ユーザーの人生を預かりたい――“ちょっと変わった”オンラインストレージ「quanp」でリコーが目指すもの(2/2 ページ)

» 2009年07月25日 13時00分 公開
[杉本吏,Business Media 誠]
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 まず挙げられたのはコスト面だ。「100Gバイトで月額980円ならば満足いく範囲。仕事で扱うドキュメントファイルならば(無料コースで利用できる)1Gバイトでも十分事足りる」(参加者)

 次に、サービスの存続に関する信頼感。「リコーがやっているなら大丈夫だろう、という感じは正直している」(参加者)。しかし、2008年11月にはYahoo!ブリーフケースが有料会員限定になり、無料会員がアップロードしたデータは告知から3カ月ですべて削除されるという出来事があった。

 有料コースを利用しているとあるユーザーは、「大企業といっても、採算が悪ければ(サービスを)やめちゃうんじゃないか――それを心配してお金を払っているところもある」とコメント。これに対しリコー側は、「人生のファイルをすべて預けて下さい、なんて言っている以上、ファイルが消えるとかサービスを止めるとか、そういったことは絶対にないようにする」と強調した。

 コストと信頼性に加え、ユーザー全員が挙げたのはインタフェースの使いやすさ。中でも、アップロードしたファイルのサムネイル表示機能や、「プレゼンにも使える」というプレビュー機能にコメントが集中した。Webデザインを職業にするユーザーからは、「候補となるデザイン案を10個並べて、(quanp上で)みんなで比較する、といった使い方をしている。それまではプリントアウトした紙を会議に持っていって並べながら検討する、という方法しかなかった」という感想もあった。

アップロードしたファイルを3Dビューで確認できるクライアントソフト「quanp.on」

「Dropboxとはポリシーが違う」「画像から始まるTwitter」

 最近はDropboxZumoDriveSugarSyncのように、ローカルに置いたフォルダ内に保存するだけでデータを同期できるオンラインストレージサービスも増えてきている。quanpとこれらのサービスとのすみ分けについて、リコーはどう考えているのだろうか。

ファイルをドラッグ&ドロップでアップロードできるウィジェット「quanp drop」により、アップロードの手間は大幅に軽減された

 「quanpにもquanp monitorという特定のフォルダ内のデータを自動アップロードする機能はあるが、Dropboxのようなリビジョン管理機能や、(データの自動ダウンロードまで行う)同期機能は実装していない。この点は社内でもよく議論しているが、quanpのポリシーは『PC内のローカルなデータがメインで、サーバ上のデータはバックアップ』というのとはちょっと違う。そうでなく、サーバ上でこそデータを活用してほしいというポリシーや、人生を形作る膨大な量のデータはフォルダ構造では扱いにくいだろうという考えがある」(山本氏)


スライドショー画面とは別にコメント表示画面を用意する。画像が切り替わるのと同時にコメントも切り替わる仕組みだ

 「私たちはバックアップのことはあまり前面に押し出していないし、正直なところバックアップという使い方に対して、完全な答えを提示できているとは思っていない。それよりもむしろ、アップロードしたファイルを活用する“場”にしたいと考えている」(リコーの疋田敏也氏)

 例えば、友人と共有しているファイルに付いたコメントをquanp slideshowで表示できるようになったのはそのポリシーの表れだ。コメント表示ウィンドウはインスタントメッセンジャーソフトのようなインタフェースで、ここから新たにコメントを付けることもできる。「写真から始まるTwitter」(山本氏)のようなイメージだ。

 実際にリコー社内では、お題となる写真を1枚選んでみんなでコメントを付ける「写真で一言」を行ってアイデア出しに使ったり、「メンバーの名言」をみんなでポストするなどして楽しみながら活用しているという。


 この日参加したリコーのスタッフは、「ユーザーの人生を預かることができるサービスにしたい」「(データを)貯めるだけじゃなくて、活用する仕組みを作りたい」と何度も繰り返し強調した。

 「例えば10年前の自分の誕生日に何をしていたか。子どもが生まれた日に何を考えていたか。そういう忘れてしまっていたことをふと思い出させてくれるような、そんな世界観を提供できたらいいな、と」

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