先行きが見えない時期は、仕事を大きく見直す必要があります。今回はリーディングカンパニーの企業理念から、仕事を見直すためのヒントを得る方法を紹介します。
仕事を見直そうと思うと、さまざまなことに目が向きます。すぐに取り組めそうなことから、段取りが必要になりそうなことまでいろいろあります。一般的には、洗い出した仕事の中から、重要度(優先度)、緊急度などの指標を元に整理していきます。
しかし、自分や周囲で洗い出した仕事は、どうしても身近なことに偏りがちです。企業の業績低迷が一時的で、先が見通しやすい状況であれば、身近な見直しでも十分なのですが、先が見通しにくい今は、もう少し大きな見直しが必要になってきます。
特にこの連載をお読みくださっているあなただったら、きっともう1ランク上の仕事を目指すことを期待されているはずです。
今回はワンランク上の視点で考え、仕事の見直しを行うためのヒントをお伝えします。
バブル崩壊後の1990年代前半から半ばにかけてリーディングカンパニーと言われた企業は、自分たちの会社の存在意義や価値を明らかにするための理念(ミッション/ビジョン/行動指針)を再構築しました。
そして、理念の浸透に時間とお金をかけました。
努力しても上がらない株価、考えてもこなかった金融機関の大型倒産、雇用環境の悪化、わずか数年前までは、誰も予想をしてこなかったことばかりが次々に起こり、誰もが“未曾有の危機”と言っていた時代です。
そのような時代に、なぜ時間とお金をかけて理念の再構築を行ったのか? しかもそれまでにも理念はあったにもかかわらずです。
1つは、求められるものが変化してきたことや、グローバルに対応するための表現が必要だったことが考えられます。もう1つは、自分たちの努力以上の企業評価を受けたことで、自分たちが誰のためにどのような役に立とうとしているのかを見失ったことへの自戒の念が込められていたように思えます。
何千、何万とある企業の中から選ばれ成長し、一定規模以上の企業になるには、多くの人を引き付けるだけの志や、それを裏切らない組織構成員の1人1人の行動が伴って、初めて実現できることを知っていたからです。
そうしたリーディングカンパニーの動きが多くの企業に波及し、今ではどの会社でも理念を明らかにしています。そのほとんどをWeb上で知ることができます。
さて、そのように大事にするべき理念ですが、なかなか仕事で生かされていないのが実情です。あなたにとっても耳の痛い話かもしれません。
もしかしたら「仕事の見直し程度で大げさな」と感じるかも知れません。それでは、理念を比較することでどんなことが見えてくるか検証しましょう。今回は、自動車業界の理念の中で主に製品開発に関わる部分を抽出していきます。
トヨタ自動車 企業理念より一部引用
クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球環境と豊かな社会づくりに取り組む
日産自動車 ミッションより引用
私たち日産は、独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し、その目に見える優れた価値を、全てのステークホルダーに提供します
本田技研工業 基本理念より引用
人間尊重(自立、平等、信頼)、三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)
富士重工業 理念・ブランドより一部引用
私たちは常に先進の技術の創造に努め、お客様に喜ばれる高品質で個性のある商品を提供します
いかがでしょうか? ご紹介したのはほんの一部ですので、是非各社の理念をじっくり目を通してみてください。
“車”という同じ製品を扱っていても、その会社がイメージすることの範囲や、大事にしている価値観が少しずつ違うと思いませんか? これを自分の仕事に当てはめるには、
を合わせて確認してみた上で、次の視点で考えます。
そのようなことを一度考えてみた上で、洗い出した仕事のフローと見比べてみると、何が優先的で、重要性が高く、どの方向に進めばいいのか、イメージしやすくなると思います。
また、あなたの仕事がお客様の提案活動を中心にしているのであれば、担当する会社と、その業界全体のリーディングカンパニーの理念を確認しておくと、業界の方向性や企業ごとに強めていきたいこと、補完していきたいことが分析しやすくなります。
それに合わせてあなたの扱う商品やサービスについて、ロジックを立て提案すれば、きっとあなたの提案が光って見えることでしょう。
企業で実施する研修は、実はこうした理念を元に企画し、運営しています。参加するあなたを通じて、企業の理念の実現に力を貸してほしい。また、理念を実現する過程で成長してほしい。そのような願いがこめられています。
是非あなたの会社やお客様、取引先の理念を大事にすることで、ワンランク上の仕事をしていってくださいね。
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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