生活者の選択は「自利利他」、企業のCSRはCtoBに達人のクリエイティブ・チョイス(1/2 ページ)

「生活者のクリエイティブ・チョイスも始まっている」と指摘するのは博報堂の吉川さん。ポイントは「自利利他」だ――。

» 2009年05月29日 21時30分 公開
[鷹木創,Business Media 誠]

 困難な選択を迫られたとき、あなたらならどういう選択肢を創り出し、選ぶだろうか。そんな“クリエイティブ・チョイス”を実践する、『地頭力を鍛える』の細谷功さん、面白法人カヤックの柳澤大輔さん、博報堂生活総合研究所の吉川昌孝さん、『クリエイティブ・チョイス』の堀内浩二さん――という4人の達人たちが集まった。

 「生活者のクリエイティブ・チョイスも始まっている」と指摘するのは博報堂の吉川さん。博報堂生活総研では、こうした動きを書籍『第三の安心』にまとめた。


『クリエイティブ・チョイス』著者の堀内さん(左)と、博報堂生活総合研究所の吉川さん(右)

第三の安心は「しくみ直し」

 第三の安心とはなにか。吉川さんによると、第一の安心とはバブル崩壊後の「じぶん定め」、第二の安心が1998年の金融ビッグバン以降の「まわり固め」、そして第三の安心が現在直面しつつある「しくみ直し」だという。つまり、バブル後は、自分の生活レベルやぜい沢の見直して、能力や将来の目標を見定め(じぶん定め)、完全失業率4%という失業時代を迎えた金融ビッグバン以降は、子供への教育投資、家族関係の維持、地域生活の見直しなど、自分の身の回りの人とつながりを強化してきた(まわり固め)。そしてインターネットなどのインフラが整った今は、暮らしの不安を直接働きかけて鎮めようというソーシャル・リノベーション(社会の修理)によって安心を得ようとしているのだという。

 社会が右肩上がりに成長し、安定している時は時流に乗っていれば幸せを獲得できた。ある種、受け身の状態でも構わなかったわけだ。ところが現代は、サブプライムローンに代表されるような世界的な不況によって社会が揺らぐ時代。一方、インターネットなどの通信インフラの発展によって、自分自身が発信者になり得る時代でもある。

 「(第三の安心は)主体的であること。いかに他人ごとの環境を自分ごとの環境にしていくかが、創造的な選択になります」(吉川さん)。

 環境や食などの社会問題を自分のこととして考えるかどうかも指標になる。2008年に実施した内閣府の世論調査によると、社会のために役立ちたいという意識を持っている人は69.2%にも及ぶ。この数値は1975年の調査以降過去最高だ。

 意識を問うた内閣府の調査から、博報堂生活総研ではもう一歩踏み込んで「あなたは世のため、社会のため、人のために何かしたことがありますか」という行動を調査したところ、52.9%が社会のために行動していると回答した。「意識で7割、行動で5割――妥当なところなのでは」と吉川さん。男女差はあまりないという。

 5割の行動派だが、全員が被災地などでボランティアをやっているわけではない。「そこまでやっている人は5%未満。むしろ日常のことをやっている人が大半です」

 日常のことで社会に貢献する――というのは、第三の安心にも通じる。博報堂生活総研での調査で安心を写真に撮ってもらった(PDF)ところ、身近なことが多かったという。例えば、近所に咲いた菜の花。「誰も植えろと言われてないのに住んでいる人が植えた菜の花でした。食べ物でいえば食環境というより、ちょっとでも自分で作ると自給率が上がるようなプランター。雑貨ならエコバッグだったりします」

 1万円を5枚並べる人もいた。PC本体も良く出てきた。「でも、PCは本体じゃなくて情報を表しているのだと思います。同じように携帯も多かったですね。本棚の写真も何十枚もいただいた。こういう本から学んだというのが安心できるのでしょうか」

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