ポイントは“棚卸し”――経験のない業務ができるようになるコツ研修に行ってこい!

仕事をしていると、今までやったことがない業務に携わる機会は必ずあります。営業経験のない営業マンを例に、やったことがない業務に携わる人をできる人に変身させるコツを紹介します。

» 2009年10月28日 10時00分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 異動や配置転換など、仕事をしていると、今までやったことがない業務に携わる機会は必ずあります。今回は、やったことがない業務に携わる人(=できない人)をできる人に変身させるコツをお伝えしましょう。

営業経験のない営業マンの育成現場から

 企業から研修を依頼されるケースで、「営業経験のない人が営業できるようにしてほしい」という依頼を受けることがあります。

 このようなご依頼の背景には、「技術者の知識や経験がお客様にとって役立つ」ものであり、それを生かすことが結果として収益改善につながるという期待があってのことです。

 しかし多くの場合、「営業に行ってくれ」としか伝えられず、「自分にはできない」「売上が上がらなかったらどうなるんだろう?」「人と接するのは苦手なのに」という不安要素が先に立ち、落ち込んでしまう人が多いように見受けます。あなたもこうした光景に遭遇したことはないでしょうか?

成果につながる育成のポイント

 営業経験がない人に「営業をしてもらおう」と思うと、多くの場合“営業研修”と称して、営業の仕事の進め方を学んでもらうことからスタートします。

 商品の説明の仕方、アポイントの取り方、訪問時のマナー、商談の進め方、フォローの仕方、提案書・見積書の書き方、社内手続きの段取りなどがそのテーマとなってきます。

 しかし、“成果につながる”という視点から考えた時、もうひと手間かけておくと、新しく業務に携わる人も意欲的に仕事に取り組めます。

 ポイントは、その人の仕事の経験(アルバイトを含む)を棚卸ししてもらうことです。今まで取り組んできた仕事の経験を全て書き出してもらいます。書き出してもらうのが難しければ、ヒアリングを行い、メモをして一緒に整理していくといいでしょう。書きだしたり、ヒアリングをしながら、新しい業務でも生かせそうな過去の経験を引き出していくのです。特に書き方に決まりはありませんが、参考までに一例を紹介します。

知識・経験の棚卸し表(例)
時期 役割 経験・獲得した知識・技術
学生時代 ホテルの接客 接客スキル
アルバイト、派遣に接客指導
アルバイト、派遣社員のスケジュール管理
売れ筋商品分析
チラシ配り
棚回り商品の発注(※売れ残りが出ないように)
など
生命保険営業時代 営業職 個人保険販売に必要な知識と資格
外資系企業勤務の社員への個人保険販売(定期的な情報発信技術/商談技術など)
新規法人企業開拓(飛び込み営業/法人向け商品知識)
など

 職務経歴書のような堅いものではなく、その人が自分の経験をイキイキと語れるくらいのラフな内容でちょうどいいです。

 その人に営業経験がないとしても、「他部署との折衝」「業者との交渉」「企画力」「提案書作成力」といった、営業に役立ちそうな経験を持っているはずです。そして、今までの経験を営業の仕事に結び付けることで、

  • 営業の仕事が今までやってきたこととかけ離れた仕事ではないこと
  • 自分の今まで培ってきた知識や経験が生かせること

 を知ってもらうのです。その上で営業のプロセスを伝え、問題がない部分、訓練が必要な部分を区分けしトレーニングを重ねると、新しい業務に早くなじんでいくでしょう。

 余談となりますが、技術者が営業の仕事をするようなケースでは、人と接することが苦手と思い込んでいただけということがあります。実際に営業の仕事をやってみると、ダイレクトにお客様の反応を得て「やりがいを感じる」人もいるのです。

 そのためにも過去の経験を棚卸しして、生かせそうな経験を知っておきましょう。その上で営業の仕事の進め方を学ぶと、自信にもつながり、成果への近道となります。

 この方法は営業の仕事に限らず活用できます。新入社員が配属になったときには、アルバイトの経験や学校時代に取り組んできたことなど、彼らが得意としていたことを見つけて、そこから少しずつ仕事を広げていくと、早く成長していくでしょう。

 新しい業務に就くのは誰でも不安なもの。その不安を早く取り除き、成果につなげていってもらうために一工夫しましょう。新しい仲間の価値は無限大です。その価値を早めに引き出して、リーダーとしてチームの成果向上につなげていってくださいね。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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