売れなくて困っている新人営業マンと同行してみたら、予想以上にスイスイ売れてしまいました。いったいこれはどういうことなのか? 著者は、2人で行くとなぜか「冷たくあしらわれずにすむ」ということに注目します。
ほとんどの会社で「営業」は単独行動が基本になっています。しかし著者はあるとき、2人で営業に行くほうが、はるかに契約を取りやすいことに気がつきました。それは決して偶然ではなく、現代の「営業」現場の持つ本質的な理由がそこにはあったのです。
こんにちは。人呼んで「紙芝居★営業マン」その正体は「営業ツールコンサルタント」の吉見範一です。一部のご婦人の間ではおヒゲのステキなダンディおじさまとしても有名になっているそうですけど、本当でしょうか? え、聞いたこともない? こりゃまた失礼いたしました。
なんて冗談はほどほどにして本題に入りましょう。
前回は、売れない新人営業の明美ちゃんと同伴、じゃなくて同行したらなぜか予想以上によく売れてしまう、これはいったいどういうことだ! と考え始めたところで終わっていましたね。
なにしろ営業一筋ン十年で生きてきた私ですから、なぜ? どうして? と考えました。
考えて考えて考え続けたその末に、ふと気がつくと居眠りしていたこともないとは言いませんがご安心ください、ちゃーんと手がかりを見つけたんです。そのヒラメキは、同じように2人である会社を訪問したときにやってきました。
テレアポをしてからその日が初訪問となるその会社の敷地は、予想以上に広々としていました。正面ゲートの警備室で入社証を受け取ると、敷地内では白いペンキで書かれた歩道の内側を進むように指示されました。広い駐車場には近くで見るとその大きさに圧倒されそうになる大型トレーラーが何台も並んでいます。異様な風景を眺めながら進んでいくと、やがて敷地の奥に4階立ての白いビルが見えてきました。あれが本社か。取れれば大きいけれどこれは時間がかかりそうだな、なんて思いながら中に入ると、応接室に通されました。
待つこと数分、社名ロゴ入りアースグリーンの作業服を来た社員が2人現れました。1人はシンプルな無地のワイシャツにブルー系のネクタイで、やや白髪が目立ち始めている物腰が柔らかく落ち着きのある年配の人。もう1人は脇に抱えたA5サイズの分厚いシステム手帳がとても重そうに見えてしまう細身の体型で、メタルフレームの眼鏡が妙に似合っている若い人です。
「あれ? 向こうも2人出てきたぞ?」
それが最初の「気づき」でした。既存の取引のない会社に、紹介でもなくテレアポをして初訪問をしたときに2人出てくる、というケースはそれほど多くありません。しかも、年上の方の名刺には「○○業務課長」という肩書きがありました。
「課長」という名刺の持つ意味は、営業マンならよくおわかりでしょう。
つまり、エライ人です。
お金を出せる人です。
決裁権を持っている人なんです。
そんな人が最初に出てくるなんて、これはいったいどういうことなんだ? と、もうね、私のアタマがフル回転を始めた瞬間ですよ。ええ。
帰り道で、私は明美ちゃんとその日の議事録を確認しながらその話もしたんです。今の会社、いきなり課長さんだったねえ、話が早くて助かるよね、普通は初訪問で課長に会えるなんてあんまりないのにどうしてだろうね、明美ちゃんと一緒だと向こうも2人出てくること多いよね、ね、ね、ね、なんでかなあ、なんて軽い気持ちでおしゃべりしてたら……やられましたよ。彼女、なんて言ったと思います?
「え、私たちが2人だから向こうも2人出てきたんじゃないんですか? 私が1人で回るとやっぱりたいてい1人しか出てきませんよ」
と、彼女、当たり前のようにそう言ったんです。
2人で行ったから、2人出てきた。
あ、そうか。なんだ、そういう単純な話だったんだ。いつも気だてが良くてキレイで明るい明美ちゃんですが、この日は女神様みたいに見えましたとも。
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