新人を即戦力にするための9つの方法イマドキ新人教育の法則

新入社員研修の狙いは、学生生活から一般社会人としての新しい社会環境へ適応するために、未知なるものへの不安を除去し、会社の業務活動に慣れ、早期に戦力化することです。今回は「内定者研修」「新人導入研修」「配属直後研修」「配属フォロー研修」という4種類の新入社員研修での留意点を紹介します。

» 2009年10月08日 19時52分 公開
[SOS総務]
SOS総務

 新入社員研修の最大の狙いは、新しい組織・社会と会社業務への適応です。学生生活から一般社会人としての新しい社会環境へ適応するために、未知なるものへの不安を除去し、会社の業務活動に慣れ、早期に戦力化することが狙いです。新入社員研修としてとらえる範ちゅうは、「内定者研修」「新人導入研修」「配属フォロー研修」です。

1. 「内定者研修」の留意点

仲間形成による内定辞退の防止

 各企業の採用活動には大変なコストと労力をかけているはずです。ところが、採用内定を出したのに、「内定辞退」というケースも散見されます。また、安易に辞退を認めてしまうと“辞退しやすい会社”との風評が立ってしまい、他社の滑り止め的な会社になりかねません。そのような会社にならないためにも、内定を出した以上、内定辞退は極力避けるべきです。その効果を発揮するのが、内定者研修です。

 内定者の大きな不安の1つに人間関係があります。「どのような仲間と一緒に仕事をするようになるのだろうか」「自分と相性の良い仲間は採用されているのだろうか」といった悩みです。内定者研修は、研修中に一緒に働く仲間との認識形成によって内定辞退を防止する作用があります。

会社理解を深め不安を除去する

 内定辞退のもう1つの理由に、会社に対する漠然とした不安があります。内定はもらったものの、「本当にこの会社で良かったのだろうか?」「自分はこの会社でやっていけるのだろうか?」などの不安です。このような不安は早目に取り除くことです。早めに解消をしてやることで、むしろ前向きに早く入社をして活躍をしたいとの動機づけをすることです。ただし、内定者の身分は学生であり、学生としてしなければならないこと(試験、卒論といったこと)があります。それらを妨げないように配慮することが必要でしょう。

配属先決定情報を得る

 内定者研修は集合の宿泊研修が望ましいでしょう。内定までは、昼間の少しの間の行動を見るに過ぎなかったはずです。しかし宿泊研修では、その過程では見られなかった姿を見ることができるでしょう。また、さまざまな研修内容を実施する過程で、内定者1人1人の行動を改めて見ることができます。そこで得た内定者に関する情報は配属先を決める重要な手がかりになるはずです。

2. 「新人導入研修」の留意点

 新人導入研修は一般的に、入社式後に人事担当部門が主催して行います。その目的は、学生から社会人への気持ちの切り替えを図ることです。入社式を終え、スーツを着て、満員電車に揺られて出社したからといっても、学生気分は抜けるものではありません。社会人としてのマナー、学生時代とは違った常識、心得、行動基準といったものをしっかりたたき込むことです。まさに「鉄は熱いうちに打て」です。

会社理解を促進させて、早く自社になじませる

 会社の歴史、概要詳細、組織、制度、習慣、風土といったことを理解、認識させ早く自社になじませることです。そして、自社の人材としての自立を促すことが重要です。

実務についての基礎知識を身に付けさせ、配属後の円滑な業務執行を図る

 実務上必要な基礎知識、報告の仕方、指示・命令の受け方、接客スキルなどを身に付けさせ、配属後の就業を円滑にすることです。技法としても、ロールプレイングのような行動して身に付ける技法をより多く活用します。

同期意識を醸成し、インフォーマルネットワーク作りを促進する

 新入社員研修の機会は、同期の人材が全員一括で集団教育を受ける数少ない機会です。この機会に新人相互の理解を促進させて、何事も相談できる仲間がいることを認識させることです。最近は、うつをはじめとする精神障害による事故事件が発生しています。その原因の1つとして、相談相手がいない状況があるようです。そのような状況にしないためにも、会社内での仲間意識の醸成は重要です。

 また、強い組織の共通点の1つに、社内に相談できるインフォーマルネットワークがあることのようです。組織図には表れない固い絆で結ばれた同期などの仲間の存在は、仕事に行き詰ったときに大きな力となるでしょう。

3. 「配属直後研修」の留意点

 配属直後研修は、各職能部門別に行われます。ここでの留意点は、人事部門との連携プレイが重要であることです。研修内容や進め方などについて、全社基準といったものがあれば、それに準じて実施すべきです。研修体系の全社標準化といった観点からも各部門の研修担当者と研修部門の担当者との連携プレイが欠かせません。例えば、使用する語句1つをとっても、研修担当部門と各ライン部門とが違う用語を用いたり、違う意味にとらえていたりでは受講者は迷うばかりか、一体この会社のガバナンスはどうなっているのだろうかとの不安を抱かせるかもしれません。

部門別集合教育による実務知識の付与

 早期戦略化をうながすために、自社として実務遂行の標準化を図ることです。各職能部門別固有に要求される実務知識の理解と習得が目的です。

フォーマルネットワークの構築を図る

 実務上の困ったこと、相談したいことがある時にはどのラインに持ち込めば良いかなど具体的に指導することが望まれます。また、メンター制度、里親制度といった個々の社員の育成補助の仕組みを構築する機会です。直属の上司、先輩に相談しにくいことでも相談できる環境の整備もしましょう。その1つの具体的な方法としては、研修の講師を他部門の管理職や先輩社員が務めることがあります。新人研修での講師のインパクトは社歴を積んでも忘れ難いものがあります。そのインパクトを活用することです。

4. 配属フォロー研修の留意点

 通常、入社後半年くらいの時期に実施されるのが望ましいようです。半年も経つと良くも悪しくも仕事に慣れ、ともするとマンネリな業務遂行をしがちです。心構えを初心に返し、慣れとマンネリを除去するためにもフォロー研修は実施しましょう。

 その目的としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 抱えている課題や問題があるとすればそれを吐き出させ整理させる
  • 職場適応の状況を把握し、早期離職を防ぐ
  • 仕事に対する方向づけをし、再動機付けをする
photo 新人研修プログラム例

著者

ニッセン(東証1部)社外監査役

ワイズ・ステージ代表取締役

高橋宜治


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