では金曜日以外はどうなのか。
本社では月、火、木曜日は午後8時30分、水曜日はノー残業デーとして午後6時30分を退社目標としている。臨床開発部門に限っては、海外とやりとりがあるために、海外が休日となる月曜をノー残業デーとしているそうだ。
ノー残業デーは1998年から導入していたものの、本社では2006年から2007年にかけて社員数が減り、以前に比べ残業時間が平均で約30%増加してしまった。これをきっかけに残業を削減する動きが高まったのだという。
長時間労働者に対しては、直属の上司だけではなく、その上の上司、場合によっては部門長と人事担当者との3者面談を実施し、業務上の問題点の洗い出しと改善方法の解決を探る。36協定(※)を順守するため、36(さぶろく)協定の事前手続を勤怠システムに取り入れた。「勤怠システムで、労働時間が月30時間を超える場合には事前に申請、承認を行います。必ずその上司と労働時間が超える理由を確認してもらいます。上司と部下とのコミュニケーションツールとしても使えます」(奈須野さん)
そのほか、すべての部門に個々の目標退社時間を書き込めるポスターや、音楽で退社を促す時計を配るなど、社員のマインドセットのための試みも行っているという。会社のイントラネットとして、社員が仕事の効率化に関する報告・提案の投稿ができる「カイゼンWeb」を立ち上げた。カイゼンWebへの提案件数は延べ5000件に及ぶという。「投稿された改善提案を見て、自分の仕事にも当てはめてみる人もいるようだ」(海宝部長)
さらに人事では、率先して月、火、木曜日は午後8時、水曜日は午後7時、金曜日は午後6時に人事部門のスペースの電気を消して回るなどの活動も行っている。こうした取り組みも含め、徐々に残業時間は減り、現在、本社の平均は2007年以前の数値まで戻ってきているという。
「これまで遅くまで残って仕事をすることが、ある意味“美徳”になっていたり、上司がいると帰れないという意識もあった。社員全体に時間通りに帰るのが普通だと浸透しつつあり、帰りやすくなってきていると思う」(海宝部長)
残業削減への取り組みは一見順調に思える。しかし仕事量が減らないという現実は当然あるはずだ。後編ではファイザーがこの現実にどう向き合っているのかについて触れたいと思う。
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