脳に仕事をさせるには――タスクリストは隠せあなたの不安、見積もります

新しい仕事を任されたときに、「普段使っているタスクリスト」に書くべきかどうかは悩むところ。ほかのタスクに埋もれてしまいそうで不安だからです。でも脳に仕事をさせるには、タスクは“あえて隠す”方がいいのです。

» 2009年05月21日 10時54分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

ビジネスパーソンの不安ポイント

 新しく大切な仕事を任されたとき、普段使っているタスクリストに書くべきかどうかで悩むことがある。タスクは一元化するべきだと思うけれど、普段使っているリストに書き込んでしまうと、ほかのタスクに埋もれてしまいそうで不安だ。大事なタスクはやはり、目に付くところに書き付けておきたいものだが……。


気付けば埋まっているデスクトップ

 新たに発生したタスクを、普段使っているタスクリストに登録するべきか否か。悩ましい問題ですよね。メールに添付されたファイルなどで、PCのデスクトップが埋まってしまっている光景もよく見かけますが、これも同じ不安心理からくるもの。「マイドキュメント」などにダウンロードしてしまうと、ほかのファイルに埋もれてしまうという不安があるからでしょう。

添付ファイルでごちゃごちゃに埋まったデスクトップ。目立たせるつもりが、これでは逆効果にしかなりません

 しかし、せっかく「タスクリスト」を持っていながら、新しいタスクをそこに収納せず“目に付くところ”(たいていは付せんやデスクトップ)に残しておくというのは、よくありません。それをやっているとそのうち、デスクトップがいっぱいになって、“もっと目に付くところ”に取り分けたくなるでしょう。そうなったら、もともと使っていたタスクリストのことなど忘れてしまいます。

 そうではなく、タスクリスト自体は目に付かない方がいいのです。そうすれば、次のタスクが分からないときに、タスクリストを“探しに”行きます。それを繰り返すうちに、「タスクを処理するために、タスクリストをチェックする」という習慣がつくのです。

脳に仕事をさせるには、少し努力させる

 人の脳には奇妙な性癖があって、「いつも見ていられるなら、それほど重要なことではない」と思うようです。したがって「重要なタスクを目に付くところに置く」というのは、実は理にかなっていないのです。

 こんな実験があります。被験者は女性で、視線を全く動かさなくても見られるところに、男性Aの写真を提示します。つぎに、視線を動かさないと見られないところに、男性Bの写真を提示します。すると、多くの女性は、Bさんの方が自分の理想のタイプだ、と答えたのです。

 これは、「自分がわざわざ視線を動かして見たのだから、Bさんはいい男であってくれないと困る」という脳の性質を示しているのです。

 タスクは目の前に提示されていない方がいいのです。目の前に1つのタスクもないと、むしろ不安になるはずです。「今日はもう仕事がない! 万歳!」などと思うはずがなく、「いったい、今やらなければならないことは何だっただろう?」と思うはずです。そうしてタスクリストを探しに行って、タスクを見つける。そこまですれば、それは大事なことに違いない、と脳は見積もるわけです。

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筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。


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