前後)は何に使ったのだろう。実は賞金の一部を「デジタルサイネージの実験に使っている」という。売り場の一部エリアに24インチの液晶ディスプレイを設置し、そこに道の駅とわだに関連するコンテンツを映しているのだ。
「デジタルサイネージで、利用者に対して効果的な情報発信ができれば」。ただ、いきなり設置しても最適なレイアウトなどが分からない。まずは、実験的に液晶ディスプレイを配置して、効果を見定めているというわけである。
「24インチのディスプレイって机の上に置くと大きいんですが、売り場だとちょっと小さいんですよね。デジタルサイネージ用にはもっと大きなものを使わないと」と笑う苫米地さん。ITを活用した「事業と運動」――雪解けの十和田で春の訪れを感じた。
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