企業研修業界では「研修の内製化」の動きが加速しています。「今度はお前が講師をやってくれ」と言われる前に、心の準備はしておきましょう。初めて講師を務める人が気をつけておくべきこととは?
こんにちは、開米瑞浩です。なんと2カ月ぶりの登場! すっかり忘れられてしまったのではないかと心配しながらも第13回始めましょう。
とその前にお知らせを1つ。開米の8冊目の著書、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』(青春出版社刊)が刊行されました! 本連載と同じく、自分の知識や技術・経験を人に「教える」ことを課題とする人のために書いた本です。コーチングでは「教える」役には立たないと思っている人、プレゼンテーションとティーチングの違いが分からない人、とにかく若い社員への技術伝承に困っている人はぜひ読んでください!
それでは本題に入りましょう。
現在、企業研修業界では「研修の内製化」という動きが加速しています。要するに、これまでは社外の研修会社に発注していた研修を社内講師でまかなうようにしようという動きですね。
これには「コスト削減」という後ろ向きの理由と、「社内の教育力強化」という前向きの理由の両面があります。実はわたしがこの連載を書いているのも「社内の教育力強化」という面からこの動きをバックアップし加速したいからです。研修会社にとっては厳しい時代になりますね。
なんにしてもこの流れは一時の流行にとどまらず、今後も長期間続くことでしょう。ということはどういうことか。研修会社ではない一般の事業会社において、
今度はお前が講師をやってくれ。
といきなり指名されて慌てる社員が増える、ということです。どうでしょう、心当たりはありませんか? 今はなかったとしても、今後その機会は間違いなく増えます。その心の準備はしておきましょう。
とはいえ、「心の準備」だけで乗り越えられるほど、講師を務めるのは楽ではありません。
そこで、いきなり研修会場に行って現場で慌てなくてすむように、「講師」の役割を初めて引き受ける人が、コンテンツ以外に気をつけておくべき項目を何回かに分けて書くことにします。一応、「10個条」と銘打っておきますが、書いている内に増減はするかもしれませんのでご了承ください。
あまりにも当たり前すぎますが、研修テーマをまず確認します。さすがにこれをやらないケースはありませんね。ただし例えば、
の2つに違いを感じないとしたら要注意です。この両者の違いはハッキリさせておきましょう。
「実践できるようにする」の方は実際にやってみて動作を身につけるという「実技」練習の時間が必須ですが、「学ぶ」の方はもしかしたら「教科書を読んで知識として知っておく」だけのことを想定しているのかもしれません。どのレベルまで到達することを狙いとするのか、これが明確に分かる形でテーマを設定しておく必要があります。
これも当たり前の話ですね。どんな知識レベル・技能レベルの受講生なのかをあらかじめ知っておかないと、それに合わせた話の組み立てはできません。
講師や研修事務局の経験がないと見落としがちなのが、この「会場」のこと。会場の広さと設備は研修の実施にあたっていろいろな制約を与えます。
例えば受講生数人でグループを作ってディスカッションをするなら、いわゆる「島型」の座席配置にしたいところですが、島型配置は教室型に比べて面積を取るので、同じ広さでも少人数しか入れません。
A会議室で大丈夫かな?
あそこなら20人入れるから大丈夫でしょ。
と思っていたら20人というのは教室型での人数だった、なんてことになったら困りますね。一度は下見をして実際の配置のイメージを持っておきたいものです。
このほかにも、会場には現場でないと分からないことがいろいろあります。
などなど。いずれもわたしが実際に経験したことばかりです。講師に慣れてくればなんとか対応してしまえるようなささいな問題であっても、初めて講師をするような時には、大いに足を引っ張る可能性があります。
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