人は外部からの刺激を受けると、脳の機能を使って考え、状況に対応します。脳のどのような機能を優先的に使うかは、人それぞれで異なります。今回は脳のタイプをうまく活用し、仕事で成果を上げるヒントを紹介します。
Business Media 誠の記事「右脳と左脳……脳のタイプによって年収が違う?」は興味深い記事でした。
「自分の上司や部下を脳のタイプ別で選べるのだとしたら、どちらのタイプがよいか?」という質問に対して、上司に求める脳のタイプでは、「左脳タイプ」という回答が圧倒的で、部下に求めるタイプは、自分が右脳タイプの人の58.8%が、自分が左脳タイプの人の67.5%が自分と同じタイプを求めていると答えた――という内容です。
今回は、こうした脳のタイプをうまく活用し、仕事で成果を上げるヒントを紹介します。
人は外部からの刺激を受けると、脳の機能を使って考え、状況に対応します。脳のどのような機能を優先的に使うかは、人それぞれで異なります。しかし、脳がどのように働いているかを見ることは難しいですよね。そこで、自分自身の行動傾向を見ることで、自分が右脳と左脳、どちらを優位に使っているかを見ていきたいと思います。
例えば、会議の席で人を観察していると、人それぞれ行動傾向に違いが現れます。同じ場面でどのような行動を取るか、その傾向の違いを、一般的に言われる左脳、右脳の領域に近づけて整理し、6つに分類したのが次の表です。表では、会議でよく見られる行動傾向の一部を取り上げました。自分がどの行動傾向に近いか、確認してみましょう。
左脳タイプの人の行動傾向 | 右脳タイプの人の行動傾向 |
分析タイプ 【行動傾向】 ・話すよりも聞き役にまわる ・話を聞くときは、メモを取りながら、なぜ、どうして、と本質や原因を考えながら聞いている ・全体の場で合意がしっかりとれる取り組みが好き ・自分の中で一度整理してから、慎重に行動したい ・確信がもてない状態だと、行動に移せない 【ほかの人から見ると】 ・落ち着いていて、間違いのない人 ・積極性に欠けるように見えることも | インテグレーター(統合)タイプ 【行動傾向】 ・話をする際は、簡潔に、明瞭さや聞きやすさを考慮する ・話を聞くときは、ゴールイメージが気になる ・結果を重視した取り組みが好き ・意思決定が早く、即行動する ・行動に移すのは早いが、大雑把にイメージするので、具体的なプロセスでの抜け・モレが多い 【ほかの人から見ると】 ・大胆で、実行力のある人 ・うっかり者に見えることも |
論理タイプ 【行動傾向】 ・自分の考えに自信を持って、主張する ・話を聞くときは、話の矛盾や飛躍が気になる ・将来の理想を描き、そこへ至るプランが明確な取り組みが好き ・自分の考えに合うと、即行動する ・自分が納得しないと、行動に移せない 【ほかの人から見ると】 ・冷静で、しっかりしている人 ・わがままに見えることも | フィーリング(感性)タイプ 【行動傾向】 ・思ったこと、感じたことを素直に表現する ・話を聞くときは、自分に興味のあることだと集中力が増す ・流行を取り入れた取り組みが好き ・周囲に合わせて、行動したい ・その日の気分で、行動にバラつきがでる 【ほかの人から見ると】 ・ムードメーカー、癒し系な人 ・気分屋に見えることも |
統制タイプ 【行動傾向】 ・仲間の考えや意見を尊重して発言する ・話の結論だけでなく、プロセスも大事にしたい ・仲間が喜ぶ取り組みが好き ・みんなで決めたことを着実に遂行する ・朝令暮改のように、方向が変わると動きにくい 【ほかの人から見ると】 ・親分肌で、面倒見のよい人 ・頑固に見えることも | クリエイター(創造)タイプ 【行動傾向】 ・人が思いつかない新しい考え方や方法を提案したい ・話を聞くときは、頭に映像を描きながら聞く ・ほかではやっていない、新しいことをするのが好き ・ほかの人がやらないことを見つけ、自発的に行動する ・決められたことをするのが苦手 【ほかの人から見ると】 ・自由で、発想力豊かな人 ・あきっぽく見えることも |
このようにタイプに分けると、「どんぴしゃ」「まさに」という人もいれば、その時々でタイプを使い分けるという人もいるでしょう。
タイプを使い分けるという人は、本来自分が得意としている行動傾向をコントロールし、その状況に合わせています。それは、経験や立場の中で鍛えられてきた能力といえます。
このように行動傾向を把握することにより、自分自身の個性を極めるもよし、立場や状況に応じて自分自身をうまく演出するもよし。環境に合わせて自分をプロデュースすることができます。
さて、それではこのような違いがある中で、わたしたちはこの違いを仕事の場面で、どう生かしていったらよいでしょうか?
先ほど紹介した記事によると、上司、部下には同タイプを望むケースが多いようですね。同タイプであれば、相手の考えていることがキャッチしやすい、いわゆるあうんの呼吸を求めているのかもしれません。
少し違った視点で考えてみます。研修で次のようなワークをすることがあります。
考え方や感じ方が違う人同士がうまくコミュニケーションをとるために、工夫が必要であることを理解し、どのように工夫すればよいかを考えるのがワークの目的です。
そのために、あるグループワークを2回実施します。その際に、1回目のグループワークでは、タイプが同じ人のチームを作ります。2回目は、タイプがバラバラになるようチームを作ります。同じタイプの人でチームを組んだ場合、まずは個人作業から始め、後から意見交換するチーム、最初から思いついたことをどんどん話していくチーム、役割分担を決めて作業に取りかかるチームなど、そのタイプの特徴が顕著になります。また結論も、そのチーム“らしさ”が表れます。
違うタイプの人でチームを組む場合は、最初の進め方で戸惑います。黙々と考え始める人もいれば、きょろきょろと周りの様子を見ている人。いろいろな行動傾向が見られます。そして、結論を出す際には、話し合いがなかなか進まず結論が出ないチーム、リーダーとなる人の存在でうまくまとまるチーム、ボスキャラ的な人に強引に押し切られるチームなど、結果にバラつきが出ます。
参加者に意見を聞くと、1回目は、「スムーズに話し合いが進んだ」という感想が多いのに対し、2回目は「うまく話し合いが進まず、ストレスがたまった」という感想が多くなるのが特徴です。このようなケースを見ると、同じタイプを望む気持ちが理解できますよね。
さて、それでは現実の組織の中ではいかがでしょうか? 同じタイプ同士でチームを組めることの方がまれですよね。それでは、違うタイプの人が上司や部下、後輩だったりした時、わたしたちはどうすればよいのでしょうか?
まず始めは、仕事の基礎的な手順を外さないことです。例に挙げた会議であれば、どのようなタイプの人でも会議をスムーズに進行できるように、「会議の進め方」といった方法論があります。こうした方法論を学び、できるようにしておくのも大事ですよね。方法論は、1冊書籍を購入するのもいいですし、ITmedia エンタープライズの記事「ここ一番の会議は『段取り力』で勝負」を参考にしてみるのもいいでしょう。
基礎手順を守った上で、自分自身の傾向をしっかり把握し、強みを生かすこと。そして仲間の強みを見つけ、生かしたり、引き出せたらいいですね。次回は、自分の強みを伸ばすヒントをご紹介します。
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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