会社ごとを自分ごとにする方法――カヤックの創造的選択達人のクリエイティブ・チョイス(1/2 ページ)

例えば遅刻を防ぐためにどうするか。「タイムカードの導入を結論にしない。考えさせ続ける」というのは“面白法人”カヤックの柳澤代表。こんなカヤックのクリエイティブ・チョイスはどのように生まれるのだろうか。

» 2009年05月21日 23時59分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]
カヤック柳澤代表

 「過去に失敗したことでも、ただ単にルール化せず新しい人が入ってきたらもう1回やる。例えば遅刻を防ぐためにどうするか。タイムカードの導入を結論にしない。考えさせ続ける」(面白法人カヤックの柳澤大輔代表)――。

 困難な選択を迫られたとき、あなたらならどういう選択肢を創り出し、選ぶだろうか。そんな“クリエイティブ・チョイス”を実践する、『地頭力を鍛える』の細谷功さん、カヤックの柳澤大輔さん、博報堂生活総研の吉川昌孝さん、『クリエイティブ・チョイス』の堀内浩二さん――という4人の達人たちが集まった。

 単純な合理化を求めず、常に新しい選択肢を考えるというカヤック。今回は、会社としてクリエイティブ・チョイスを実行し続ける彼らの仕組みに迫る。

連載「クリエイティブ・チョイス」はこちら

カヤックが鎌倉という場所を選んだわけ

 本当に面白いなら、わざわざ面白法人と名乗る必要はない。それでも敢えて面白法人と名乗ることにした。名乗ることで、言い訳できなくなるからだ――。カヤックの“面白法人”について、そんな話を聞いたことがある。

 面白い組織にするために、創業者でもある柳澤さんは人にこだわる。「最初は友人同士で創業した。一緒にやりたいと思う人は、価値観も一緒。かっこいいと思う感覚も一緒になります」。同じビジョン、同じ価値観を共有して会社を運営するために、「何をするか」よりも「誰と働くか」を重視するわけだ。

 同じ価値観の人と仕事をするためには「場所の力も強い」という。鎌倉に本社を設立して8年目。「鎌倉は、ゴミの分別をちゃんとやっているし、住民の土地を愛する意識が高い気がします」。香港生まれの柳澤さん。「海が好きだったのは覚えています。毎週のように海に行ってました」。そんな柳澤さんの原体験に共感できる人がカヤックに集まっているのかもしれない。

 とはいえ、場所の“吸引力”は今後減少するとも考えている。「通信やホログラフィー技術の発達で、アマゾンの奥地からでも会議に参加できるようになるかもしれない。将来的にはあまり場所を気にしなくてもいい時代がくる気がします。」。都内の事務所と併せて全体で120人のスタッフが在籍するカヤックでも、「鎌倉にあるから通えない」といって募集に応募しなかった人もいるという。

 価値観で人を集めるか、場所で人を集めるか、それともほかの何かなのか――。そもそも「自分たちが何を軸に集まるのかを考える」のが重要なのである。

「ぜんいん社長合宿」で会社ごとを自分ごとに

 自由な組織を作ろう。柳澤さんにはそんな思いがあった。ただ自由といっても何でもできるわけじゃない。「いろいろなことを知って、そこから選択できて初めて自由なんです」

 いろいろなこととは、例えば自分の勤める会社だ。取引先のことはよく知っていても、意外と自分たちの会社のことは知らなかったりする。売り上げや利益を知っていても、これは誰に頼めばいいのか、誰に相談したらいいのかといったことは、社内であれこれ訪ねながら判明していったりするものだ。

 こうして会社のことを知ることは、とりもなおさず別の社員を知ることになる。働いている社員を知れば、会社組織を機能としてではなく、知り合い同士が作っているもの、すなわちカンパニーとして考えられるようになる。

 会社の経営理念やルールについても同じだ。多くの社会人にとって、すでに存在している制度に従うケースが多いはず。どういう理由で作られたものかが分からなければ、どうしたって押しつけがましく感じてしまうものだ。だが自分が作ったビジョンや制度だったらどうだろう。むしろほかの人に理解してほしいと思うのではないだろうか。つまり、人を知り、制度や理念(の経緯)を理解して初めて、「会社ごとを自分ごとに」して行けるのである。

 会社を知るために、すでに運動会や社員旅行などを実施している会社も多い。経営理念を重視するカヤックでは「ぜんいん社長合宿」を年2回行なっている。「例えば会社にどういう制度があったらいいかを、自分が社長になったつもりで考える合宿です。実際に導入されるかどうかは別で、社員全員で会社のことを考えることで自分ごとになるのです。新しい給与の仕組みを考えろといっても普通の組織なら現場はそんなこと考えないですよね。まずは考えて見ることで十分なんです」

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