LCD Clockの作り方、教えますiPhoneアプリビジネス最前線(1/2 ページ)

拡大を続けるiPhoneアプリ市場。連載「iPhoneアプリビジネス最前線」では、世界を相手に戦うiPhoneアプリビジネスの旗手たちに話を聞く。聞き手は、iPhoneアプリ向けの広告配信サービスなどを手がけるノボットの小林清剛社長。

» 2009年12月07日 11時25分 公開
[小林清剛(聞き手),Business Media 誠]
今回取り上げる「LCD Clock」

 iPhoneiPod touch向けアプリケーション配信サービス「App Store」は、サービス開始以来App Storeでリリースしたアプリが10万を超え、1カ月で6000万ダウンロード、3000万ドル(約33億円)の売り上げを達成したという。現在、さらに加速度的に広がりを見せるiPhoneアプリ市場。これまでの携帯電話向けアプリやコンテンツは国内がメインだったが、iPhoneアプリは全世界が対象だ。

 連載「iPhoneアプリビジネス最前線」では、戦いの舞台を世界に移した開発者やビジネスプランナーたちがどのような発想で、どのような仕事の仕方をしているかに迫る。聞き手は、iPhoneアプリ向けの広告配信サービスなどを手がけるノボットの小林清剛社長。今回はAppStoreの有料アプリ部門で10日以上連続1位を達成した「LCD Clock」を作り出すなど、第一線で活躍するiPhoneアプリ開発者でフォーユーの代表取締役/アートディレクターを務める金田進哉さんと同社のプログラマーである岸川克己さんに、開発を始めたキッカケや、2人のワークスタイルについて聞いた。(以下、敬称略)


ディレクターの金田進哉さん(右)とプログラマーの岸川克己(左)

小林 どういったキッカケで、iPhoneアプリを作ろうと思ったのですか。

金田 IllustratorPhotoshopを使うWebデザインが私の仕事ですので、iPhoneアプリのデザインを始めたことは必然な流れでした。環境も基本的な思考も変えることなく、iPhoneアプリのデザインを始められました。そして、なにより個人や小さな会社でも世界に対して自分が作ったものを販売できることが大変魅力的で、大きな可能性を感じました。

小林 売れるiPhoneアプリを作る上で、一番重要視しているのはどのような点ですか。

金田 デザインもプログラム技術も大事ですが、一番重要視しているのはアイデアです。ここが一番大変で苦しむところで、楽しいところでもあります。いいアイデアを考えだすためには、思いついたことはどんなことでもメモに書き残しておくことが大事な事だと思います。私は完璧主義で、気に入らないものは捨てたくなってしまうので、簡単に破けないようなノートとボールペンのような消えないペンを使うことで、どんなメモでもどんなアイデアでも残るようにしています。

小林 どのようにしてLCD Clockはでき上がっていったのでしょうか。

金田 iPhoneを購入してからの3カ月間、アプリは金額に糸目を付けず購入しました。10万円、20万円はあっという間になくなったんではないでしょうか。プログラムの知識がない僕がアプリについて学ぶには、ランキング上位にあるアプリを購入し、実際に使うのが一番。そうやって、アプリのインタフェースやアプリで何ができるのかということを体得していったんです。

 アプリを使って、フリックすれば、こう動くだとか、ダブルタップすればこう動くというのは、当時、教えてくれる人もいなかったですし、いろいろなアプリを使って覚えるしかなかったですね。しかし、そのことで、ユーザーの視点で、どんなアプリが使いやすいだとか、こんなアプリがあったらいいんじゃないかというアイデアも思いつくことができました。

 いろいろなアプリの使い方を実際に使い、理解したことが、それまでにはなかった「使わないときに使う」というLCD Clockのアイデアにつながったのだと思います。

岸川 LCD Clockのアイデアは、最初はiPhoneの使い方に外れているし、どうかと思いましたが、アイデア自体はとても面白いと感じました。今までにないアプリを作るということに魅力を感じ、僕も金田さんの考えたLCD Clockを一緒につくっていくことにしたんです。

開発風景

小林 iPhoneアプリの開発は、2人でどのようにして進めていくのですか。

金田 アプリの開発は、まず、私がPhotoshopでほぼ全ての画面を完成型まで作ってしまうんです。そして、そのデザインした画面イメージを実際にiPhoneのカメラロールに全画面転送して最終確認をしてから、それぞれ部品ごとにパーツを書き出して、岸川さんにプログラム作成を依頼しています。でき上がりのイメージをすべて見せているため、岸川さんにはプログラムのみに徹して作業をしてもらえるので、高いパフォーマンスを出してもらうことができると思っています。

岸川 画面の完成イメージができているのは、プログラマーにとってはとても作業がしやすいですね。私からも必要に応じて、画像パーツを金田さんにオーダーして作ってもらったりもします。そのようなやり取りを繰り返しながら、アプリの開発が進んでいきます。

小林 デザイナーとプログラマーがチームを組んでiPhoneアプリを開発している例はまだ少ないと思うのですが、なぜ2人でアプリを製作することになったのですか。

金田 アプリに対する考え方・感覚みたいなものが合ったんでしょうね。1つ目に開発したLCD Clockを作る時に、アプリの仕様や画面のデザインを完成させてから、それを実現してくれそうなプログラマーを探していたところ、岸川さんのブログを見つけて、直感的に「この人だ!」と思いました。突然連絡をしてお会いし、企画書を見せたら作成に快諾してくれたので、すぐその場で発注をしました。それから2週間程度でLCD Clockのプロトタイプができあがり、デベロッパー登録には苦労したものの、1カ月弱でリリースできました。私にとって幸運な出会いだったと思います。そして、つい先日岸川さんは当社(フォーユー)の社員になったんです。

岸川 その当時は充電中に使うアプリっていうコンセプトはなく、iPhoneの使い方と少し外れてると思ったので「売れないんじゃないの?」と言ったことはありますが、今までにないアイデアだったことが売れるアプリにつながったんだと思います。

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