顧客次第でブルー・オーシャンに――生き残る中小企業とはビジネスアワード主催者に聞く

全国で約400万社を超える企業のほとんどは中小企業。経済環境が悪化する中、中小企業の生き残る道はどういったものだろうか? 中小企業やベンチャーを対象にしたビジネスアワードの主催者や審査員に聞いてみた。

» 2009年03月26日 20時50分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 全国で約400万社を超える企業のうち、中小企業(製造業の場合、資本金3億円以下、従業員300人以下)の占める割合は99%を超える。国内のほとんどの企業が中小企業なのである。こうした中小企業やベンチャー企業が抱える問題は何なのか? そうした問題を解決した企業とは?――。中小企業やベンチャーを対象にしたビジネスアワード主催者に聞いてみた。

一転突破のシステム導入も全体を見据えて拡大

中小企業IT経営力大賞

 「これまではITなどのシステムをベンダー任せに導入するケースが多かった」というのは、「中小企業IT経営力大賞」を主催する経済産業省情報処理振興課。テーマの「IT経営力」とは、企業ごとの戦略に応じて適切なITシステムを導入し、会社の社内外と連携して生産性を高めることである。「システムベンダーに言われるままに導入するのではなく、事業内容や戦略に応じて適切なITシステムを導入すべきだ」という。

 パッケージのITシステムを導入するにせよ、SaaSのような新しい形態のシステムを導入するにせよ、自らが主体的に導入することがポイント。また、経営者がトップダウンで決めるのではなく、現場が活用できることも重要だ。

 経済面でも人材面でもとかくリソースが不足がちな中小企業では、一部署からの一転突破でシステム導入を図ることも多いが、「IT活用のステージは部内から企業全体に広がる。最終的には社外とも連携できることが望ましい」という。まずは部内からであっても、全体を見据えたシステム導入を目指せ――というわけだ。


マネタイズが前提だとイノベーティブな製品やサービスが難しい

Tech Venture 2009

 国内ベンチャーを対象にした「Tech Venture」の審査委員長を務めた西田隆一さん(シーネットネットワークスジャパン編集統括)は、現在の経営環境を鑑みて「(ベンチャーは)とにかく資金繰りが大変。(Tech Ventureでは)そのお手伝いができればと思っている」と話す。

 「成長意欲が高いのがベンチャー。だからこそ、成長のために投資が必要だ。だが、今はベンチャーキャピタルが資金を出さない」。これは不況下にあって、ベンチャーキャピタル自身が疲弊していることもあるが、ベンチャーキャピタルの投資基準が、「そのベンチャーが利益を上げているかどうかになっているからだ」(西田さん)。

 そもそもベンチャーはイノベーティブな製品なりサービスを開発して、世の中に出していくもの。いきなり収益を上げるのは難しいケースが多い。「マネタイズが前提になってしまっている」ためか、米国のように目を見張るような製品やサービスが日本国内のベンチャーから生まれにくい環境にあるのではないか、と分析した。


中小企業でも海外進出を考えてもいい

デル スモールビジネス賞

 とにかく資金繰りだ――。先ほどの西田さんと同じ意見なのは「デル スモールビジネス賞」の国内部門で審査員を務める笠原英一さん(立教大学大学院ビジネス研究科教授)。

 「中小企業やベンチャーの支援機構はいろいろあるが、ほとんど機能していない。日本の中小企業やベンチャーは、依然としていい技術やテクノロジーを持っているが、銀行も貸してくれない状況だと、誰を頼っていいか分からないのではないか」。

 資金面が理由で、国内で事業展開できないようなら、海外に打って出るのもいい。幸い現在は円高で、海外事業の展開にもプラスに働く。「国内金融のサプライサイドが厳しい状況下では、中小企業であっても海外に事業拠点を設ける方がいいのではないか」

 先ほどのTech Ventureでも2009年の大賞は、相互添削型の語学学習SNS「Lang-8」を開発、運営しているランゲート。世界中の言語学習者がお互いの母国語を教えあうという“世界戦略”が受賞のポイントだったという。ネットサービスであれば、海外拠点がリアルな事業所ではなくてもいいのかもしれない。


ブルー・オーシャンを見つけるには“いい顧客”とつきあえ

 中小企業やベンチャーの生き残りは、「満たされないニーズを見つけてくること」にかかっているという。いわゆる競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海)」を見つける作業になるが、ここで大事なのは、市場をリードするような顧客とつきあうことだ。

 「市場をリードするイノベーターたちは未開拓市場の製品やサービスに敏感だ。こうした顧客を大事にすることで、自分たちもいち早くブルー・オーシャンを発見できる」(笠原さん)。このブルー・オーシャンに居座るには、「ニーズを普通に満たしてもだめ。その企業独自のやり方でユニークに満たすべきだ」という。


 「クリエイティブとイノベーティブは異なる。クリエイティブは“Thinking Newthings(新しいことを考えること)”、イノベーティブは“Doing Newthings(新しいことを実行すること)”だ」(笠原さん)。企画段階では、どうしても机上の空論に陥りがちなことであっても、実現可能性を探ることがイノベーティブな態度だというわけだ。

 中小企業やベンチャーを取り巻く経済環境は依然として厳しい。一方でイノベーションを起こす企業が存在するのも事実。各種ビジネスアワードの受賞企業などを参考に、あなたの会社もイノベーションを起こしてみてはいかがだろうか。

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