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» 2009年06月08日 11時56分 UPDATE

人を動かす話し方講座:「すぐバテるボクサー」にどうスタミナを付けさせる? 欠点を直すアドバイス術

「パンチ力はあるのにスタミナがない」というボクシング選手に対して、もしあなただったらどうやって指導しますか? 今回は、部下や後輩の欠点を直すためにどうやってアドバイスしたらいいか、についてお話します。

[水野浩志,Business Media 誠]

 この記事をお読みの方の中には、部下や後輩がいらっしゃる人も多いと思います。彼らを指導していく際に、多くの人が悩んでいることのひとつに「彼らの欠点をどうやって直せばいいか」というものがあります。

 ということで今回は、部下や後輩の欠点を直すためにどうやってアドバイスしたらいいか、についてお話ししたいと思います。

関根勤さんの教え方

 バラエティ番組で、バイプレイヤーの地位を確立されている関根勤さん。最近は、彼がテレビに出ていない日はないのでは、と思えるくらい、色々な番組に出演されていますよね。

 そんな関根さんが、2005年10月に『バカポジティブ』(新書版もあります)という書籍を出版されました。ネガティブなことは言うのも考えるのも嫌いで「しかられるとへこんでしまうから、徹底的にほめてくれ」と本人が言うくらい、ポジティブ好きの関根さん。そんな彼が、自らのポジティブ論について語った本です。

 その中の一節で、うーん、なるほど! とうなってしまった話がありました。それは、「欠点をほめて直す技術」というお話。

 人を育てる場合、どうしても、その人の欠点を直さなければいけない、という事態に直面します。その際、一体どうやって、相手の気持ちをへこませることなく欠点を直してやるか、ということについて、ひとつの例を基にお話ししています。

 その例とは、パンチ力はあるのにスタミナがない、というボクシング選手に対して、もしあなただったらどうやって指導しますか? というもの。

 さて、あなただったら、どんな言葉をそのボクサーにかけますか?

テクニック:ほめた上で否定しない

 人間誰しも欠点はあります。そして、その部分については、あまり人に触れられたくはないものです。

 しかしながら、他人の欠点となるとすぐに見抜いてしまう上に、部下や後輩を指導しなければいけない立場に立つと、ついつい相手の欠点を直したくて指摘してしまいたくなる人は結構多いようです。

 とはいえ、欠点をいきなり指摘しても気持ちを萎えさせてしまうことも分かっていますから、考えて指導しようとする人は、

  • 最初にほめて、その後に欠点を指摘する

 という対応を取る方がよくいます。例えば、今回お話に上がったボクサーに対しては、

 「お前はパンチ力は十分にある!」

 「しかし、スタミナが足りない」

 「だからスタミナをつけなければいけないんだ!」

 といったような言い方をするわけですね。確かにこれも悪いアドバイス方法ではないと思います。

 しかし、ポジティブ思考が好きな関根さんは、そういったアプローチはしません。欠点にまっすぐフォーカスしないのはもちろん、相手の欠点を指摘することによって相手を否定するような言葉も使わないのです。

 では、関根さんは、いったいどのようにアドバイスするのか。以下をご覧ください。

 「お前のパンチ力はとんでもないほどある!」

 「当てるのもうまい!」

 「しかし、世の中にはよけるのがうまいヤツがいてなあ」

 「そいつに当てるためには、スタミナをつけることだ」

 「そうすりゃ、絶対勝てる!!」

 いかがでしょうか。うなってしまうくらい素晴らしいアプローチですね。

 確かに、長所をきちんと認めた上で、欠点を否定するのではなく、自分よりも上手の人間がいることを匂わせて、自分自身でその欠点を克服したくなるようなアプローチをしています。

 つまり

  • 最初にほめて、その後に欠点を克服させたくなるメッセージを伝える

 というアプローチが、人の欠点を直すアドバイスの極意であるわけです。

マインド:指導者ではなく応援者という気持ちで

 部下や後輩を指導する、という立場に立ってしまうと、どうしても部下に対して上からの立場で働きかけなければいけない、という気持ちが強くなってしまう人が多いようです。

 この関係は、素晴らしい部分を伸ばしていく、というときにはあまり問題は起きないのですが、相手の欠点や短所を直そうという状況になると、問題が起きるケースが非常に多いように思います。

 というのも、欠点を直す、という考えを指導する側が持った時点で、

  • 指導をするものと受けるものが対立軸に立ってしまう

 という構図になってしまうからです。しかも、上の立ち位置から自分を否定されるということになりますから、指導される側としては心中穏やかではないでしょう。日々欠点ばかりを挙げ連ねて言われ続けてしまうと、だんだん指導者の存在が疎ましくなり、いつの間にか師弟関係が敵対関係に変わってしまうという事態に発展することが決して少なくありません。

 だからこそ、指導者の立場にあるあなたがまず、

 【指導者である前に、応援者である

という意識を、強く認識しておく必要があるように、私は思うのです。

 この「応援者」という意識を持った上で、指導が必要なときに指導する、という気持ちを持てば、きっと短所を必要以上に厳しく指摘したりすることもなくなるでしょう。また、

 「長所なんかひとつも見あたらない」

 「ほめる所などどこにもみつからない」

 「欠点ばかりが目についてしまう」

 という人も、指導者というスタンスから離れ、同じ職場にいる仲間の成長を応援しようという気持ちでその人を見てあげることで、何かしら見えてくるものもあるかもしれません。

 人をほめられない、育てられない、と悩んでいる人たちの多くは、指導力の前に、この「応援する気持ち」が不足しているように思います。

 せっかく同じ職場で働く仲間であり、なおかつ育成の責任を任されているのであれば、お互いが気持ちよく指導・育成をしていくためにも、あなた自身が「こいつを心から応援してやろう」という気持ちを持つことに、まずは取り組んでみてはいかがでしょうか。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

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 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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