やりたいことはやるな、できることをやれ――“最善”の選び方達人のクリエイティブ・チョイス(1/2 ページ)

困難な選択を迫られたとき、あなたらならどういう選択肢を創り出し、選ぶことになるだろうか――。そんなクリエイティブ・チョイスを実践する4人の達人、『地頭力』の細谷さん、カヤックの柳澤さん、博報堂生活総研の吉川さん、『クリエイティブ・チョイス』の堀内さんが集まった。

» 2009年05月11日 12時30分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]

 まず、次のクイズを試してみてください。これは倫理性の高さを問うために、企業の面接で実際に問われたものだそうです。

 あなたは暴風雨の中、車を運転しています。バスの停留所に差し掛かったとき、3人の人がバスを待っているのが見えました。

  1. 危篤らしい老婦人
  2. かつてあなたの命を救ってくれた旧友
  3. あなたが夢にまで見た完璧なパートナー

 あなたの車にはあと1人しか乗せることができません。だれを乗せますか?


『クリエイティブ・チョイス』まえがき

 こんなクイズにあなたはどう答えるだろうか。詳しい解説は書籍を読んでいただくとして、今回は、こうした難しい選択を迫られたときの思考法や対処法を達人に聞いた。

『地頭力を鍛える』の細谷功さん(左)とカヤックの柳澤大輔さん
『クリエイティブ・チョイス』著者の堀内さん(左)と、博報堂生活総合研究所の吉川さん(右)

論理的思考、直感――クリエイティブ・チョイスに必要なのはどちら?

 そもそもクリエイティブ・チョイスとは何か――。書籍『クリエイティブ・チョイス』の著者である堀内浩二さん(アーキット代表)はこういう。「二者択一を迫られるような状況下でも、しつこく考え抜いて、最善の結果を求めるもの。必要とあらば設問の前提すらひっくり返しでも、ベストな解を探し求める行為です」

 とはいえ忙しかったり、面倒だったりでなかなかしつこく考えられないことも多い。考え抜くことよりも、妥協して安易な回答を選んでしまいがちだ。先ほどのクイズで言えば、「1人しか乗せられないなら、老婦人か旧友かパートナーかを選ばなきゃ」というあたりに落ち着くのである。そうではなくて、「老婦人も旧友もパートナーも選ぶ」にはどうしたらいいだろう。

 書籍『地頭力を鍛える』の著者でコンサルタントの細谷功さんによると、「老婦人も旧友もパートナーも選ぶ」ポイントは直感力。「私は『守りの論理的思考、攻めの直感』と言っているが、ロジカルであることだけでは何も生まれない」。ビジネスにおいては数字の裏付けなども確かに重要だが、ベストな解を探し出すには、論理力だけでは足りない。プラスαとなる直感力を意識すべし――というわけだ。

 「クイズなんだから直球で答えたらだめ」というのは、面白法人カヤックで代表を務める柳澤大輔さん。「旧友が運転免許もっていなかったらどうする? (旧友に車を譲って老婦人を病院に送ってもらうとして)パートナーと雨の中、2人きりになって本当に幸せなのか? というように前提となるあらゆる選択肢をシミュレーションするようにしています」。あらゆる選択肢を考えることが、クリエイティブ・チョイスを行なうための訓練にもなるという。

 「僕らは面白法人という名前に恥じないよう、面白いアイデアをたくさん出すことを仕事にしています。いつもとは違う選択肢を出すことでビジネスも元気になりますよ」

論理的でも面白くなかったら話になりません

吉川さん

 問題を解決するための新しい選択肢を見つけるには直感力が重要だと分かっていても、自分自身の直感を信じるのは難しい。客先で自信満々に自分の直感を披露できる人はそうそういないはずだ。ところが「どんな選択肢を選んで理屈はいくらでも付けられる。正解はありません」と励ますのは細谷さん。「『正解がない』場合には、導き出すロジックも1つとは限らないですからね」

 柳澤さんも「いくら論理的にしっかりしていても直感的に面白くなかったら、前には進めません」と苦笑する。「直感的に『これはないな』と判断したプロジェクトは、いくら説明を受けてもピンとこないし、売り上げ予想などの数字のシミュレーションも聞きません。数字はいくらでも論理が組み立てられますから」

 博報堂生活総合研究所の上席研究員である吉川昌孝さんも「つまらないのははじきます」という。「研究所で打ち合わせをするのですが、研究所なのに直感的につまらないのは外しますね。深く考えてみようなどと言いません。そういうアイデアはだんだん話題にしなくなるだけです。自分でも分かるようになります。冷たいですよ(笑)」

 一見冷たいようだが、「アイデア自体は個別解なのだけど、直感でいいねと思われるのは汎用性を持っているはず。最低限、研究所という10人程度の集団がいいねと言わないとだめ。そのくらいの汎用性を持たないとアウトプットにさせてもらえません」というわけだ。いわば、組織がリトマス試験紙の役目を担っているのである。

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